超音波医学
Online ISSN : 1881-9311
Print ISSN : 1346-1176
ISSN-L : 1346-1176
33 巻, 5 号
選択された号の論文の5件中1~5を表示しています
総説
  • 本田 伸行
    2006 年 33 巻 5 号 p. 541-552
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/07/27
    ジャーナル 認証あり
    急性腹症をきたす疾患は消化器だけではなく, 血管, 泌尿器および産婦人科領域など多岐にわたるため, 各領域の幅広い知識が要求される. しかも, 痛みの種類, 臨床経過, 理学的所見などを総合して可能性のある病態を予測し, 短時間で確実に異常所見を拾い上げなければならない. 急性腹症をきたす疾患のほとんどが超音波検査 (US) で何らかの異常所見を示すが, 異常所見と診断名を対応させることのできないことも多く, 異常所見をあるがままに記録し, 報告することが重要である. 本総説では急性腹症のUSに際して最も強調したい以下の事項について, 代表的症例を呈示して解説した. 1) 診断名を付けることが目的ではない (異常所見を確実に拾い上げる), 2) 検査目的を把握し, 被検者をよく観察する, 3) 痛い部位は何処ですか? (腹痛直下をじっと観察する), 4) USの利点は繰り返し施行できること, 5) まず腹水の有無を確認する―FASTの応用―, 6) 周囲との位置関係, 連続性の確認, 7) 腸液貯留と腸管壁肥厚を見落とさない, 8) 腸閉塞はUSで確認する, 9) 絞扼性イレウスは臨床症状とUSが重要, 10) 閉鎖孔ヘルニアは画像診断が決め手, 11) 産婦人科救急疾患の大半は急性腹症である.
  • 真口 宏介, 小山内 学, 高橋 邦幸, 潟沼 朗生, 中原 和之
    2006 年 33 巻 5 号 p. 553-563
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/07/27
    ジャーナル 認証あり
    内視鏡下超音波検査 (endoscopic ultrasonography : EUS) の利点は, 分解能が高く局所観察能に優れることであり, 各種画像診断の発展が見られる現状においても胆・膵領域では最も精度の高い診断法の一つである. 特に, 小病変の診断に有用性が高く, 膵・胆道癌の早期発見に期待が持たれている. しかしながら, 走査手技が難しく術者の育成が課題となっていた. その解決に向けラジアル走査式EUSによる膵・胆道領域の標準的描出法が作成され, 日本から世界に発信された. 一方, 欧米に遅れはとったものの超音波内視鏡下穿刺吸引術が本邦でも普及し始めている. このことにより画像診断に加え細胞診・組織診が可能となった他, 本手技を応用した治療にも発展してきている. EUSは, 内視鏡を挿入するという被検者への負担はあるものの, 得られる情報量は多く, 広く普及することが望まれる.
  • 沼田 功
    2006 年 33 巻 5 号 p. 565-574
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/07/27
    ジャーナル 認証あり
    超音波造影剤は二酸化炭素を用いた自家製造影剤を動注して使用していたが, ガラクトースを用いた造影剤 (Levovist®) が市販されるとともに静注による造影が主流となり, 肝臓を始め様々な分野で利用されている. 泌尿器科領域でも腎臓, 膀胱, 前立腺, と各臓器に利用され有用性が報告されている. 腎臓では細い正常血管を造影して腎機能の評価に利用し, 太い血管病変の診断にも利用されている. さらに腫瘍性病変の広がり, 良性・悪性の鑑別診断に応用され, 血液透析患者への利用のしやすさと有用性も報告されている. 腎盂尿管腫瘍ではカラードプラのみでは血流状態を描出できなかったが, 造影剤を使用することで血流分布や腫瘍自体の造影も可能になっている. 膀胱癌では腫瘍の存在診断とともに腫瘍を造影することで壁への浸潤度判定にも利用されている. また, 超音波造影剤による膀胱尿管逆流症の診断はヨード造影剤を用いた排尿時膀胱尿道造影での判定と同等の感度, 特異度が見られる. 前立腺癌の造影超音波診断では腫瘍部位の明瞭化が見られ, 感度の上昇が見られる. しかし, 早期前立腺癌には数mmの小さな腫瘍部位も多く, 特異度の上昇は得られていない. 今後, 造影剤を有効に使用することで生検の部位を少なくして陽性率を高めることが期待される.
原著
  • 小林 さゆき, 林 輝美, 秋谷 かおり, 市原 美知子, 薬袋 路子, 酒井 良彦, 高柳 寛
    2006 年 33 巻 5 号 p. 575-581
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/07/27
    ジャーナル 認証あり
    目的 : 組織ドプラ法によるtissue tracking法は心筋の時間毎の移動距離をカラー表示する方法である. この方法を利用し, ペースメーカリードの刺激部位を検討した. 方法 : 対象は恒久式ペースメーカ植込み術を施行された30例. 結果 : 2Dエコー図四腔像で最も早く移動を開始する収縮最早期の心筋は赤色で表示され, この部位をペースメーカリードの電気刺激部位と同定できた. 検査時ペースメーカ調律であった20例中7例は赤色部位が心室中隔に, 11例は右室心尖部に見られた. さらに, 赤色部位に複数の関心領域を設定し, 時間距離曲線で解析した結果, ペースメーカリードのanchor部位を同定できた. 結論 : 組織ドプラ法におけるtissue tracking法により, ペースメーカリードの電気刺激部位を同定できた.
症例報告
  • 輿石 太郎, 馬場 一憲, 木下 二宣, 斎藤 麻紀, 大久保 貴司, 斉藤 正博, 林 直樹, 竹田 省
    2006 年 33 巻 5 号 p. 583-588
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/07/27
    ジャーナル 認証あり
    帝王切開創部妊娠は子宮破裂, 大量出血の原因となり, 早期の診断, 治療が重要であるが, 未だ治療法は確立されていない. 当科では妊娠初期に診断し, メソトレキセート (MTX) 投与や子宮動脈塞栓術 (uterine artery embolism : UAE) を併用して子宮内容除去術 (dilatation and curettage : D&C) で妊卵除去を行う方法を用い, 良い治療成績を上げている. しかし, 今回, D&Cで治療を完結できずに開腹手術を行った1症例を経験した. 症例は31歳2経妊1経産. 前置胎盤による帝王切開術の既往がある. 前医で妊娠8週稽留流産の診断で流産処置を試みるも出血多量のため処置中止となり, 外来フォローとなっていた. 約6週間後, 出血多量によるプレショック状態で当科に緊急入院となり, 帝王切開創部妊娠と診断された. 創部内は凝血塊と思われる腫瘤で占められ, そこに流入する動脈性の血流も確認された. MTXの経静脈投与とUAEを施行した後にD&Cを施行したが, 子宮筋層の菲薄化のために治療を完結できなかった. その後, 腫瘤は縮小し動脈性の血流も消失したが, 出血が続くために開腹手術による腫瘤摘出術を行った. 術後は経過順調であった. 帝王切開創部妊娠における管理, 治療指針について, 当院での治療経験に文献的考察を加え再検討するとともに, この症例における超音波ドプラ法の所見について検討した.
feedback
Top