真菌と真菌症
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20 巻, 2 号
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  • 澤崎 博次, 信太 隆夫, 池本 秀雄, 米田 良蔵, 工藤 禎, 田村 静夫
    1979 年 20 巻 2 号 p. 91-131
    発行日: 1979/09/06
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
    肺アスペルギルス症に就ては過去数回にわたりシンポジウムが持たれている. 今回のパネルディスカッションは従来触れていなかつた点を補い, 臨床に重きをおき, 関連する基礎的な面も検討した.
    演者は肺アスペルギルス症の臨床に経験の深い方々ばかりである.
    先づ全国的な剖検例の調査から見てアスペルギルス症は逐年増加の傾向にあることが確認された.
    (1) 臨床像の現況 (a) 最近見られる様になつたアレルギー性気管支肺アスペルギルス症の診断基準, IgEの高値, central bronchiectasis, 栓子, 気管支発作誘発反応などの詳細に触れた. (b) 菌球型については結核に続発することが多いので結核病院の患者を対象とする調査で入院患者の2%前後の出現で, 非定型的な菌球例も多く, レ線像の変化も多彩であり, 結核空洞の他に硬化病巣部位からも菌球が発生する. また人工気胸, 胸膜炎, 肺切除術後に発生するものが多い. 危険な予後は少いが喀血死がある. (c) 肺炎型は殆んど剖検例で, 白血病などに合併するものが多い. 発病に白血球数の低下が関係する. 抗真菌剤で延命効果が期待出来るので早期診断の立場から菌の発見が重要である.
    (2) 診断 Ouchterlony 法による血清沈降反応 (寒天ゲル内二重拡散法), 補体結合反応, counterimmuno electrophoresis, 間接 (受身) 赤血球凝集反応等を菌球例の多数例に行い, 高率な陽性成績を得ているので診断法として有用である. 諸種抗原の比較検討も行われた.
    (3) 菌球型等の免疫能菌球型の細胞性ないし体液性免疫能の程度を検索すると, T細胞の機能低下があり, 体液性では免疫グロブリン値は全例として正常か若干増加の傾向にある. 対照とした結核症でもやや似た傾向が見られた. 基礎疾患として一番多い造血器腫瘍などではT細胞比率のみならず機能の著しい低下もあり, 二次感染の成立に極めて有利な条件となつているのが判明した.
    (4) 治療及び予後巨大菌球例に対してカテーテルによる5-FCの空洞内注入療法の成功例と, 内科治療に抵抗した多発菌球例に対する空洞切開術の成功例が示された.
    (5) 病理切除肺について, 菌球よりは空洞壁ないしは周囲肺組織に注意を払つて検索を進めた. 空洞の中枢部は軟骨を有する比較的太い気管支であり, 末梢は肋膜に接する, 即ち空洞はかなり大きい肺実質の欠損である. また空洞の側壁と末梢にも気管支が開口していて気管支の壊死, 化膿性炎が変化の主体である. 内腔にはしばしば真菌が存在する. 稀に気管支内腔に真菌を容れた閉塞性肉芽腫性病変が見られる. 次いでアレルギー性気管支肺アスペルギルス症例の理解に役立つ mucoid impaction の症例が紹介された. 中枢部気管支の拡張とその内容たる少数のアスペルギルスが示された.
    最後にまとめとして次の想定が提出された. 菌球型の発生には一次性と云わず, 結核症に続発する二次性と云わず, 免疫能その他の抵抗性の低下につけ込んで感染が成立し, アレルギー反応としてI型ないしはIII型, IV型の反応が起り, 中枢部気管支の壁が破壊され, 病変は肺実質に波及し, 比較的広範囲の欠損, 空洞となり, 菌糸は中枢部から発育増大をおこして空洞内を充たす. 一方肺組織の反応はIII型ないしはIV型の形をとるのではないか. 空洞性病変に続発するものもこれに準ずるものであろう. 造血臓器疾患に続発する「ア」症は全くカテゴリーの違う無反応性のものと考えるべきではないか. いづれもいくつかの事実の総合の上に組み立てられた仮説であるが, 今後はその細目を検討して行くべき筋合のものであろう.
  • 滝下 佳寛, 後東 俊博, 田村 正和, 螺良 英郎
    1979 年 20 巻 2 号 p. 132-139
    発行日: 1979/09/06
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
    カンジダ感染における細胞性免疫の機能を明らかにする目的で, 感作モルモットより得たリンフォカインのマクロファージ機能への影響を検討した. C. albicans 加熱死菌感作モルモットは同抗原による遅延型皮膚反応は陽性を呈したが, マクロファージ遊走阻止試験 (MIT) では遊走阻止のみならず遊走促進もみられた. C. albicans 生菌感作モルモットのリンパ球を C. albicans 可溶性抗原と共に培養し, その上清 (リンフォカイン) にてMITを行つたが感作条件の違いと共に遊走阻止のみならず遊走促進もみられた. 正常モルモットの肺胞マクロファージをリンフォカインと共に培養することにより, 同マクロファージのガラス面への粘着能の増強がみられたが, C. albicans に対する貪食能には差がみられなかつた. 以上の結果から C. albicans を用いて得たリンフォカインのマクロファージ機能への影響が多様であることが示された.
  • 吉井 由利, 春日井 達造, 中村 多美夫, 須知 泰山
    1979 年 20 巻 2 号 p. 140-144
    発行日: 1979/09/06
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
    化学療法中の胃癌患者16名について, 唾液, 胃液, 糞便中の Candida 属の検索を行つた. amphotericin B 非投与の8名では, 104/g以上の増殖がみられた者は, 唾液で50%, 糞便で75%であつた. amphotericin B 投与群8名では, 投与前唾液で75%, 胃液で67%, 糞便で71%に異常増殖が認められたが, amphotericin Bを2~3週間投与することにより, 唾液では63%に, 糞便では88%に Candida 属増殖抑制効果が認められた. 胃液で菌数減少が認められたのは1例であつた. amphotericin B 1日400mg 3週間の投与で,肝機能, 腎機能に障害は認められなかつた. 抵抗力の減弱している悪性腫瘍患者の治療において, 深在性 Candida 症の併発を予防するために amphotericin B を併用することは有用であると考える.
  • 西本 勝太郎, Hitomi Takemoto
    1979 年 20 巻 2 号 p. 145-147
    発行日: 1979/09/06
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
    A simple staining and mounting method of KOH preparation for mycological examination was mentioned. The procedure is shown in the figures and the slides made by this method can be observed for several months unchanged.
  • 西本 勝太郎
    1979 年 20 巻 2 号 p. 148-152
    発行日: 1979/09/06
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
    6歳女児の左頬に生じた皮膚アルテルナリア症の1例を報告した. 病変は軽度の角化と落屑を有する浸潤性紅斑局面で, 鱗屑の苛性カリ標本中に特異な形態をしめす菌糸をみ, サブローブドウ糖培地上にアルテルナリア属に一致する菌株を分離した. 病変はとくに治療を加えることなく, 短時日に自然治癒した. これまでに報告された皮膚アルテルナリア症例を一括し, その臨床症状に腐生的な性格の強いものから, 真の肉芽腫性病変に至るまで, 種々の段階のあることを示した. 最近の真菌学の発達にともない, 環境中にあつて, これまで病原菌と考えられていなかつた, いわゆる腐生菌による人の感染症が知られるようになつてきた. アルテルナリア属の真菌もその一つで, 元来植物に対する病原菌とされ, まれに人皮膚にも病変を生ずることが報告されている. 今回著者は, 6歳女児の, 左頬皮膚に生じたアルテルナリア感染症を経験したので, その病型につき若干の考察を加え報告する.
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