日本医真菌学会雑誌
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47 巻, 1 号
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総説
  • 笠井 達也
    2006 年 47 巻 1 号 p. 5-9
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/07/27
    ジャーナル フリー
    国立仙台病院皮膚科に於ける1968年以降30年間の皮膚真菌症の集計をもとにして, 皮膚真菌症の推移を検討した. 本統計の詳細は既に報告してあるので, ここでは経時的な推移に主眼をおいて論じた. 皮膚真菌症全体としては1970年代前半に急増後はほぼ平均した値が維持されているが, 病型別に見ると, 足白癬と爪白癬は増加, 体部白癬と股部白癬は減少傾向が顕著である. 手白癬は比較的変動が少なく, 少しずつ減少, 頭部白癬も全体としては少数ながら, 期間の中期にやや増加した後, 後期には減少傾向にある. 年齢分布の推移を見ると, 足白癬, 爪白癬では分布のピークが5年毎に5歳ずつ高齢側に移動すると共に, 分布曲線の山が広くなだらかとなり, 若年層の罹患の減少傾向を見る. 股部白癬では当初の若年層の山が後半全く消失して, 高齢側の低く広い分布に変わっている. 体部白癬でも同様の傾向が見られる. 皮膚カンジダ症は乳児寄生菌性紅斑の急増に伴い1970年代前半に顕著に増加した後, 急減. カンジダ性間擦疹も同時に増加後は, 余り減らないままに推移している. カンジダ性爪囲爪炎と指間びらんは女性に圧倒的に多いが, 近年やや減少傾向にある. 非定型疹も減少している. 癜風は終始ほぼ変動がない. スポロトリコーシスは20例, 深在性の皮膚アスペルギルス症と黒色真菌症は各1例観察された.
原著
  • 吉村 理枝子, 伊藤 弥生, 森下 宣明, 二宮 淳也, 滝内 石夫
    2006 年 47 巻 1 号 p. 11-14
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/07/27
    ジャーナル フリー
    当科外来を受診した爪白癬患者100例から得られた罹患爪の一部をサブローブドウ糖寒天培地に培養し, 27℃にて, 最長2ヵ月間観察した。残りの爪サンプルを凍結, 超音波破砕しDNAを抽出, リボゾームDNA上のITS領域を用いたPCRをおこない, 得られたPCR産物をMva I, Hin f Iの各制限酵素で消化し, 切断パターンを分析した. また, 爪サンプルの重量を測定し, PCR-RFLP法の結果と比較した. 結果は培養法の同定率が20%にとどまったのに対し, PCR-RFLP法では73%であった. 爪サンプルの重量とPCR-RFLP法での同定結果との間には有意差は認められなかった. サブローブドウ糖培地を用いた培養による爪白癬の起因菌同定に際し, 菌のviabilityの問題から培養成功率の低さが指摘されていたが, 爪サンプルから直接行うPCR-RFLP法は迅速かつ成功率の高い同定法であると思われる.
  • ―日本病理剖検輯報 (1990, 1994, 1998, 2002年版) の解析―
    久米 光, 山崎 敏和, 阿部 美知子, 田沼 弘之, 奥平 雅彦, 岡安 勲
    2006 年 47 巻 1 号 p. 15-24
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/07/27
    ジャーナル フリー
    骨髄異形成症候群 (MDS) を含む白血病 (以下, 白血病) 剖検例における内臓真菌症の現況を明らかにする目的から, 日本病理剖検輯報を検索対象として解析した. これらの基礎疾患における内臓真菌症の発現頻度は, 27.9% (435例/1,557例, 1989年), 23.0% (319例/1,388例, 1993年), 22.3% (246例/1,105例, 1997年), 25.1% (260例/1,037例, 2001年) で, 白血病を除く剖検例における発現頻度 (3.4%, 2.7%, 3.5%および3.7%) の6.4倍から8.5倍であった. 白血病の病型別にみた頻度では急性骨髄性白血病, 急性リンパ性白血病およびMDSに高頻度であった (67.6%~75.2%). 白血病のうち, 造血幹細胞移植例における頻度は各々36.7%, 33.9%, 38.0%および32.8%, 移植例のうち移植片対宿主病 (GVHD) を伴った症例における頻度は1989年 (14.3%) を除き36.4~46.2%と, 内臓真菌症の発現頻度はさらに高率であった. 主たる起因真菌はCandida およびAspergillus であったが, 1989年で前者が33.6%, 後者が33.3%とほぼ同等であったが, 2001年では同様に, 16.9%, 54.2%と経年的にアスペルギルス症の割合が増加しており, この傾向は移植例やGVHDを伴った症例でより顕著であった.
  • 遠藤 平仁, 吉田 秀, 近藤 啓文, 久米 光, 野村 友清
    2006 年 47 巻 1 号 p. 25-29
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/07/27
    ジャーナル フリー
    活動性のWegener肉芽腫症の肺空洞病変にアスペルギルス感染を生じた症例を経験した. 40歳代男性. Wegener肉芽腫症, ステロイド, 免疫抑制薬による加療中に両側肺空洞病変にアスペルギルス感染を生じた. 腎機能障害のためアンホテリシンBの継続投与ができず, またミカファンギン単独投与では効果不十分であった. しかしミカファンギンとイトラコナゾールの併用療法により菌塊が縮小し, 空洞辺縁部の浸潤影が改善し病変部位を切除し得た. 重症かつ難治性深在性真菌感染症に対して作用機作の異なる抗真菌薬の併用療法の有効性に関する知見はまだ数少ないが, 本例ではミカファンギンとイトラコナゾールの併用が有効であった.
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