超音波医学
Online ISSN : 1881-9311
Print ISSN : 1346-1176
ISSN-L : 1346-1176
33 巻, 6 号
選択された号の論文の9件中1~9を表示しています
総説
  • 羽田 勝征
    2006 年 33 巻 6 号 p. 621-630
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/07/27
    ジャーナル 認証あり
    逆流の定量化は病態の評価と手術適応には不可欠である. 理想的指標は, 1) 簡便である, 2) 信頼性がある, 3) 再現性がよい, ことが条件である. 現在, 定量化にゴールドスタンダードはない. 数値で表しても結局は左室造影との対比である半定量のことが多く, 軽症, 中等度, 重症という三段階分類で表現されているのが現状である. 臨床的に利用すべき時は軽症と中等度逆流との識別, 臨床像と所見が一致しない時, および手術適応の決定である. 以下の指標にはそれぞれ, 利点と限界があり, 全ての指標が一致するわけではない. 十分にわきまえて取捨選択しなければならないことがある. 多断面アプローチから逆流シグナルの到達度を3-4段階で判定量する方法は簡便なためによく利用されている. 僧帽弁や三尖弁では逆流シグナル最大面積をトレースしてその絶対値あるいは心房面積との比で表す方法, 弁下部でvena contracta (縮流帯) と呼ばれる最も細くなる部位を測定する指標もある. ARの定量化にはさらに, 逆流ジェットの幅か断面積を流出路の径や断面積との比で表す指標, 逆流シグナルの傾きを圧半減時間 (pressure half time : PHT) かdecay slopeで求める方法がある. 僧帽弁口と大動脈弁口を流れる血液はそれぞれの流速プロフィールをトレースして求める時間速度積分値 (TVI) と該当する弁輪径からの計算される面積との積で決定される. その差が逆流量で弁口部血流との比が逆流率となる. この方法論は逆流ジェットの方向や大きさには依存しないというメリットがある. 弁口部上流で半球を形成するflow convergenceの半径から逆流量や逆流弁口面積を求める方法PISA (proximal isovelocity surface area) も中等度以上のMRでは利用する価値のある指標である. しかし, 以上の指標は日米の手術適応のガイドラインでは記載されていない. 利用されるのは主に左室径, 駆出分画, および肺高血圧の有無である. 逆流量, 逆流率, 逆流弁口面積, などを絶対値として捉えるには慎重を要する.
  • 立花 克郎, 入江 豊, 小川 皓一
    2006 年 33 巻 6 号 p. 631-639
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/07/27
    ジャーナル 認証あり
    近年, 超音波治療に関する研究が飛躍的に進歩した. 中でも薬物治療と超音波エネルギーを併用する新しい試みがなされ, 薬物の効果促進作用が多く報告されている. 特に注目されているのは超音波の血栓溶解療法や遺伝子治療への応用である. また, 超音波造影剤 (マイクロバブル) を利用することで細胞内へ遺伝子を容易に導入できることも発見され, 様々な分野における超音波とマイクロバブルの組み合わせが期待されている. 治療用超音波の照射によってマイクロバブルの崩壊を時間的, 空間的に制御できるので, バブル内に封入した薬物や遺伝子の局所リリースに応用されようとしている. この研究で動脈硬化, 腫瘍, 血管狭窄部位への遺伝子導入が最も進歩している.
原著
  • 大内田 祐一, 堀井 勝彦, 岡 博子, 横田 重樹, 櫻田 啓子, 嶋 三恵子, 中井 隆志, 川崎 靖子, 山崎 修, 井上 健
    2006 年 33 巻 6 号 p. 641-646
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/07/27
    ジャーナル 認証あり
    当院消化器外科で切除された膵嚢胞性腫瘍32例について, その臨床像, 画像所見, 特に超音波像と病理所見を検討した. 32例の内訳は膵管内乳頭粘液性腫瘍 (IPMN) 26例と粘液性嚢胞腫瘍(MCN) 6例. IPMNは主膵管型8例, 分枝型18例で, 腺癌16例, 境界病変1例, 腺腫9例, 平均年齢65.8歳, 高齢男性の膵頭部に多く見られた. MCNは腺癌3例, 腺腫3例, 平均年齢55.0歳, 全例女性で膵体尾部に見られた. IPMNでは分枝膵管拡張を伴ったものは多房性嚢胞像を呈し, 壁在結節像を認めた20例中15例ならびに主膵管径が6mm以上の13例中12例が腺癌もしくは境界病変であった. MCNでは単房性は1例のみで残りの5例は多房性で共通の被膜像で囲まれた形態を示した. 壁在結節は, 6例中4例に認められ, その内3例が腺癌で, 1例は壊死組織であった. 膵嚢胞性腫瘍では, 壁在結節像の有無が良悪性の鑑別に重要な所見であり, 加えてIPMNでは6mm以上の主膵管拡張は癌の存在を強く示唆する所見であった.
  • 浅井 崇史, 岩瀬 正嗣, 杉本 邦彦, 犬塚 斉, 中野 由紀子, 梶原 克祐, 鈴木 仁, 山田 晶, 松山 裕宇, 菱田 仁
    2006 年 33 巻 6 号 p. 647-653
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/07/27
    ジャーナル 認証あり
    目的 : 健常者における左房容積の妥当な計測法および正常値を再評価すること. 対象および方法 : 健常成人男性100人 (平均25.1±3.6歳) を対象とし, Cube (C) 法, Ellipsoid (E) 法, Biplane Simpson (bp) 法を用いて左房容積を計測して比較するとともに, 従来の報告とも比較した. このうち22例では3D法とも比較した. 結果 : C法16.1±5.0ml, E法26.3±7.2ml, bp法37.9±10.4mlでありbp法は他の2法より有意に大であった. bp法と3D法で計測した22例ではそれぞれ, 37.0±11.0ml, 37.5±11.14mlであり両者に有意差はなかった. 体表面積で補正したbp法の左房容積係数 (LAVI) は22±5ml/m2であり, 最近よく引用されているWangの20±6ml/m2と同様であった. 考察および結語 : 左房容積計測はC法やE法の簡易式では健常人でも過小評価となり従来の報告同様にbp法で計測すべきであり, 3D法とも良好な一致が見られたことから信頼性も高く, 日常的に使用すべきと考えられた.
  • 西浦 哲哉, 渡辺 秀明, 河野 義彦, 伊東 正博, 大畑 一幸, 藤本 俊史, 大黒 学, 八橋 弘, 松岡 陽治郎, 石橋 大海
    2006 年 33 巻 6 号 p. 655-663
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/07/27
    ジャーナル 認証あり
    目的 : 肝USスコアが, 病理学的に診断された進行慢性肝炎 (F3) と初期肝硬変 (F4) との鑑別にどの程度有用であるかを, 陽性感度, 特異度, および尤度比を算出して明らかにする. また, 脾サイズ (超音波による脾係数) および血液・生化学検査項目についても同様の算出を行って結果を対比する. 方法 : 慢性肝疾患患者100症例 (F3:45症例, F4:55症例) を対象とした. 腹部超音波所見の肝辺縁の鈍化度, 肝表面不整度, および肝実質の粗造化度について観察した結果をスコア化した肝USスコアを用い, 適切と思われる閾値を設定してF4陽性感度, 特異度および陽性尤度比を求めた. 脾係数および血液・生化学的検査項目についても同様の算出を行い, 成績を比較した. 結果 : 肝USスコアで閾値を6以上とすると, F4を診断する際の陽性感度は98%, 特異度は91%, 陽性尤度比は11.05であった. この成績は, 脾係数および血液・生化学的検査結果において適切と思われる閾値を設定した場合より良好であった. 結論 : 肝USスコアのF4陽性感度, 特異度, 尤度比は, 脾係数や血液, 生化学検査のそれと比べ, いずれも良好であり, 初期肝硬変 (F4) と慢性肝炎 (F3) の鑑別に肝USスコアは有用であると思われた.
  • 山田 聡, 小室 薫, 谷口 麻里子, 浦西 歩美, 小松 博史, 浅沼 俊彦, 石蔵 文信, 小野塚 久夫, 三神 大世, 筒井 裕之, ...
    2006 年 33 巻 6 号 p. 665-671
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/07/27
    ジャーナル 認証あり
    目的 : 高音圧コントラストエコー法において, 局所の入射音圧が一定である条件下では造影剤濃度とコントラスト強度 (CI) のパワー値の間に良好な線形性があることが分かってきた. しかし, 低音圧コントラストエコー法でも同様の線形性が保たれるか否かは不明である. そこで, 低音圧コントラストエコー法における造影剤濃度とCIとの関係を確認するためにin vitro実験を行った. 方法 : 造影剤はDefinity®とImagent®の2種類を用いた. 0.5, 2, 8, 32, 128μL/Lの5濃度の溶液を用意し, mechanical index (MI) 0.05, 0.1, 0.5のパルスサブトラクションイメージングで, ゼリーを介して溶液を撮像した. 画像上の溶液の水面直下に厚さ3mmの関心領域を置き, CIをdBで計測した. 濃度は0.5μL/Lを基準値として10×log (濃度) でdB表示し, 両側対数グラフ上で直線回帰分析を行った. 結果 : 両造影剤とも, いずれのMIにおいても, 造影剤濃度とCIとはきわめて良好な直線相関を示し, 回帰直線の傾きはCIのパワー値が造影剤濃度に比例する場合の理論値1に近かった. 結語 : 低音圧コントラストエコー法においても, CIのパワー値が造影剤濃度に比例し, CIのdB値は濃度に対して対数関係にある. 低音圧コントラストエコー法で気泡密度の定量計測が可能である.
症例報告
  • 山本 修一, 丸山 紀史, 瀬座 文香, 桝谷 佳生, 露口 利夫, 松谷 正一, 税所 宏光, 真々田 賢司, 野村 文夫, 杉浦 信之
    2006 年 33 巻 6 号 p. 673-679
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/07/27
    ジャーナル 認証あり
    胆道出血は, 経皮経肝的穿刺手技において注意すべき合併症の一つで, 仮性動脈瘤の関与が指摘されている. 我々は, 自然消退への経過を示した経皮的肝生検後の胆道出血例を経験した. 本例の臨床経過において, カラードプラを用い, 仮性動脈瘤に対応すると考えられたカラーモザイク所見の推移を観察したので報告する. 症例は63歳, 女性, 自己免疫性肝硬変. 経皮的肝生検後に, 腹痛, 肝胆道系酵素の上昇と貧血の進行を認めた. カラードプラ法では, 肝右前区域にモザイク信号を呈する小瘤状部を認め, FFT波形解析にて高度の乱流所見を示していた (カラーモザイク). 肝生検施行部との対応から, 穿刺手技後の肝仮性動脈瘤と, それに伴った胆道出血が強く疑われた. 緊急入院後, 内視鏡的逆行性胆道造影検査にて胆道出血が確認されたため, 経鼻的胆道ドレナージを留置した. 経動脈的塞栓術の適応を考慮しつつ保存的に経過を見ていたが, その後は胆道出血を認めなかった. 肝生検2週後の超音波では, カラーモザイクは微弱化し, 乱流所見は軽減していた. さらに, 9日後の超音波では同所見は消失し, その後, 再発を見ていない. カラードプラ法におけるカラーモザイク所見は, 本症の診断, 経過観察に有用と考えられた.
技術報告
  • 土至田 勉, 上田 宏昭, 茅野 博行, 川又 朋章, 平野 雄一, 江 修博, 斎木 裕香, 浅野 拓, 小林 洋一, 片桐 敬
    2006 年 33 巻 6 号 p. 681-688
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/07/27
    ジャーナル 認証あり
    背景 : 心臓電気生理検査のelectro-anatomical mapping system (CARTO system®) の開発により心室性期外収縮の起源に対する同定が容易となった. 心臓超音波検査では, 組織ドプラ法を応用したtissue tracking法が開発され, 収縮の伝播過程を画像定量化することが可能となった. 目的 : Electro-anatomical mapping systemのactivation mapから同定された心室性期外収縮の起源との比較からtissue tracking法の臨床的有用性を検討すること. 方法 : 対象は, 薬剤抵抗性を呈する心室性期外収縮を高頻度に認め, 低心機能を呈してカテーテル心筋焼灼術を施行する目的で入院した2症例. Tissue tracking法を用いて心室性期外収縮の起源を同定後, electro-anatomical mapping systemのactivation mapを施行. Tissue tracking法で同定した心室性期外収縮の起源部位と比較検討した. 結果 : 症例1,2ともtissue tracking法で左室流出路に心室性期外収縮の起源を認めた. Electro-anatomical mapping systemでは, 症例1は右室流出路附近に, 症例2では左室流出路附近に起源を認め, カテーテル心筋焼灼術を施行. 心室性期外収縮の消失を認めなかったが, 大動脈弁左冠尖に対するカテーテル心筋焼灼術により心室性期外収縮の消失を認めたため起源と判断, tissue tracking法で同定した部位と一致すると考えられた. 結語 : Tissue tracking法は心室性期外収縮の起源同定に対し, 簡便かつ非侵襲的で有用な評価方法であることが示唆された.
今月の超音波像
feedback
Top