急性白血病に合併した
Penicillium citrinumおよび
Penicillium spp. による感染例を報告すると共に,
Penicillium感染例を集計分析した結果を報告する.
Penicillium感染症例は本邦例3例を含めて65例が報告されている. 検出菌種別では
P. marneffei40例,
P. crustaceum5例,
P. citrinum3例,
P. chrysogenum2例などであった. 報告例を国別に集計すると中国12例, タイおよびアメリカ合衆国が各11例, 香港10例, ナイジェリア4例, 本邦とフランスが各3例, イギリス2例であった. 中国, タイおよび香港は
P. marneffeiの流行地であり報告例も多かったほか, これらの地域を旅行して感染した症例が4例認められた. 基礎疾患別ではAIDS, 白血病, 貧血・リンパ節腫脹・肝脾腫大など免疫機構の破綻を伴った症例が多く見られた. 病型別では全身播種型が34例あり, そのうち33例が
P. marneffeiによる感染であった. 気管支肺型19例では, 組織侵入型が17例, アレルギー性気管支肺ペニシリウム症が1例, 菌球形成が1例であった. 角膜および眼内炎が5例に見られた.
65例中29例が,
Penicillium感染が原因で死亡し, 27例が軽快していた. 治療にはamphotericin Bを主体としてflucytosineあるいはazole系薬剤の併用が多く用いられていた.
Penicillium spp. は空中真菌の中でも多いものであり, 免疫不全状態下の症例に合併する疾患として, 今後注目すべきものと考えられた.
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