日本医真菌学会雑誌
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37 巻 , 4 号
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  • 山口 英世
    1996 年 37 巻 4 号 p. 195-197
    発行日: 1996/10/30
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
    開発中の新規抗真菌剤を適正に評価するためには,適切に計画された前臨床試験および臨床試験を実施することが不可欠である。本稿においては,深在性真菌症および(または)表在性真菌症の治療のための内用および外用抗真菌剤の薬効評価に焦点を合わせ,その現状と今後の課題を概観する.
  • 内田 勝久, 山口 英世
    1996 年 37 巻 4 号 p. 199-205
    発行日: 1996/10/30
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
    新規抗真菌剤を開発する際に臨床試験の成績を予知する上できわめて重要な前臨床試験について,ここでは皮膚真菌症治療薬の薬効評価に関する試験法の実際と問題点について述べる.
    In vitro抗真菌活性の測定は,従来から寒天平板希釈法により行われてきた.しかし,酵母様真菌に関しては,1995年に本学会標準化委員会により深在性真菌症治療薬を対象としたミクロ液体希釈法による標準法が提案された.本法の有用性についての最終的評価は今後の課題であるが,近い将来前臨床試験においても本法が採用されると予想される.一方,糸状菌の感受性試験の標準化については,未だ多数の問題が残されている.ここではミクロ液体希釈法の終末点判定に関し,白癬菌の抗真菌剤感受性測定を例として発光による菌体ATP量の測定と比色法による酸化還元色素の還元能に基づく測定法について実験成績を示した.
    皮膚真菌症治療薬の薬効評価のためのin vivo抗菌試験は,一般にモルモットを用いて作製した感染モデルが繁用されている.ここではTrichophyton mentagrophytesをモルモットの足底部皮膚に感染させて作製した足白癬モデルの有用性を治療効果と再発防止効果の両面から評価した成績を示した.とくに後者は臨床試験における効果のfollow-upを検討するためのモデル実験としての重要性を持つものと認識される.
    治療効果に関連する皮膚角質層における薬剤の貯留性と薬効の持続性の検討は,皮膚真菌症治療薬の評価に不可欠である.その薬剤動態解析のための試験法としては,in vitroにおける薬剤とケラチン親和性と動物モデルを用いた発症防止効果およびアイソトープ標識薬剤の皮膚内分布の測定があげられる.この感染局所組織内における薬剤動態の成績と薬剤の抗真菌活性から皮膚における治療効果をある程度予測することが可能である.
    以上の前臨床試験で高い評価を得た薬剤の多くは,その後の臨床試験においても有効性が確認されている.
  • 二木 芳人
    1996 年 37 巻 4 号 p. 207-210
    発行日: 1996/10/30
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
    内臓真菌症に適応される抗真菌薬は,大別して2点で皮膚真菌症治療薬と異なる開発の目標を有する.1つは抗菌スペクトルと活性であり,内臓真菌症で頻度の高い真菌種に強いin vitro活性を有することであり,今1つはそれが全身投与された場合の活性の持続を含めた効果的な体内動態と,安全性が確認されることである.従って初期の薬剤探索の時点から,in vitro, in vivoの両面での評価が必要であり,同時に体内動態や安全性面でのスクリーニングも要求される.しかし,このin vitro活性の評価も真菌種や実験条件で一定ではなく,酵母様真菌については標準化がすすんでいるが,糸状菌も含めた全体としての標準化が望まれる.さらに,in vivoでの有効性がこれと必ずしも一致しない点も問題であり,今後はより早い段階での適正な動物モデルの導入と評価が望ましいと考えられる.動態・代謝試験,安全性試験における最大の問題は,動物実験で主に評価されるこれらの成績が,必ずしもヒトの成績と一致しないことであり,一部の評価方法には疑問もある.また,慢性毒性試験や薬物相互作用など,評価すべき項目も膨大かつ時間を要するものとなる.前臨床評価を通じて,さらに既存の標準的抗真菌薬を上まわる利点が明らかになることも必要であり,その開発は容易ではない.臨床ステップも含めた学会による標準法の設定が望まれる.
  • 仲 弥
    1996 年 37 巻 4 号 p. 211-215
    発行日: 1996/10/30
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
    我が国では現在,浅在性皮膚真菌症に対する抗真菌剤の治療効果の判定には鱗屑中の菌要素の有無が重要視され,培養陰性でも直接鏡検で菌要素が認められる場合,真菌学的効果はないものと判断されている.しかし,我々は白癬菌が抗真菌剤に暴露された場合,viabilityを失っても菌要素は菌糸の形態を残していることを超生体染色色素であるneutral redを用いたin vitroの実験において確認した.また白癬,皮膚カンジダ症,癜風患者鱗屑中の菌要素のviabilityをneutral redを用いて検討し,鱗屑中に認められる菌要素の中にはviabilityを失ったものが含まれているということを示した.そして抗真菌剤外用時の鱗屑中白癬菌のviabilityの経時的変化をneutral red染色と培養を用いて比較検討することにより,鱗屑中白癬菌のneutral red染色が抗真菌剤の有効性の評価に有用であることを示すとともに,菌要素陰性化率とneutral red染色陰性化率・培養陰性化率の間に明らかな解離を見出した.
    以上より抗真菌剤の効果判定においては,鱗屑中の菌要素の有無だけではなく,neutral red染色などを用いてこの菌要素のviabilityを評価することが重要と思われる.かかる意味においても鱗屑中菌要素のneutral red染色は浅在性真菌症患者の診療上有益な方法と思われる.
  • 渡辺 一功
    1996 年 37 巻 4 号 p. 217-222
    発行日: 1996/10/30
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
    過去十数年の間に新規の抗真菌剤の開発がなされてきたが,アムホテリシンB(AMPH)はその強い副作用にかかわらず,今日でも確定診断された重篤な深在性真菌症にはstandard therapyとして使用されているのが現状である.
    現在,本邦で入手可能な深在性真菌症に対する抗真菌剤はAMPH,フルシトシン(5-FC),ミコナゾール(MCZ),フルコナゾール(FLCZ),イトラコナゾール(ITCZ)の5剤のみである.
    5-FCは水溶性であり,経口での吸収はよいが,抗真菌スペクトルが狭く,単独使用では耐性菌の発生が多く,多くの場合はAMPHと併用される.MCZは本邦で最も早く使用されたアゾール系抗真菌剤であるが,他に副作用の少ないアゾール系抗真菌剤が開発されたため使用量は最近では減少傾向にある.FLCZは1989年より本邦でも使用可能になった新規のトリアゾール系抗真菌剤であるが,ケトコナゾール(KCZ:本邦未発売)よりも副作用が少なく,静注用,経口用の製品があり,現在,本邦で汎用されているが,AIDS患者における,特にカンジダ属の耐性菌の問題,また,C. krusei, C. glabrataなどでの低感受性菌の問題がある.
    ITCZはFLCZと異なり,アスペルギルス属に対する有効性が期待されている.
    新規の抗真菌剤の開発が試みられているが,未だ実用化されるには時間が必要であり,現存する抗真菌剤の投与方法,併用療法も含め,今後の深在性真菌症の治療の発展に期待したい.
  • 加藤 卓朗, 木村 京子, 谷口 裕子, 丸山 隆児, 西岡 清
    1996 年 37 巻 4 号 p. 223-227
    発行日: 1996/10/30
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
    足底を直接圧抵するFoot-press培養法(FP法)を用いて,共同浴場を利用後の非罹患者の足底から皮膚糸状菌の分離を試みた.対象施設は温泉旅館2施設,いわゆる健康ランドと銭湯1施設ずつにある共同浴場で,各施設男女2名ずつを被験者とした.まず,共同浴場利用前にはFP法で被験者の足底から皮膚糸状菌は分離されなかった.次に通常の方法で浴場を利用後,再度FP法を行った.その結果,温泉旅館Iでは男性2名のみが陽性で,合計54コロニー,温泉旅館IIは男性2名,女性1名が陽性で合計28コロニー,健康ランドは男性2名,女性1名が陽性で合計25コロニー,銭湯は全員陽性で合計130コロニーの皮膚糸状菌が分離された.4施設合わせると男性は全員陽性で,合計230コロニーであったが,女性は4名陽性で,合計集落数も7コロニーと男性より少なかった.一方,菌種別の分離率をみると,Trichophyton rubrum, T. mentagrophytesともに4施設すべてから分離され,合計集落数は61と176コロニーであった.また,実験終了後にいずれの被験者も足白癬を発病しなかった.以上より同施設,同時期の共同浴場では男性用の環境中により多くの皮膚糸状菌が生存していること,および裸足で利用すると誰にでも足底に菌は付着するが,発病することはまれであることがわかった.
  • 若山 恵, 渋谷 和俊, 安藤 常浩, 高橋 啓, 直江 史郎, Walter F. Coulson
    1996 年 37 巻 4 号 p. 229-233
    発行日: 1996/10/30
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
    免疫抑制療法を基盤として発症する日和見真菌感染症の制御は,骨髄移植の成否の鍵を握る重要な要素の一つであろう.今回我々は,米国における骨髄移植剖検例を用い,深在性真菌症の合併頻度や原因菌,侵襲臓器について検討を行った.
    深在性真菌症は,骨髄移植例の31.5%にみられた.その1/4例は全身性真菌症として認められた.つまり,強力な骨髄抑制が求められる骨髄移植例では,より重篤な全身性真菌症が惹起され易い可能性がある.原因菌の大部分はアスペルギルスとカンジダであった.また,経年的推移をみると,カンジダ症の合併頻度は近年著しく減少しているが,アスペルギルス症は逆に増加傾向にあった.これはカンジダ症が有効な抗真菌剤の開発によって合併頻度の減少が十分期待できるのに対して,アスペルギルス症の治療が困難であることが反映された結果であると考えられた.
    すなわち,骨髄移植に合併した深在性真菌症を考える上で,アスペルギルス症の予防法や有効かつ安全な治療法の確立が,今後の骨髄移植の成功率を上げる不可欠の要因であると推察された.
  • 石崎 純子, 伊藤 治夫, 栗村 理恵, 原田 敬之
    1996 年 37 巻 4 号 p. 235-238
    発行日: 1996/10/30
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
    表在性皮膚カンジダ症の中で比較的稀な病型である,手掌の角質増殖型皮膚カンジダ症の1例を報告する.症例は32歳,女.両手掌に角化の著明な落屑性紅斑と,右第I指爪甲に剥離,肥厚を認めた.健康で基礎疾患を認めず,発症の誘因として,ステロイド剤の外用とビニール手袋の使用が考えられた.原因菌はCandida albicans (type A)と同定された.最も皮疹が著明であった初診時の直接鏡検では菌糸のみを認め,カンジダに特徴的な寄生形態がみられなかったが,ステロイド外用を中止して2週間後の鏡検ではカンジダに典型的な鏡検所見を認めた.治療として局所的要因の除去に加えてイトラコナゾールの内服を行なったところ,菌の陰性化と比較的早期の症状改善を認めた.
  • 二木 芳人, 佐々木 隆, 吉田 耕一郎, 宮下 修行, 中島 正光, 松島 敏春
    1996 年 37 巻 4 号 p. 239-243
    発行日: 1996/10/30
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
    トリアゾール系抗真菌薬イトラコナゾール(ITCZ)を,種々の肺アスペルギルス感染症例あるいはその疑いの10例の患者に投与して,それぞれの血中濃度および一部では病巣内の濃度を測定し,また,感染症例ではその臨床効果を検討した.ITCZの血中濃度は用量相関的に高まり,200~400mg/日,8日間以上の投与では1,300ng/mlを上まわる最高血中濃度が得られていた,ただ症例によってはやや血中濃度上昇の不十分なものもみられ,吸収性や代謝の個人差については注意が必要と考えられる.組織内移行については,肺組織へは血中濃度の3/4程度が移行していたが,胸水内濃度はやや低く,1例では測定下限以下であった.また,喀痰中へのITCZ移行も確認できなかった.
    臨床効果は他の治療法との総合的な評価でみた結果,感染症例9例中2例で治癒,5例で改善の有効率77.8%であったが,血中濃度の高低と必ずしも相関をみなかった.しかしながら,長期間投与でも特に副作用の出現をみたものはなく,慢性経過例や維持療法には好適と考えられた.さらに,比較的大量の初期用量を用いて早期に十分な血中濃度を得ることで,より侵襲型感染も含めた幅広い治療適応も得られるものと考えられた.
  • 丹生 茂, 丹生 徹, 池田 達夫, 安部 茂, 山口 英世, Preethi D. Perera
    1996 年 37 巻 4 号 p. 245-249
    発行日: 1996/10/30
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
    lysozymeとアゾール系抗真菌剤lanoconazoleのCandida albicans(以下Candida)発育阻止能に対する併用効果を検討した.Candida発育量は,サブロー培地で14時間培養したときの濁度の増加で測定し,卵白lysozymeとlanoconazoleを培養系に添加したときのCandida発育阻止能を求めた.その結果,1)8株のCandidaのうちlysozymeは,7株の発育を阻止した.それらの7株はlanoconazoleと併用すると,より強いCandidaの発育阻止を示した.そのうちの平均的な1株(TIMM1768)では,共存することによって相乗的効果が見られた.2)Candida発育に対する阻止効果は,14時間から72時間に培養時間を延長した場合にも観察された.3)lysozymeとlanoconazoleを共存させた14時間培養下でのCandida菌数は,培養開始時と変化がなかった.
    これらの結果からlysozymeは,lanoconazoleのCandida発育阻止能を,相加的または相乗的に強めることが示され,その併用効果が,臨床的に局所治療効果を高める可能性を考察した.
  • 溜池 あかね, 許斐 麻美, 佐藤 眞美子, 石島 早苗, 庭野 吉己, 大隅 正子
    1996 年 37 巻 4 号 p. 251-261
    発行日: 1996/10/30
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
    イミダゾール系抗真菌剤ラノコナゾール(LCZ)の,液体培養したTrichophyton rubrum発育菌糸に対する形態学的影響を,超高分解能低加速電圧走査電子顕微鏡ならびに透過電子顕微鏡を用いて観察した.
    LCZ添加菌糸は薬剤濃度段階により,特徴的な形態変化がみられた.すなわち,(1)最小発育阻止濃度(MIC,20ng/ml)のLCZ添加菌糸のゴースト化,(2)中濃度(0.31~2.5ng/ml)薬剤添加菌糸における,湾曲,過剰分岐,(3)低濃度(0.02~0.078ng/ml)薬剤添加菌糸の細胞壁の剥離,(4)濃度段階に応じた細胞壁の外側からの段階的剥離を確認した.さらに,高濃度ではゴースト化した細胞が多数認められ,一方では細胞壁の電子密度が上昇し,オルガネラが融解した細胞も多く認められた.
    菌糸細胞内では,中濃度薬剤添加で,細胞壁の肥厚が観察された,特に菌糸先端部の肥厚が顕著であった.また,細胞壁に高電子密度の顆粒が出現した.
    以上の結果から,LCZはMICの1/1,000の低濃度でもT.rubrum菌糸に影響を与え,特に細胞壁に形態学的変化を引き起こすことが示された.
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