真菌と真菌症
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26 巻, 2 号
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  • 長岡 章平, 進藤 邦彦, 伊藤 章, 福島 孝吉
    1985 年 26 巻 2 号 p. 65-69
    発行日: 1985/08/20
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
    糖尿病, アルコール性肝炎, SLEを基礎疾患に有する57歳男性. 発熱, 胸部右下肺野異常陰影, 頸部リンパ腺腫脹を主訴として入院. 入院当初静脈血より連続して Candida parapsilosis が検出され, 本菌による真菌血症と考え ketoconazole を1日200mg41日間投与し, 臨床的に有効と思われた症例を経験した.
    41日間の長期間投与したが, 本剤投与前後における臨床検査値, 自他覚所見で本剤に起因すると思われる異常値または副作用は認められなかった. 特に本例はアルコール性肝炎の既往があるにもかかわらず, 本剤投与中及び投与後ともGOT, GPTに変動が認められなかったが長期間投与時には配慮が必要であろう.
  • Katsushi Yokota, Shyunya Ichinowatari, Keiichi Ebina, Nobuhiko Wakabay ...
    1985 年 26 巻 2 号 p. 70-73
    発行日: 1985/08/20
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
    The rate of binding of Asp-hemolysin to human erythrocyte ghosts was determined by the single radial immunodiffusion technique. This binding rate was found to be reduced by various chemical reagents, yielding inhibition rates in the order of: glyoxal>TNBS>4-PDS>DTNB>HgCl2. These findings suggest that sulfhydryl and arginine-guanidino group(s) in the toxin may play an important role as a site of binding to the erythrocyte membrane. On the other hand, the hemolytic activity of Asp-hemolysin for chicken erythrocytes was significantly inhibited by arginine, lysine, and ornithine, while it was not affected by the similar compounds citruline, betaine, and histidine. Arginine was shown to be the most effective competitive inhibitor.
    On the basis of these results, the presence of a binding site in the Asp-hemolysin molecule is suggested. Furthermore, we suggest that the inhibition caused by arginine and related compounds is competitive.
  • 新村 陽子
    1985 年 26 巻 2 号 p. 74-80
    発行日: 1985/08/20
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
    白癬患者136例とその患者家塵125試料および非白癬者の家塵57試料から皮膚糸状菌の分離を試み, その分離菌について検討した.
    白癬患者の原因菌は, 5例の重複感染を含め, Trichophyton mentagrophytes 57例 (41.9%), T. rubrum 55例 (40.4%), Microsporum canis 18例 (13.2%), Epidermophyton floccosum 9例 (6.6%), M. gypseum 1例 (0.7%), T. violaceum 1例 (0.7%) であった. 一方, 患者の家塵からの皮膚糸状菌の検出は125試料中81試料 (64.8%) で, そのうち, 患者の原因菌を家塵から分離したのは, 重複感染5試料および家族内感染で菌種が異なった症例の2試料を除いた118試料中48試料 (40.7%) であった. 家塵より分離された皮膚糸状菌と患者の原因菌との関連をみると, T. mentagrophytes は47試料中28例 (59.6%), T. rubrum は50試料中5例 (10.0%), M. canis は12試料中10例 (83.3%), E. floccosum は7試料中3例 (42.9%), M. gypseumT. violaceum は1試料中1例 (100%) であった. これに対し, 非白癬者の家塵からの菌検出は57試料中15試料 (26.3%) で, T. mentagrophytes が12例 (21.1%), M. gypseum が3例 (5.3%) であった. これら皮膚糸状菌の分離された家塵を室温で保存して菌検索を行なった結果, M. gypseum, M. canis, T. mentagrophytes, E. floccosum は, それぞれ, 最高, 16ヵ月, 12ヵ月, 9ヵ月, 9ヵ月後に分離することができた. 以上, 家塵から各皮膚糸状菌が分離されたことと, 自験症例中の家族内同症発生例や, T. violaceum による再発例から, 家塵は, 白癬の感染源として重視すべきであると考えられた.
  • 高瀬 孝子
    1985 年 26 巻 2 号 p. 81-86
    発行日: 1985/08/20
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
    症例は62歳, 農婦. 昭和51年に右中指背を打撲, 同部に病変を生じた. 昭和55年, 当科を初診, 当時スポロトリコーシスの疑いでヨードカリによる治療をしたが軽快せず, 来院しなくなった. 昭和58年, 再診, 痂皮のKOH標本に sclerotic cells を認めた. 治療前の組織像では菌要素として sclerotic cells, それからの菌糸発芽などがみられ, それらの周囲には常に星芒状物の形成がみられた. 培養により黒色菌が得られ, 形態学的所見および40℃における発育状態から, これらを Exophiala dermatitidis と同定した. E. dermatitidis によるクロモミコーシスで組織内に星芒形が認められたのは本例が最初の報告と思われる.
  • 森田 達也, 柳沼 英哉, 小瀬木 幸司, 関谷 孝, 坂野 喜子, 野沢 義則
    1985 年 26 巻 2 号 p. 87-95
    発行日: 1985/08/20
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
    Candida albicans をサブロー・グルコース培地で生育させ, 酵母型 (Y型) の菌体を得, ついで形質膜の分離・精製を行った.
    細胞壁溶解酵素 (ザイモリエース100,000) によってプロトプラストを調製し, これにジギトニンー低張処理を施した後, 分画遠心操作によって形質膜画分を調製した.
    ジギトニン処理を併用した方法で調製された形質膜画分は, 従来の緩衝液のみによる低張処理によって調製された形質膜画分とは異なり, 細胞質成分の混在は殆ど認められず, きわめて高純度の精製形質膜標品を得ることができた. 得られた形質膜の脂質組成と酵素活性について検討したところ, 主なリン脂質としては, ホスファチジルエタノールアミン, ホスファチジルコリン, ホスファチジルセリンがあり, 脂肪酸では, パルミチン酸, パルミトオレイン酸, オレイン酸が主要成分であった. また, キチン合成酵素, バナジウム感受性 Mg2+ATPase の活性は, 全スフェロプラストホモジネートのそれぞれ11倍, 7倍の高い比活性を示した. なお, ポリアクリルアミド・スラブ電気泳動法によるタンパク質パターンを検討し, 数多くの構成タンパク質バンドが観察された.
  • 阿部 章彦, 渋谷 宏行, 岡野 文雄, 舘山 美樹, 木村 主幸, 恩村 雄太
    1985 年 26 巻 2 号 p. 96-101
    発行日: 1985/08/20
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
    血清の鉄結合能および鉄負荷が, 白血病マウスにおけるアスペルギルス症の易感染性にいかなる影響をもたらすかについて検討した.
    その結果, 白血病マウスは全例アスペルギルス症により死亡し, 正常対照群と比較すると, 不飽和鉄結合能は有意に低下しており, 反対に, 血清鉄と鉄飽和率は有意な増加を示していた. さらに, 鉄を負荷した場合には, 血清鉄の著増をきたして, より早期に死亡し, アスペルギルスによる病変も多臓器にわたっていた.
    以上の結果より, 白血病では, 鉄代謝の乱れが, 真菌の増殖に有利に働き, さらに, 白血病治療に不可欠な輸血が, 逆にアスペルギルスの易感染性を亢進することが示唆された.
  • 横田 勝司, 一ノ渡 俊也, 蝦名 敬一
    1985 年 26 巻 2 号 p. 102-108
    発行日: 1985/08/20
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
    Aspergillus fumigatus から精製した Asp-hemolysin のサブユニット解離条件を SDS-PAGE 法によって検討した.
    1%SDS濃度, Britton-Robinson 広域緩衝液のpH 8.0で2時間反応させたものを, 15%ポリアクリルアミドゲルによるスラブゲル電気泳動を行った結果, 3つのサブユニットに解離した. この3つのサブユニットの分子量は, それぞれ15500, 12000, 8000で, そのモル比は2:1:2であった.
    また, SDSで処理した Asp-hemolysin のToyopearl HW-50 カラムクロマトグラフィーでは3つのタンパクピークが分画された. 上記の方法で得られたサブユニットならびにタンパクピークは, いずれもタンパク量として100μgを使用しても溶血活性は陰性であった.
  • 脇元 敦彦, 清 佳浩, 高橋 明子, 滝内 石夫
    1985 年 26 巻 2 号 p. 109-111
    発行日: 1985/08/20
    公開日: 2009/12/18
    ジャーナル フリー
    女子中学生が頚部を中心とする皮疹にて来院. 病巣部より Microsporum canis を分離同定した. 患者は, 動物に触れる機会はなかったが, 学校内の友人に同じような皮疹をもつものが多数いるということで, 中学校内で集団検診を行なった. これらの中の19名に同様皮疹を認め18名より M. canis を分離同定した. 感染経路は登校途中拾ってきた子猫によるものと思われた. 感染は, 猫よりの直接感染と思われるもの11名, 人から人への感染と思われるもの10名であり, そのほか, 家族間感染が2名みられた. 発症までの期間は, 猫よりの直接感染が2~4日間, 友人間の感染でも8例が4日以内に発症していた.
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