日本医真菌学会雑誌
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最新号
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総説
  • 三上 襄
    2010 年 51 巻 4 号 p. 179-192
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/11/03
    ジャーナル フリー
    放線菌による疾患は,易感染者の増加と相まって本邦においても増加傾向にある.病原性放線菌の代表的な菌種であるNocardia farcinica の全ゲノム解析結果が2004年に公開された.全ゲノム情報,さらには遺伝子や細胞構成成分の解析技術の進歩は,病原菌の分類学にも大きな影響を与え,それまで20種以下であったNocardia の菌種は,現在では68種にも及んでいる.その約1/4が筆者らのグループが提案した新菌種である.全ゲノム情報がもたらした結果としてのNocardia の新しい分類基準として,gyrB 遺伝子の解析に基づく新しい系統研究法などの提案や,それら手法の分類における重要性を指摘した.またNocardia のゲノム情報が示す病原因子の産生機構や有用産物の産生に関与する遺伝子について概説した.実際に筆者らが発見したNocardia が産生する新しい活性物質や新規な構造をもつ抗生物質などの二次代謝産物について紹介した.Nocardia が示す独特の薬剤耐性機構,特に抗結核剤であるrifampicinの不活化に関する新しい分子機構の発見に至った経過など,筆者らが行った研究について将来への検討課題も含めて紹介した.
原著
  • 野口 博光, 榮 仁子, 服部 真理子, 比留間 政太郎
    2010 年 51 巻 4 号 p. 193-198
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/11/03
    ジャーナル フリー
    症例1は26歳,女性,左頬部に25mm大の落屑を伴う紅斑を認め,直接鏡検が陽性,顔面白癬と診断した.マイコセル寒天培地25℃の培養で集落を分離し,巨大培養とスライド培養の形態学的特徴から Trichophyton mentagrophytes と同定した.さらにリボゾームRNA遺伝子 (rDNA) のinternal transcribed spacer 1 (ITS 1) 領域のDNA塩基配列の解析の結果,分離株は Arthroderma vanbreuseghemii と同定された.飼いネコ9匹のヘアブラシ培養検査で,2匹からの分離株は A. vanbreuseghemii と同定され,ネコが感染源である可能性が示唆された.症例2は11歳,男児,左眼囲,鼻根部,左頬部の手掌大の紅斑落屑局面を認め,直接鏡検が陽性,顔面白癬と診断した.6週間前からステロイドを外用していた.分離株は A. vanbreuseghemii と同定された.飼いネコ2匹と飼いイヌ1匹より真菌培養を試みたが,同様の真菌は検出されなかった.2000年以降,わが国で分子生物学的に A. vanbreuseghemii と同定された白癬の報告は自験例を含めて16件25例あったが,12例は顔面に発生しており,11例はステロイド外用歴があった.本菌は顔面白癬の原因菌の1つとして重要と考えた.
  • 飛田 敏江, 川南 裕美, 石橋 健一, 三浦 典子, 安達 禎之, 大野 尚仁
    2010 年 51 巻 4 号 p. 199-206
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/11/03
    ジャーナル フリー
    われわれはSparassis crispaより可溶性の β-glucan (BG):SCGを精製し,その生物活性について検討してきた.BGの白血球への応答性にはマウス系統差が存在し,DBA/2マウスはSCGに強く応答し,in vitro においてサイトカイン産生を誘導する.そこで本研究では,DBA/2マウスにおける in vitro 培養の条件設定について精査し,SCG添加の至適条件を設定したうえでDNAマイクロアレイを用いて,BGにより誘導される因子を網羅的に解析した.まず,SCGの至適な刺激時間を検討したところ,培養開始直後に添加した場合のみならず,24時間後または30時間後に添加しても有意なサイトカイン産生が認められた.遺伝子発現の解析においては最も短時間刺激することが夾雑刺激を示しにくいと考え,さらに前処理時間を延長し,36時間目にSCGを添加し,その後4時間でRNAを調整することとした.この条件で得た検体を用いて網羅的解析を行ったところ,SCGにより発現が2倍以上亢進する遺伝子は,サイトカインやケモカインに関する遺伝子をはじめEdn1,Ptgs2など18種類であった.さらに,発現産物のレベルでこれらの遺伝子を評価したところ,サイトカインに加え,prostaglandin E2 (PGE2) が検出された.以上の結果から,脾細胞は培養前半でBGに対する応答性が高まり,その後SCGによる様々な因子の発現誘導が起こるものと考えられた.
  • Darren Salmi, Aarti Bhat, Larry Corman, Gary Raff, Noriko Satake
    2010 年 51 巻 4 号 p. 207-210
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/11/03
    ジャーナル フリー
    Diagnosis and treatment of Candida albicans endocarditis can be difficult. We report a case of this rare condition in which a patient on oral fluconazole presented with septic pulmonary emboli without initial echocardiographic evidence of vegetation. Rapid attainment of a tissue diagnosis, along with combined medical surgical treatment proved to be effective for this patient.
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