揖斐総合病院皮膚科外来を訪れた足白癬患者183例と正常人102例を対象に, 足からの白癬菌散布の頻度, 量, 臨床との相関を検討した.
対象となった患者に, 素足で10分間表面塩化ビニール製のスリッパを着用させ, ニチバン製セロファン粘着テープでスリッパの足底の接する面全体から試料を採取し, Actidione, chloramphenicol添加ペプトングルコース寒天平板培地にて白癬菌の分離培養を行った. その結果118例 (64.5%) の白癬患者のスリッパ169個から
Trichophyton rubrumまたは
Trichophyton mentagrophytesが分離された. 1個のスリッパ当たりの集落数別に検討したところ, 5集落以下のスリッパが最も多く112個 (66.3%), 6~10集落22個 (13.0%), 11~15集落12個 (7.1%), 16~20集落5個 (3.0%), 21~25集落3個 (1.8%), 26~30集落6個 (3.6%) および31集落以上9個 (5.3%) であった. 菌種による散布頻度, 散布量の差は認められなかった. 散布群と非散布群間で, 病型, 原因菌種, KOH所見, 鱗屑, 小水疱, 趾間の浸軟, 〓痒, 発赤, 足底の乾燥状態および爪白癬の合併の有無に関して比較したところ, 趾間の浸軟, 足底の湿潤が散布群により多くみられた. コントロールとした正常人102例中2例のスリッパから
T. mentagrophytesが各1集落分離された. また20例の足白癬患者の足底をセロテープ®で剥離し, そのセロテープ®を20%KOH処理して観察したところ, 14例 (70%) に白癬菌と思われる菌要素を確認した.
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