皮膚真菌症の病態および防御機構を解明する目的で,著者の前腕皮膚に実験皮膚真菌症(
Trichophyton mentagrophytesによる体部白癬およびスポロトリコーシス)を作製し,1/2系列にステロイド軟膏(S)の基剤を,残り1/2系列にSを1日1回外用し,それぞれの臨床症状,病理組織学的所見,免疫組織化学的所見,免疫学的所見などを4週にわたり比較検討した.その結果,表在性真菌症の病態は,CD-1陽性細胞の動態を含めて接触皮膚炎(CD),特にアレルギー性接触皮膚炎に合致し,防御機構はこのCDに伴う表皮のturn over亢進による異物排除にあることが示唆された.S外用は,この防御機構を抑制することにより臨床症状は軽いが菌要素は多いという「いわゆる異型白癬」を生じさせ,この誘因であることも示唆された.
深在性皮膚真菌症の病態は,化膿性肉芽腫性病変,病理組織学的にはmixed cell granulomaで,好中球,組織球が殺菌・消化を担っているが,周辺では異物ないし類上皮細胞肉芽腫が包囲し,拡散を防ぎ,これに経上皮排除が加わるものであることが示唆された.S外用はこれら防御機構を抑制することにより臨床症状のみならず組織反応をも軽減させ,ついには組織球がただ菌を貪食し拡散を防ぐだけの状態の「いわゆる菌要素が無数に認められるスポロトリコーシス」を生じさせ,この誘因であることも示唆された.なお,トリコフィチン反応は2週目,スポロトリキン反応は1週目に陽転した.
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