旭川医科大学皮膚科外来における1990年1月から1995年12月までの6年間の(爪白癬を除く)白癬菌相を調査し,1977年から1989年までの13年間の当科の統計(前回)と比較検討した.今回6年間に当科を受診した白癬患者は738名(男435名,女303名)で,新患総数の7.8%に相当した.男女比は,約3:2で,年齢別では50歳代(23.4%)に最も多く認められた.また,月別症例数では,6月から8月に多かった.病型別では,足白癬が74.3%と最も多く,次いで,体部白癬15.4%,股部白癬4.3%,手白癬3.8%,頭部白癬1.4%がこれに続いた.ケルスス禿瘡は3例(0.4%),白癬性毛瘡は2例(0.3%),白癬性肉芽腫は1例(0.1%)に認められた.培養陽性率は,65.5%で,その内訳は,
Trichophyton rubrum (TR) 64.5%,
Trichophyton mentagrophytes (TM) 27.9%,
Microsporum canis (MC) 4.8%,
Trichophyton verrucosum (TVe) 2.6%,
Epidermophyton floccosum (EF) 0.2%であった.これらのデータを前回の集計と比較した結果,
1) 新患総数に対する白癬患者割合は,前回の6.1%に比べ7.8%と増加傾向を示した.
2) 男女比,および月別症例数は,前回同様であった.
3) 年齢別症例数では,前回の報告では,40歳代(21.2%)に最も多く認めたが,今回の統計では,50歳代(23.4%)にピークを認めた.また,50歳代以降の年齢層の割合も増加しており,患者層の高齢化がうかがえた.
4) 病型別では,前回と比べ足白癬,体部白癬の若干の増加と,股部白癬,ケルスス禿瘡の減少を認めた.
5) 培養陽性率は,前回49.5%であるのに対し,今回は65.5%と陽性率の上昇を認めた.
6) 培養成績では,前回は,TR58.1%,TM33.1%,MC5.4%,EF1.8%,TVe1.2%,TVi(
Trichophyton violaceum)0.4%でありTR,TVeの増加およびEFの減少,MCの若干の減少を認めた.
7) 足白癬のTR/TM比は,前回の1.08から今回1.85と増加していた.
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