超音波医学
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33 巻, 2 号
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総説
  • 菅原 寧彦, 幕内 雅敏
    2006 年 33 巻 2 号 p. 183-193
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/07/27
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    1990年に始まった生体肝移植は年々症例が増加傾向にあり, 日常医療として定着した感がある. 肝移植医療において, 超音波は第一選択として使用すべき診断・治療ツールである. ドナー肝切除では術中に肝静脈の走行を確認する必要がある. 移植後の肝動脈, 門脈血栓症, 胆管合併症は肝壊死, 肝膿瘍, 移植肝不全につながる重篤な合併症である. グラフト周囲の腹水がドレナージされず, 貯留していることもある. このような合併症を早期に診断するには, 超音波検査が有効で, 早期の治療・グラフト生着率の上昇につながる. 本稿で生体肝移植ドナー・レシピエントに行っている超音波検査を紹介する.
  • 田中 善章, 生田 明子
    2006 年 33 巻 2 号 p. 195-209
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/07/27
    ジャーナル 認証あり
    婦人科における超音波診断の対象となるのは, 主として子宮・卵巣腫瘍診断であるが, 特にその良・悪性の鑑別診断が重要とされている. また解像能や血流診断技術の向上により他の各種疾患の診断も可能となっている. 子宮においては筋腫, 腺筋症, 体癌以外に, sonohysterographyの活用により内膜ポリープなど子宮腔内病変の診断も精度が向上している. その他IUDやcirsoid aneurysmなどの診断も可能である. 卵巣においては腫瘍診断が中心となっている. 各良性腫瘍の診断および悪性群における上皮性non-mucinous type, mucinous type, 転移性癌の鑑別診断が可能である. 他の骨盤内病変としては, 炎症性疾患として卵管留膿腫, 腹膜炎や異物の診断, また癌性腹水や腹膜偽粘液腫などの腹水および類似疾患の診断に応用されている.
原著
  • 新井 竜雄, 田中 昭太郎, 大谷 隆彦
    2006 年 33 巻 2 号 p. 211-220
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/07/27
    ジャーナル 認証あり
    超音波による骨の評価は踵を測定部位とすることが多く, その指標の一つとして音速 (SOS) が用いられる. 物質の音速は一般に温度の影響を受けるが, 人体の場合は温度は安定していると認識されていた. 踵は末端部であり冬季では体温より温度が低くなり音速に影響する. この現象は超音波骨評価装置が普及するにつれて知られるようになったが, これまでの研究では踵の音速と温度の相関を見るか, 脂肪などの一部の組成の温度特性のみの測定であり, 系統立てて関連付けた研究はなかった. 踵を構成する各生体組織である皮質骨, 骨髄, 海綿骨, 表皮, 筋肉, 脂肪および皮下脂肪の温度特性をウシから摘出したサンプルを用いて測定した. その結果, 皮質骨, 骨髄, 脂肪の温度係数が大きいのに対し, 筋肉や表皮の温度係数は小さかった. 皮質骨と骨髄はほぼ同じ温度係数を示したが, 海綿骨の温度係数はその半分程度であった. 各生体組織の厚さと温度係数を用いて踵の音速を計算し, その温度特性を推定した. 21名の女性の踵の音速の温度係数を測定した結果は推定結果と良い一致を得た.
症例報告
  • 窪田 忠夫, 永井 基樹, 大森 敏弘, 山本 穣司, 玉城 聡, 佐々木 健, 比留間 孝弘
    2006 年 33 巻 2 号 p. 221-227
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/07/27
    ジャーナル 認証あり
    アニサキス虫体が腹腔内に肉芽腫を形成した興味深い症例を経験したので報告する. 症例は24歳, 女性. 右下腹部痛を主訴に来院. 右下腹部に圧痛と反跳痛を認め, 腹部CTにて上行結腸の腹側に原因不明の腫瘤性病変を認めた. 超音波検査では急性虫垂炎の可能性が示唆されたが, 他疾患も否定できないため腹腔鏡下の手術を施行することとなった. 術中所見では横行結腸に3cm大の炎症性の肉芽腫と思われる病変の付着を認め, 手術はこの病変部の切除と虫垂切除で終了した. 病変部は糸状の物質を含んでおり後の病理検査にてこれがアニサキス虫体であることが判明した. 以上より, アニサキス虫体が消化管を穿孔し肉芽腫を形成した病態であると考えられた. 本症例では術前診断ができなかったが, 病理結果をもとに超音波所見を見直してみると, 断層画像は病変部の割面像の特徴をよく捉えていたことが判明した. アニサキス性の腹腔内肉芽腫は稀な病態であるが, 今後類似の症例に対しては超音波をもとにした術前診断が可能と思われた. またこういった術前診断に不確定要素がある場合腹腔鏡手術は有効な手段であった.
  • 亀田 徹, 川井 夫規子, 加瀬 建一, 篠崎 浩治, 玉川 英史, 寺内 寿彰, 高橋 善明, 佐藤 政広, 藤原 美沙, 植松 繁人
    2006 年 33 巻 2 号 p. 229-237
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/07/27
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    虫垂粘液嚢胞は比較的稀な疾患で, 偶然無症状で発見されたり, 右下腹部痛や腫瘤触知を契機に診断されるといわれている. 特徴的な超音波像を呈した虫垂粘液嚢胞の3例を経験したので報告する. 症例1は19歳, 男性, 右下腹部腫瘤を主訴に受診. 超音波検査で右傍結腸溝に9.1×3.7cmの腫瘤を認め, 壁には石灰化があり, 内部は低エコーでたまねぎの断面のような層状エコーを認めた. 症例2は70歳, 女性, 右下腹部違和感を主訴に受診. 右下腹部に圧痛のない腫瘤を触知した. 超音波検査で回盲部より内側にかけて9.6×3.1cm大の嚢胞性病変を認め, 内部には症例1と同様にたまねぎの断面のような層状構造を認めた. 症例3は59歳, 女性, 右下腹部痛を主訴に受診. 右下腹部に圧痛を伴う腫瘤を触知した. 超音波検査でcup-and-ball状の嚢胞性腫瘤を伴うmultiple concentric ring signを認め, 虫垂の嚢胞性病変を巻き込んだ腸重積が示唆された. 注腸整復後の超音波検査では, 盲腸内腔に2.5×2.0cmの類円形腫瘤を認め, 腫瘤と連続した虫垂は径1.1cmと拡張していた. 超音波検査は虫垂粘液嚢胞の診断に有用である.
今月の超音波像
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