超音波医学
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34 巻, 4 号
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総説
  • 左合 治彦, 林 聡, 湊川 靖之, 北川 道弘, 名取 道也
    2007 年 34 巻 4 号 p. 427-437
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/08/02
    ジャーナル 認証あり
    胎児超音波標準検査は,出生前や出生直後の管理・治療を必要とする胎児疾患を見出すことを目的とし,専門検査技師やトレーニングを受けた医師が一定の時間をかけて行う.検査時期は妊娠中後期の妊娠20週と30週の2回で,検査手順は胎児計測,羊水量,胎児形態観察,胎盤・臍帯の順で行う.胎児形態の見方は,頭部(脳室横断面,小脳横断面で大脳,側脳室,小脳)から胸部(四腔断面,three vessel断面,心室流出路で心臓,肺),腹部(胃,腎臓,膀胱)と胎児横断面で観察し,最後に胎児矢状断面で脊椎を観察する.これら診断の要点となる標準14画像を描出して観察する.代表的な胎児疾患として,頭部疾患では脳室拡大,水頭症,全前脳胞症,胸部疾患では先天性横隔膜ヘルニア,先天性肺嚢胞性腺腫様奇形,肺分画症,胸水,心疾患では左心低形成,心房心室中隔欠損,Ebstein奇形,内臓錯位症候群(無脾症候群,多脾症候群),腹壁疾患では腹壁破裂,臍帯ヘルニア,消化器疾患では食道閉鎖,十二指腸閉鎖,小腸閉鎖,腎疾患では水腎症,多嚢胞性異形成腎,多発性嚢胞腎,脊椎疾患では脊髄髄膜瘤,仙尾骨奇形腫を取り上げた.これらの代表的胎児疾患の画像診断の要点について正常像と比較して概説した.
原著
  • 吉新 寛樹, 長谷川 英之, 金井 浩, 田中 元直
    2007 年 34 巻 4 号 p. 439-448
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/08/02
    ジャーナル 認証あり
    はじめに:心筋ストレインやストレインレートのイメージングは局所心筋機能の評価に有用な技術であることが示されてきたが,心臓の収縮から弛緩への移行期においてはその機序について不明な点が多い.本論文では時間分解能を向上させた心筋ストレインレート計測を行い,その機序について検討した結果を述べる.方法:22歳と23歳男性健常者2名の左室長軸像において,通常のBモード像よりも超音波ビームの走査線密度を減らして走査しRFデータを取得した.心電図R波前後と心音図のII音前後のタイミングにおいて,走査したビーム上に設定した心臓壁内の多点に位相差トラッキング法を適用し,心筋ストレインレートの空間分布を高時間分解能で計測した.結果:心音図のII音周辺の収縮から弛緩に移行する過程において,心室中隔壁では右心室側が左心室側に対して約15‐30ms,左心室後壁では心外膜側が心内膜側に対して約100‐130ms,同一ビーム内で先行していた.また,ストレインレートの空間分布から,心尖側と心基部側では収縮と弛緩のタイミングが異なり,特に左心室後壁において心尖側から心基部側に移行する様子が見られた.結語:時間分解能を向上させた心筋ストレインレート計測により,収縮から弛緩への移行過程の機序解明の可能性を示した.
  • 岸田 由香里, 田中 伸明, 江角 智子, 波多野 靖幸, 赤川 英三, 橋本 亮, 國近 英樹, 村田 和也, 日野田 裕治, 松崎 益徳
    2007 年 34 巻 4 号 p. 449-453
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/08/02
    ジャーナル 認証あり
    目的:近年,僧帽弁血流波形(TMF)は左室拡張機能評価の第一歩としてルーチンに記録される.健常者のTMFは,若年者ではE>Aだが加齢とともにE/Aは小さくなり,やがてE<Aとなることが知られている.また,高血圧患者では左室コンプライアンスの低下により左室充満における心房収縮の寄与が高まり,より若い年齢でE/Aが小さくなると考えられるが,これに関する国内のデータは少ない.そこで高血圧患者のTMFにおけるE/Aの加齢による変化を明らかにしたいと考えた.対象と方法:当院の心エコー検査報告書のデータベースを検索し,高血圧患者(n=553)および対照群(n=394)を対象とした.各群で年齢による区分けをし,E/Aを群間また年齢別に比較検討した.結果:対照群では加齢とともに緩やかなE/Aの低下を認め,60歳代でE/Aの平均値が1以下となった.一方,高血圧患者ではE/Aの低下が早期に認められ,50歳代でE/Aの平均値が1以下となった.結論:高血圧患者では対照群に比べてE/Aの平均値としては約10歳早くE/Aの逆転が見られた.
  • 横山 裕, 許斐 一郎, 宮嶋 哲匡, 田丸 俊三, 田中 正利
    2007 年 34 巻 4 号 p. 455-459
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/08/02
    ジャーナル 認証あり
    目的:副腎の腫瘤性病変,特に偶発腫瘤の診断における超音波穿刺術の役割について検討した.対象と方法:対象は1994年9月から2002年3月末までに福岡大学病院泌尿器科を受診した副腎偶発腫瘤のうち経皮的超音波穿刺術を施行した8例で,患者の背景,腫瘤の形状,患側,内分泌活性の有無,病理組織学的検査を検討した.結果:8例中7例で目標とする病変部の穿刺が可能であり,2例が副腎嚢胞,2例が副腎皮質腺腫,3例が転移性副腎腫瘍(前立腺癌1例,肺癌1例,腎細胞癌1例)であった.両側の副腎腫瘤を認めた1例は安全な穿刺が困難で組織採取が不可能であった.全例で術後の出血や疼痛は認められず,重篤な合併症は無かった.結語:副腎の腫瘍性病変に対する超音波穿刺術にカラードプラ法を応用することにより,周囲臓器や血管の位置を明確にした上で,穿刺ラインを設定することが可能となり,出血や気胸などの合併症も無く安全に施行することが出来た.さらにカラードプラ法を含む超音波断層法は,非侵襲的にリアルタイムに観察可能なことから,穿刺による出血などの合併症の発見や経過観察にも有用である.また,他臓器悪性腫瘍からの副腎転移が疑われる場合に,経皮的な生検・吸引による病理組織学的診断で,不必要な外科手術を回避することも可能で,その有用性は高く評価出来る.
症例報告
  • 中通 由美, 岡 博子, 西澤 輝彦, 横田 重樹, 大内田 祐一, 嶋 三恵子, 白野 倫徳, 後藤 哲志, 井上 健
    2007 年 34 巻 4 号 p. 461-465
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/08/02
    ジャーナル 認証あり
    症例は30代男性.3ヵ月以上1日10‐15行の水様下痢が持続し,当院感染症センターに入院.血液検査でHIV抗体,サイトメガロウイルス(CMV)アンチゲネミアが陽性であった.超音波検査で全大腸にびまん性に壁肥厚を認め,層構造は不明瞭となっていた.大腸内視鏡検査で浅い潰瘍を認め,潰瘍部からの生検の結果,CMV腸炎と診断された.今までに,炎症性腸疾患や感染性腸炎の超音波像について様々な報告がされてきているが,今回我々はサイトメガロウイルス腸炎において特徴的な超音波像を観察し得たので報告する.
今月の超音波像
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