日本医真菌学会雑誌
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46 巻, 4 号
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  • 池田 文昭
    2005 年 46 巻 4 号 p. 217-222
    発行日: 2005/10/30
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
    最近,ヒトにはない真菌細胞壁の生合成を特異的に阻害する新規の抗真菌薬,カスポファンギンおよびミカファンギンが登場し,各々米国および本邦で製造承認され発売されるに至った.このクラスの抗真菌薬はリポペプチド様の構造を有する天然物質echinocandin,pneumocandinなどの誘導体研究により創出された半合成化合物で天然物質の名をとってキャンディン系抗真菌薬と総称されている.
    ミカファンギンはリポペプチド抗真菌物質FR901379の側鎖変換,最適化研究により創製された化合物である.ミカファンギンは,真菌細胞壁の主要構成成分である1,3-β-D-glucanの生合成を特異的に阻害することにより,カンジダに対しては殺菌的に,また,アスペルギルスに対しては菌糸先端部を破裂させ菌糸伸長を強力に阻止する作用を示す.また,これらの菌株による各種動物感染モデルにおいてin vitro抗真菌活性を反映した優れた治療効果を示した.国内における臨床試験ではアスペルギルス症およびカンジダ症に対して優れた臨床効果が得られ,用量依存的に発現する副作用やミカファンギンに特徴的な重篤な副作用は認められなかった.これらの基礎および臨床試験成績からミカファンギンはアスペルギルス症およびカンジダ症に高い有効性を有し,かつ安全性に優れ,深在性真菌症の第一選択薬として幅広い病態の患者に使用できる薬剤と考えられる.ミカファンギンは国産初の抗真菌薬として2002年より発売を開始し,その臨床的有用性に高い評価を受けている.また,米国においても本年3月に承認され,その他の諸外国では現在申請中である.
  • 白沢 博満, 梛野 健司
    2005 年 46 巻 4 号 p. 223-228
    発行日: 2005/10/30
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
    ボリコナゾール(VRCZ)は,広い抗真菌スペクトルを有するアゾール系抗真菌薬である.フルコナゾール低感受性菌も含めたカンジダ属,アスペルギルス属,クリプトコックス属等に対して強い抗真菌活性を有し,アスペルギルス属に対して殺菌的に作用する.さらにフサリウム属やスケドスポリウム属等のまれな真菌に対しても活性を有する.剤型は経口剤と注射剤があり,経口剤は安定して100%に近い吸収率を示す.蛋白結合率は約58%であり,40%以上が遊離型として存在する.髄液・脳への移行性も含め,組織移行性に優れる.
    外国では,深在性真菌症を対象とした他剤との比較試験が複数実施されている.その結果,VRCZは既存治療を上回る有用性が確認されている.
    本剤は2002年に米国FDA及び欧州EMEAに承認されており,2004年9月現在,50か国以上で承認されている.
  • 深澤 万左友
    2005 年 46 巻 4 号 p. 229-231
    発行日: 2005/10/30
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
    リポソーマルアムホテリシンB(AmBisome™)は,現在でも深在性真菌症治療の“gold standard”とされているアムホテリシンB(AMPH-B)の抗真菌活性を維持しつつ副作用を低減させたDDS(Drug Delivery System)製剤である.母剤のAMPH-Bは,アスペルギルス,カンジダなど幅広い抗真菌スペクトラムを有し,殺菌的に作用する.その作用機作はAMPH-Bが真菌細胞膜のエルゴステロールに吸着し,細胞膜の透過性を高め細胞質成分を漏出させることである.一方,AMPH-Bはヒト細胞膜のコレステロールへの親和性が低く真菌細胞ほど強い影響を与えないが,この選択毒性は完全でないため臨床では重篤な腎毒性等が発現し,その使用には十分な注意が必要である.
    本剤は単層リポソーム構造を有し,投与後も血流中にほとんどフリーのAMPH-Bを放出することなく感染組織にリポソームのまま運ばれ効果を示す.AMPH-B既存製剤(ファンギゾン™)と同様のin vitro抗真菌活性ならびに動物実験でのin vivo効果を示し,海外臨床試験でも同様の高い治療効果が認められている.それと同時に,リポソーム化に伴う薬物動態特性の改善や動物細胞への傷害性や反応性の著しい低減によって,毒性の軽減,特に腎臓に対する副作用や投与時における発熱,さむけ/悪寒などの頻度および程度が軽減された.
  • 二川 浩樹, 牧平 清超, 江草 宏, 福島 整, 川端 涼子, 浜田 泰三, 矢谷 博文
    2005 年 46 巻 4 号 p. 233-242
    発行日: 2005/10/30
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
    総義歯や部分床義歯などの床下の炎症を広義に義歯性口内炎と呼んでいるが,これは不潔な義歯,汚れた義歯による感染であることが知られている.“義歯の汚れ”すなわちデンチャープラークは,義歯性口内炎だけでなく口角炎などを引き起こすことも報告されている.また,材質の劣化を引き起こし,これに伴いデンチャープラークの堆積が助長され,ますます口腔内環境が悪化することが懸念される.さらに,義歯の汚れの中には,カリエス,根面齲蝕あるいは歯周病の病原菌が含まれている.したがって,鉤歯,隣在歯や残存歯に対して悪影響を及ぼし,残存歯数の減少からQOLの低下につながってしまうことが懸念される.また,高齢者においては,一般に口腔諸機能や全身抵抗性が低下しているが,その口腔内に不潔な義歯を入れておくことは,デンチャープラーク中の真菌群の誤飲,誤嚥による消化管や肺への真菌感染症をまねく危険性に常に患者をさらしているようなものである.このような“義歯の汚れ”,すなわち『デンチャープラーク』の実態であるCandida albicansの付着ならびにバイオフィルム形成について述べる.
  • 青木 茂治, 久和 彰江, 仲村 健二郎, 中村 康則
    2005 年 46 巻 4 号 p. 243-247
    発行日: 2005/10/30
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
    呼吸欠損変異は,呼吸器官であるミトコンドリアが遺伝的障害を受けて呼吸能が失われる変異である.酵母類には,呼吸欠損変異を誘導される種類と誘導されない種類がある.Candida albicansは後者の酵母群に入るとされていたが,われわれは,化学変異原としてacriflavineを加えた液体培地で高温培養することにより呼吸欠損変異株を誘導分離することができた.本論文では,得られた呼吸欠損変異株の呼吸活性とチトクローム,細胞の微細構造,ミトコンドリア,病原性,酸化ストレス感受性,活性酸素産生,抗菌物質作用と活性酸素との関係などについて,これまでわれわれがおこなってきた研究の概略を紹介したい.さらにカンジダ研究における呼吸欠損変異株の応用の可能性についても述べる.
  • 機能解析に関する最近の知見
    新見 昌一, 田辺 公一, 和田 俊一, 山崎 亜希子, 上原 至雅, Kyoko Niimi, Erwin Lamping, Ann R. ...
    2005 年 46 巻 4 号 p. 249-260
    発行日: 2005/10/30
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
    ABCトランスポーターは,分子内に高度に保存されたATP結合領域をもち,ATPの加水分解によって機能するタンパク質である。さまざまな生物種に存在し,トランスポーターとしての働きだけでなく,レセプターやチャネルとして機能するものもある.ある種のABCトランスポーターは,病原微生物や癌細胞で薬剤を細胞外へ汲み出す排出ポンプとして働き,その発現亢進は薬剤耐性を招く.また,ヒトではいくつかのトランスポーターの異常が種々の疾患に関わっていることが知られており,ABCトランスポーターは生物学的にも医学的にもきわめて重要なタンパク質であるといえよう.病原真菌においてもアゾール剤耐性にABCトランスポーターが主要な役割を果たしており,薬剤排出を担う様々なトランスポーターが深在性真菌症の起因菌から見いだされている.近年,ABCトランスポーターの解析が進み,これらの発現制御機構,基質認識,ATPの加水分解による機能制御,そして本来の生理的機能などが徐々に解明されつつある.本稿では病原真菌のABCトランスポーターに関する新しい知見を,我々の研究結果を交えて概説した.
  • Masako Kawasaki, Kazushi Anzawa, Hiroshi Tanabe, Takashi Mochizuki, Hi ...
    2005 年 46 巻 4 号 p. 261-265
    発行日: 2005/10/30
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
    Isolates of Exophiala jeanselmei have been classified into 15 types based on their mitochondrial DNA (mtDNA). Thirteen of the 15 types and E. spinifera, which has been classified as E. jeanselmei Type 14, were confirmed to be also clearly differentiated by restriction fragment length polymorphism (RFLP) in internal transcribed spacer (ITS) regions of ribosomal RNA genes in their nuclear DNA (nDNA). Twenty strains of E. jeanselmei, newly identified or isolated from patients in Japan, were examined for mtDNA-RFLP and ITS-RFLP. The twenty isolates were comprised of: 11 E. jeanselmei Type 5, 6 E. jeanselmei Type 6, 2 Type 10, and 1 Type 8. E. jeanselmei Type 6 was the second most common strain in Japan after Type 5. Type 5 was definitely identified as E. jeanselmei var. jeanselmei and Type 8 was identified as E. jeanselmei var. lecanii-corni based on the genotypes of type strains of these species. However, two other types were still designated as E. jeanselmei Type 6 and E. jeanselmei Type 10.
  • 北見 由季, 香川 三郎, 飯島 正文
    2005 年 46 巻 4 号 p. 267-272
    発行日: 2005/10/30
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
    74歳女性の顔面に生じたPaecilomyces lilacinus感染症の1例を経験した.初診の約1年8か月前より自己免疫性溶血性貧血があり,プレドニゾロン,アザチオプリンを内服中である.約1年半前に右外眼角に褐色小局面が出現し,徐々に増大し,圧痛も伴ってきた.3か月前,通院中の病院の皮膚科を受診.日光角化症の疑いで生検を施行し,その結果深在性真菌症が考えられ,当科を紹介受診した.
    現症:右外眼角から頬部にかけて,表面凹凸不整のわずかに隆起した褐色局面と,周囲に半米粒大の丘疹が散在.右頬部に小指頭大までの膿瘍が散在,軽度圧痛あり.菌学的検索より原因菌をP.lilacinusと同定した.治療はまずグリセオフルビン500mg/日を3週間投与したが無効.次にイトラコナゾール200mg/日~300mg/日の連続投与を行い,最終的に400mg/日を1週間投与,3週間休薬するパルス療法を3クール行い皮疹は軽快し,現在経過観察中である.
  • 高橋 容子, 佐野 文子, 小森 隆嗣, 亀井 克彦, 西村 和子
    2005 年 46 巻 4 号 p. 273-278
    発行日: 2005/10/30
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
    74歳,女性のTrichophyton tonsuransによるblack dot ringwormを報告した.患者は20年来,頭皮に痒みと落屑があり,1999年に直接鏡検で真菌陽性が判明した.臨床所見は前頭部から後頭部に及ぶ大型の脱毛斑で,その中に多数の黒点と,鱗屑を伴った紅色丘疹が散在していた.病毛の直接鏡検で毛内性大胞子菌性寄生を認め,培養所見では集落は中央が綿状に隆起し辺縁が白色粉状で,裏面は赤褐色を呈した.スライドカルチャーでは,棍棒形~球形,極端には風船様に膨らんだ大小種々の小分生子と,少数の大分生子,及びラセン体を認めた.毛髪穿孔試験陰性.ウレアーゼ試験陽性.ITS1-5.8S-ITS2領域のリボソームRNA遺伝子の解析で,新潟県の2例の高齢女性の頭部白癬から分離されたT.tonsurans 2株と100%一致した.以上より,本菌株をT.tonsuransと同定した.一方,最近流行している格闘技選手や最近の単発例とはITS1領域で3塩基相違があったことからT.tonsuransには種内多型があり,輸入株とはITS1領域で鑑別可能な日本の在来株が存在することが示唆された.在来型のT.tonsuransが千葉県で分離されたのは今回初めてであるが,菌学的に酷似するT.coccineumが,第二次大戦前に多数分離されていたことを考えると,本県には古くからT.tonsuransが存在していた可能性がある.
  • 角谷 廣幸, 角谷 孝子, 望月 隆
    2005 年 46 巻 4 号 p. 279-284
    発行日: 2005/10/30
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
    特別養護老人ホームの入居者1人,ショートステイ利用者1人,職員の1人にTrichophyton(以下T.)violaceumによる白癬が,職員の1人に同菌によると推測される白癬を生じた.さらに入居者の2人が同菌のキャリアであった.症例1:66歳女性.老人ホーム入居者.1ヶ月前に頭部に落屑性紅斑が生じ,その後徐々に顔面,頚部,躯幹に拡大した.頭部に毛孔一致性に黒点が多発.黒点部より摘出した毛髪のKOH所見は毛内性大胞子菌性寄生の像.形態及びPCR-RFLP法にてT.violaceumと同定し,同菌による頭部白癬及び体部白癬と診断.症例1と接触した可能性のある入居者21人,職員38人にヘアブラシ法を含む検診を施行した結果,入居者の85歳女性(症例2)の頭部,83歳女性(症例3)の頭部,職員の23歳男性(症例4)の右前腕からT.violaceumを分離.菌は分離されなかったが臨床的に右前腕の白癬が疑われる職員の24歳男性(症例5)の4人が新たに見出された.さらに症例1の初診の約1年後にショートステイ利用者の88歳の女性(症例6)にT.violaceumによる頭部白癬の発症が確認され,この老人ホーム関係者内で菌が保持されていた可能性が示唆された.PCR-RFLP法は短時間で同定結果が示されるため,治療法の選択や介護の際の注意をするため菌種による配慮が早めにでき有用であった.今回の集団感染の原因として,介助による皮膚の接触,洗髪の際のヘアブラシの共用による菌伝播の可能性が考えられた.
  • Iwao Takiuchi, Nobuaki Morishita, Taizo Hamaguchi, Junya Ninomiya, Ryo ...
    2005 年 46 巻 4 号 p. 285-289
    発行日: 2005/10/30
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
    A total of 168 patients with tinea pedis, but without onychomycosis, were treated with 1 cycle of terbinafine (TBF) (1 cycle: defined as 250mg/day for 1 week). KOH preparation for direct microscopy was performed 4, 8 and 12 weeks after starting therapy to determine if testing was positive for tinea. Patients with no negative results on KOH examination or no evidence of obvious clinical improvement at 8 weeks, another cycle of the therapy was prescribed. The “cure, ” “no cure, ” “dropout, ” and “discontinuation/unevaluable” rates were 89.3%, 4.8%, 4.8% and 1.2%, respectively. The number of cycles required for cure in the plantar type was 1 cycle in 65.9% and 2 cycles in 54.5% of cases; in the interdigital type, 1 cycle in 79.1% and 2 cycles in 20.9% of cases; and mixed type, 1 cycle in 29.1% and 2 cycles in 60.9% cases. Among patients who were followed for at least 3 years after cure, the relapse rates were about 10% each year: 1 year, 11.3%; 2 years, 8.9%; and 3 years, 11.2%. The relapse rate of about 10% each year over a 3-year period suggests that reinfection may be likely.
  • Takashi Komori, Ayako Sano, Kyoko Yarita, Teruyuki Kitagawa, Katsuhiko ...
    2005 年 46 巻 4 号 p. 291-295
    発行日: 2005/10/30
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
    In order to confirm the phylogenetic relationships of Histoplasma capsulatum, the partial sequences of large subunit (28S) ribosomal gene (D1/D2 region) of 49 isolates were studied. The similarity values of the 49 isolates were more than 99.0% across 617 base pairs, however, the 49 isolates were divided into 9 groups. These 9 groups were independent of 3 varieties, var. capsulatum, var. farciminosum and var. duboisii. These results showed that analysis of the nucleotide sequence of the 28S rRNA gene was very effective for identification of H. capsulatum and that three varieties of H. capsulatum should be reclassified according to the phylogenetic relationship established from analysis of the D1/D2 region sequences.
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