日本医真菌学会雑誌
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34 巻, 1 号
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  • 山田 泰史
    1993 年 34 巻 1 号 p. 1-12
    発行日: 1993/02/20
    公開日: 2010/11/18
    ジャーナル フリー
    内臓真菌症の診断は培養検査が行われていないことが多く, 病理組織学的に病巣内の真菌形態の特徴をとらえることによって行われているのが現状であり, 病巣内真菌と鑑別すべきものにfalse mycosisがある.
    私は北里大学病院における1982年から1985年までの病理剖検例と手術材料を光顕的に精査してfalse mycosisを抽出し, その形態特徴, 染色性, 周囲組織の反応などを調べ, 更にそれらの本体や性状についても検討し, 系統的な精査を試みた. そして多種類のfalse mycosisの実像を提示し, true mycosisとの鑑別診断に有用かつ具体的な指標となる個々の所見を図と表によって示した.
  • 金井塚 生世, 杉田 泰之, 中嶋 弘
    1993 年 34 巻 1 号 p. 13-18
    発行日: 1993/02/20
    公開日: 2010/11/18
    ジャーナル フリー
    Candida albicansのsecretory aspartate proteinase遺伝子の塩基配列中にpolymerase chain reaction (PCR) 法によるDNAの増幅領域を設定し, C. albicansC. stellatoideaでは明らかな標的領域の増幅が確認された. この方法でカンジダ性髄膜炎の患者髄液からDNAの増幅を行い, オリゴヌクレオチドプローブを用いたサザンプロットハイブリダイゼーションで増幅DNAの特異性を確認した. こうして迅速で高感度なPCR法がカンジダ性髄膜炎の早期診断に有用であることが示された.
  • 高木 宏治, 岡田 薫, 下野 信行, 三角 博康, 江口 克彦, 澤江 義郎
    1993 年 34 巻 1 号 p. 19-26
    発行日: 1993/02/20
    公開日: 2010/11/18
    ジャーナル フリー
    我々はクリプトコックス髄膜炎患者の予後を中心に6症例について検討した.
    性別は男性5例, 女性1例で, 年齢は17歳から63歳で平均43歳であった. Systemic lupus erythematosus, 自己免疫性溶血性貧血, 気管支喘息の基礎疾患を3例に認めた. 検査できた4例中1例ではHTLV-1抗体が陽性であった. 髄膜炎の症状出現から治療開始までの期間は, 5日から90日であり, 平均32日であった. 治療では, amphoterisin B, miconazole, fluconazoleおよびflucytosineが単独または併用, さらには脳室内や髄腔内に投与された. 初回入院後の転帰は軽快5例, 死亡1例で軽快率83%であった. 死亡例は髄膜炎の症状出現から, 髄液中のCryptococcus neoformansが1年以上消失しなかった. 軽快した5例のその後の経過では, 1例はadult T cell leukemiaの発症と, クリプトコックス髄膜炎の再燃で死亡し, 2例は正常圧水頭症, 1例は視力障害を合併した. 合併症も再発も認めなかったのは1例であった. 髄液中のC. neoformansが髄膜炎の症状出現から2ヵ月以上消失しなかった例はすべて再発か合併症を認めた. クリプトコックス髄膜炎の予後を考える上で最も重要なことは, 早期診断であると思われた.
  • 中島 辰巳, 佐藤 宏, 飯島 昌夫, 横山 耕治, 加治 晴夫, 吉田 祚一, 西村 和子, 宮治 誠
    1993 年 34 巻 1 号 p. 27-34
    発行日: 1993/02/20
    公開日: 2010/11/18
    ジャーナル フリー
    外用抗真菌剤ZM-589は, 主な有効成分としてトルナフテート (TN) 2.0%ならびにサリチル酸 (SA) 10.0%を含有する外用液剤である.
    本実験ではZM-589に配合したSAの配合効果を調べるためTN, SAおよびTNとSA共存時の最小発育阻止濃度 (MIC) を5種10株の皮膚糸状菌を用いて試験した. さらに,Trichophyton mentagrophytesによるモルモット皮膚の実験的白癬に対するZM-589の治療効果について症状の改善度と菌の陰性化の点で試験し, ZM-SA (SAを除いたZM-589), ZM-TN (TNを除いたZM-589) および3種の市販製剤-1%硝酸ミコナゾール液, 1%シクロピロクスオラミン液および5%エキサラミド液 (2%サリチル酸配合) -と比較した.
    TNおよびSAのMICはそれぞれ0.06-0.2μg/mlおよび約1,250μg/mlであった. また, TNとSA共存時のMICは, TN単独の場合とほぼ同等でその併用効果は認められなかった.
    実験的白癬に対する治療効果については, ZM-589はZM-SAをはじめいずれの薬剤よりも統計的に有意に優れた結果を示し, 菌陰性化率もその結果を支持するものであった.
    以上の成績により, 白癬患者の治療におけるZM-589の臨床的有用性が示唆された.
  • 田澤 真理, 樋口 道生, 滝内 石夫, 土田 一雄, 石舘 周三, 安達 健二
    1993 年 34 巻 1 号 p. 35-41
    発行日: 1993/02/20
    公開日: 2010/11/18
    ジャーナル フリー
    Microsporum canis由来のextracellular keratinase (eKase) をカラム・クロマトグラフィーや, 高速液体クロマトグラフィーを用いて単離し, BALB/cマウスに免疫し, モノクロナール抗体 (mAb) を作成した. 作成されたmAbをCNBr-activated Sepharose 4B gelにcouplingし, このgelにeKaseを結合させ, gelごと活性を測定したところ活性が証明された. mAbとeKaseを37℃, 15分間反応させると, eKaseによるカゼイン分解能は阻害された. SDS電気泳動を施したM. canis由来のeKaseについて, mAbを用いてimmunoblotをおこなったところ, 48KDのmain bandの他に, 34KDの部位にmainor bandが染色された. 菌株の異なるM. canisより, 異なる時期に, 別々に分離したeKaseのimmunoblotでは, 一方は48, 34, 31.5KD, もう一方は, 34と31.5KDの部にbandが染色された. また, enzymographyの結果, 3者とも同一の部位に溶解像が観察されたことから, eKaseは2種または, 3種のisozymeを持つ可能性が高いものと思われた.
  • 藤広 満智子
    1993 年 34 巻 1 号 p. 43-55
    発行日: 1993/02/20
    公開日: 2010/11/18
    ジャーナル フリー
    揖斐総合病院皮膚科外来を訪れた足白癬患者183例と正常人102例を対象に, 足からの白癬菌散布の頻度, 量, 臨床との相関を検討した.
    対象となった患者に, 素足で10分間表面塩化ビニール製のスリッパを着用させ, ニチバン製セロファン粘着テープでスリッパの足底の接する面全体から試料を採取し, Actidione, chloramphenicol添加ペプトングルコース寒天平板培地にて白癬菌の分離培養を行った. その結果118例 (64.5%) の白癬患者のスリッパ169個からTrichophyton rubrumまたはTrichophyton mentagrophytesが分離された. 1個のスリッパ当たりの集落数別に検討したところ, 5集落以下のスリッパが最も多く112個 (66.3%), 6~10集落22個 (13.0%), 11~15集落12個 (7.1%), 16~20集落5個 (3.0%), 21~25集落3個 (1.8%), 26~30集落6個 (3.6%) および31集落以上9個 (5.3%) であった. 菌種による散布頻度, 散布量の差は認められなかった. 散布群と非散布群間で, 病型, 原因菌種, KOH所見, 鱗屑, 小水疱, 趾間の浸軟, 〓痒, 発赤, 足底の乾燥状態および爪白癬の合併の有無に関して比較したところ, 趾間の浸軟, 足底の湿潤が散布群により多くみられた. コントロールとした正常人102例中2例のスリッパからT. mentagrophytesが各1集落分離された. また20例の足白癬患者の足底をセロテープ®で剥離し, そのセロテープ®を20%KOH処理して観察したところ, 14例 (70%) に白癬菌と思われる菌要素を確認した.
  • 藤井 理, 久保 等, 芝木 秀臣
    1993 年 34 巻 1 号 p. 57-66
    発行日: 1993/02/20
    公開日: 2010/11/18
    ジャーナル フリー
    旭川医科大学皮膚科外来における1977年1月から1989年12月までの13年間の白癬菌相を調査した. 同期間に当科を受診した白癬患者は1,327名 (男823名, 女504名) で, 同期間の新患総数の6.1%に相当した. 症例数は1,489例で, 病型別では各年次ともに足白癬が最も多く全体の61.0%を占め, 次いで体部白癬と爪白癬がほぼ同数で, 以下, 股部白癬, 手白癬, 頭部白癬, ケルスス禿瘡の順であった.
    皮膚糸状菌の分離株数は737株で, 培養陽性率は49.5%であった. 分離菌種は頻度の多い方からTrichophyton rubrum 428株 (58.1%), T. mentagrophytes 244株 (33.1%), Microsporum canis 40株 (5.4%), Epidermophyton floccosum 13株 (1.8%), T. verrucosum 9株 (1.2%), T. violaceum 3株 (0.4%) の順であった.
    T. rubrumT. mentagrophytesに対する分離比 (TR/TM) は1.75で, 他の地域と比較し低い方であった. またM. canisの占める割合は, 他の施設の統計結果と比較して高率ではあったが, 最近の報告では本菌は全国的に蔓延しており, 現在では明らかな地域差は認められなくなった. 一方, T. verrucosumについては少数ながら散発傾向がみられ, 全国的にみて比較的多く検出されたといえる.
  • Hideo Takizawa, Shigeki Miyagi, Takashi Hisa, Haruo Ohnami, Hiroyuki O ...
    1993 年 34 巻 1 号 p. 67-71
    発行日: 1993/02/20
    公開日: 2010/11/18
    ジャーナル フリー
    A survey of dermatophytes isolated from patients was made from May, 1991 to June, 1992 in Amami-Oshima. One hundred and ninety-one isolates were obtained from 321 cases consisting of tinea capitis 7 (2.2%), tinea corporis 86 (26.8%), tinea cruris 63 (19.6%), tinea pedis 140 (43.6%), tinea manuum 4 (1.2%) and tinea unguium 21 (6.5%). The isolates were 152 (79.6%) of Trichophyton rubrum, 16 (8.4%) of T. mentagrophytes, 3 (1.6%) of T. violaceum, 3 (1.6%) of Trichophyton spp., 14 (7.3%) of Microsporum canis and 3 (1.6%) of M. gypseum. Out of 152 T. rubrum isolates, 104 were granular or powdery, and urease-positive. The dermatophyte flora in Amami-Oshima was intermediate between those in Kyushu and Okinawa.
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