超音波による骨の評価は踵を測定部位とすることが多く, その指標の一つとして音速 (SOS) が用いられる. 物質の音速は一般に温度の影響を受けるが, 人体の場合は温度は安定していると認識されていた. 踵は末端部であり冬季では体温より温度が低くなり音速に影響する. この現象は超音波骨評価装置が普及するにつれて知られるようになったが, これまでの研究では踵の音速と温度の相関を見るか, 脂肪などの一部の組成の温度特性のみの測定であり, 系統立てて関連付けた研究はなかった. 踵を構成する各生体組織である皮質骨, 骨髄, 海綿骨, 表皮, 筋肉, 脂肪および皮下脂肪の温度特性をウシから摘出したサンプルを用いて測定した. その結果, 皮質骨, 骨髄, 脂肪の温度係数が大きいのに対し, 筋肉や表皮の温度係数は小さかった. 皮質骨と骨髄はほぼ同じ温度係数を示したが, 海綿骨の温度係数はその半分程度であった. 各生体組織の厚さと温度係数を用いて踵の音速を計算し, その温度特性を推定した. 21名の女性の踵の音速の温度係数を測定した結果は推定結果と良い一致を得た.
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