Aspergillus fumigatus より作られた特定の抗原 (培養濾液抽出物) を用いて, 肺アスペルギルス症の血中沈降素 (寒天ゲル内沈降反応による) に関する臨床的ならびに基礎的研究を行ない, 次の結論が得られた.
1) 肺アスペルギロームでは, 診断的価値が極めて高く, 本沈降線の消長をみることは, 菌球の生死や, 化学療法の効果判定に有用であると思われた.
アレルギー型の気管支アスペルギルス症と思われる1例では, 肺アスペルギロームの際とは異なつたpatternの沈降線がみられた.
2) 組織浸襲型のアスペルギルス肺炎ないし肺膿瘍において, ウサギの感染実験では, 沈降線がみられたが, 臨床例では, 本抗原に対する特殊な抗体は認められなかつた. 動物と人間におけるこのdiscrepancyは, 今後の重要な研究課題である.
なお, 肺アスペルギルス症の免疫学的診断 (寒天ゲル内沈降反応) には, Ouchterlony 法及び免疫電気泳動法の両者を併せ行なう必要がある.
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