真菌と真菌症
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23 巻, 3 号
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  • 新井 正
    1982 年 23 巻 3 号 p. 191-200
    発行日: 1982/10/20
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
    深在性真菌症の感染成立の機構の解明や, 治療の実験的研究における問題点を主として Candida albicans の感染系について考察した.
    ヌードマウスは既に真菌感染に関与する胸腺依存細胞性免疫の程度を知るために内外に於て使用されてきた. しかし Cryptococcus neoformans, Sporothrix schenckii, Histoplasma capsulatum のような病原性の強い, 細胞内寄生性の病原真菌については, 感染と特異的細胞性免疫の関与が明瞭に立証されたが, C. albicansAspergillus fumigatus のような日和見感染菌については必ずしも明確な結果が得られていない.
    一例として Cutler らの使用した菌株と我々の菌株, 実験手技の面から検討を加えた結果を述べた.
    感染防御免疫についても体液性,細胞性など異論が多い. γ-線照射カンジダ抗原が生菌に劣らず良い防御免疫を成立させる実験結果を紹介した.
    このような C. albicans の実験系においては実験モデルの選択により著しく異つた結果が得られることが明らかである. 2・3の実験モデルによつてこの点を例証した.
  • 渡辺 昌平, 広永 正紀, 望月 隆
    1982 年 23 巻 3 号 p. 201-209
    発行日: 1982/10/20
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
    Sporothrix schenckii, dematiaceous fungi さらにはPetriellidium boydii (Scedosporium apiospermum), dermatophytes などによる稀有な内臓真菌症について自験例を含めてreviewを行つた. さらに, これらの疾患の治療に有効と思われる薬剤4種 (ketoconazole, clotrimazole, amphotericin B, 5-flucytosine) について in vitro での抗菌価測定試験を行つたが, 温度の影響を加えることによつてどのような結果が得られるかを検討した. Sporothrix schenckii は, 温度による影響が大で, 37℃では全く発育を示さなかつたが, 27℃の条件下では ketoconazole が最も秀れた効果を示した. 黒色真菌の各菌種に関しては, 4薬剤のうち ketoconazole が全般に良い成績を示したが, Fonsecaea pedrosoiExophiala dermatitidis の一部の菌株では, 温度が上がるにつれて抑制傾向が見られるものがあつた. Amphotericin B の抗菌効果は菌種によつて大きな差が見られるが, 高温条件下では著明な抗菌効果を示すものが少なくなかつた.5-FCも amphotericin B の場合と同様, 温度の影響がかなり見られた. また2薬剤の相乗効果を同様に in vitro で検討したが, ketoconazole+amphotericin B, ketoconazole+5-FC で若干の抗菌活性増強が見られた. P. boydii (S. apiospermum) に対しては4薬剤の中でketoconazoleが最も秀れており, 次いで clotrimazole で, 他の2種は殆んど抗菌力を示さなかつた. 温度による影響も見られなかつた. なお, これら一連の in vitro の実験において Sabouraud dextrose agar と Bacto-Yeast-Morphology agar の培地の差は殆んど認められず, むしろ温度による影響の方が注目された.
  • 池本 秀雄
    1982 年 23 巻 3 号 p. 210-214
    発行日: 1982/10/20
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
    1960年1月より1981年12月までの間に経験した肺アスペルギロームは32例に上るが, 同期間に死亡が確認されたものが少なくとも14例ある. 死因の内訳は呼吸器障害ないし疾患が9例, 呼吸器以外の疾患が5例である. 前者では肺感染症6例 (このうち細菌性肺炎と思われるものが5例), 呼吸不全2例, 喀血後凝血塊による窒息1例, 後者では消化管悪性腫瘍2例, 代謝障害2例, 頭部外傷1例である. これらのことより肺アスペルギロームの患者は肺炎を合併しやすいといえるかもしれない. なお諸治療により菌球が消失した数例の患者では, 咳, 痰, 血痰などの呼吸器症状は治療前に比べて明らかに軽減している.
  • 伊藤 章
    1982 年 23 巻 3 号 p. 215-221
    発行日: 1982/10/20
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
    全国大学病院内科, 外科, 小児科, 泌尿器科各教室および全国主要国・公・私立病院臨床科より集めた1971年1月より1981年8月迄のアンケート集計によるクリプトコックス症 (回収率48.8%) および医学中央雑誌より集めた1971年~1980年発表のクリプトコックス症の両者から重複例を除外した453例の深在性クリプトコックス症を対象とし, 診断, 治療, 予後等につき集計し, 問題点を検討した.
    クリプトコックス症は年間30~60例の症例がみられ, 男女比は1.3対1で20~69歳にかけて多い. 中枢神経系クリプトコックス症252例, 肺クリプトコックス症132例, 全身性クリプトコックス症82例で, 生存例は各々177例 (39.1%), 55例 (49.1%) 2例 (2.4%) である. これらの症例の集計の結果から次の点が問題としてあげられよう.
    1. 近年クリプトコックス症は,報告されることは以前程多くはないが実数は増えつつあると思われる.
    2. 本症の早期診断のための血清学的診断の普及が望まれる.
    3. 本症は opportunistic infection の1つとしても注目されており, 白血病, 悪性リンパ腫, 膠原病などの基礎疾患を有する例に多く, 免疫不全との関係は, 今後課題となろう.
    4. アムホテリシンBと5-フルオロサイトシンに優る治療薬がない現在, より副作用の少い, より優れた抗真菌剤の出現が望まれる.
  • 螺良 英郎, 田村 正和
    1982 年 23 巻 3 号 p. 222-226
    発行日: 1982/10/20
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
    深在性カンジダ症の臨床上の特異性は Candida 属が正常菌叢に属しているので, 感染と発症との境界が不鮮明であることと, 原発性感染が稀で, その殆んどが続発性であることにある. 続発性の場合の基礎疾患には白血病, 悪性リンパ腫, 各種癌がある. かつかかる基礎疾患への医原的抑制が生体の感染防御能を低下させて Candida 属の定着, 増殖から深在性感染に及ぶものと解せられ, 免疫不全状態の関与も大きい. こうした宿主条件を考慮に入れての診断が重要であつて, 同時に治療上にもこれらの生体条件が関連してくる.
    カンジダ症の確定診断は実際には容易ではない. 病巣中に Candida 属が明らかに増殖していることを証明することにある.
    治療上は抗真菌剤による化学療法もあるが, 末期感染を主とするカンジダ症にあつては寧ろ基礎疾患の進展にもとづく宿主の状況に応じて宿主感染防御力を高める予防的治療の方が望ましい.
  • 西木 克侑, 工藤 大悟, 押野 臨
    1982 年 23 巻 3 号 p. 227-239
    発行日: 1982/10/20
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
    αイミダゾール系抗真菌剤, イソコナゾール (ICZ) の作用機作を知るために, Candida albicans, C. robusta, C. norvegensis, Saccharomyces cerevisiae, ラット肝ミトコンドリア, ヒツジ赤血球を用い, その生体膜機能に対する影響を検討した. 静菌濃度, 殺菌濃度のICZで処理することにより, 菌体外液中のpH変化に続いて, K+, アデノシン, アデニン・ヌクレオチド類, α-glucosidase (E. C. 3. 2. 1. 20) の菌体外漏出,および, p-nitrophenyl-α-D-glucopyranoside (PNPG) に対する非透過性の低下などの細胞膜損傷効果が経時的に誘発され, 菌体自己消化過程の進行を示唆する電顕像を呈するにまで至つた. 殺菌濃度のICZにより生菌および単離ミトコンドリアの呼吸は抑制され, 赤血球に対する溶血作用も認められた. ICZは, 対照薬として用いた clotrimazole (CTZ) に比して, 試験したパラメータのいづれについてもより強い作用を示した.
  • 高橋 めぐみ, 牛嶋 彊, 尾崎 良克
    1982 年 23 巻 3 号 p. 240-245
    発行日: 1982/10/20
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
    Pityrosporum pachydermatis を均一に塗沫した寒天平板に Staphylococcus を点状に接種し, 培養した場合, Staphylococcus 24株中, S. simulansなど6株の Staphylococcus の集落周辺の P. pachydermatis の増殖が著しく促進された. 培地に100ng/mlのニコチン酸を加えると, P. pachydermatis は培地全体で良好な増殖を示し, 集落周辺の増殖促進現象は認められなくなつた. 一方, サイアミン, リボフラビンなどのビタミン添加培地では,かかる現象は認められなかつた. Staphylococcus が培地中に産生するニコチン酸量を測定したところ, S. simulansS. sciuri ss sciuri は他に比べて大量の, 即ち100-4,000ng/ml以上の, ニコチン酸を産生していた. したがつて, この P. pachydermatis の増殖を促進する一因子は, ニコチン酸である可能性が示された. 人の皮膚に優位に常在する S. epidermidis も少量であるが, やはりニコチン酸を産生した.
    同時に共存する Pityrosporum orbicularePropionibacterium acnes がニコチン酸を要求するところから, 両者の共生関係が推察された.
  • 蝦名 敬一, 横田 勝司, 坂口 平
    1982 年 23 巻 3 号 p. 246-252
    発行日: 1982/10/20
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
    Aspergillus fumigatus のマウスに対する virulence の検討は, 胞子の単独あるいは Asp-hemolysin と同時に正常マウス尾静脈内に投与することで行つた. また感染経過中のマウス各臓器について, その菌数の変動を観察した. その結果,5×106個および107個の生菌投与量において定型的致死が観察された. Challenge 後の各臓器の菌量の推移は, 肝臓および脾臓において急速に減少して行くが, 107個投与群での腎臓および脳では若干の増殖が見られた. また生菌と Asp-hemolysin の同時投与群では感染の成立および進展を促進する傾向が観察された. なお, 感染経過中の腎臓および脳において, 菌体と菌体周辺に産生された毒素をパーオキシダーゼ結合抗ウサギIgG抗体を用いた間接酵素抗体法により免疫組織学的に検出した.
    一方, A. fumigatus の感染を抗 Asp-hemolysin IgG抗体がIgM抗体より強く抑制する事を認めた. 以上の結果, Asp-hemolysin を生体内で産生する本菌株の virulence において, Asp-hemolysin が関与している可能性が示唆された.
  • 横田 勝司, 蝦名 敬一, 坂口 平
    1982 年 23 巻 3 号 p. 253-260
    発行日: 1982/10/20
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
    Aspergillus fumigatus Fresenius-村松株の菌体抽出物から, 硫安塩析および Sephadex G-50, DEAE-Sephadex, Con A-Sepharose, Sephadex G-100 などのカラムクロマトグラフィーで精製した Asp-hemolysin の均一性を等電点分離法で再検討した. Asp-hemolysin はpI 6.0の major component とpI 5.5の minor component の二つに分画され, その量的比は11:1を示した. このpI 6.0 component は分子量, アミノ酸組成, ゲル内沈降反応, ディスク電気泳動, 溶血・致死活性において Asp-hemolysin のそれと類似しており, pI 6.0 component は毒素の主体をなすものであつた. またpI 5.5 component は溶血と致死の活性を示さなかつたが, 血清学的には Asp-hemolysin と同じ性状を示す物質であつた. Asp-hemolysin からpI 5.5 component を分離, 除去したpI 6.0 component の溶血活性は, 非常に不安定で室温, 数日間で減少した. しかし, pI 5.5 componentをpI 6.0 component に添加した系では溶血活性が安定となり同様にβ-メルカプトエタノールやシスティンなどの試薬を添加しても安定性が示された. 以上の結果から, 等電点分離法で得たpI 6.0 component は, Asp-hemolysin と同一物質であることが示唆され, pI 5.5 component は安定性に関与するものと思われた.
  • 宮崎 利夫, 宿前 利郎, 鈴木 巌, 西島 基弘, 油井 聡, 及川 昭蔵, 佐藤 吉朗
    1982 年 23 巻 3 号 p. 261-263
    発行日: 1982/10/20
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
    The effect of a hot-water extract, called GFE, from the fruiting bodies of cultured Grifola frondosa on the growth of sarcoma 180 tumor cells subcutaneously implanted into ICR mice was examined. Intraperitoneal injection of GFE markedly inhibited the growth of sarcoma 180 tumor cells. When given orally, GFE was also effective although the inhibitory effect was not remarkable.
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