超音波医学
Online ISSN : 1881-9311
Print ISSN : 1346-1176
ISSN-L : 1346-1176
34 巻, 6 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
原著
  • 浦西 歩美, 増田 佳純, 五十嵐 絵里奈, 澤田 智美, 浅沼 俊彦, 石蔵 文信, 別府 慎太郎
    2007 年 34 巻 6 号 p. 571-577
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/11/20
    ジャーナル 認証あり
    背景・目的:心筋血液量は心筋壊死の拡がり程度に応じて減ずる.しかし,心筋梗塞例で冠動脈狭窄がない場合,心筋壊死の程度に影響されることなく,冠微小循環血流速度は一定であるのかどうかはよく分かっていない.この関係を明らかにするために,マイクロスフェアを段階的に冠動脈注入し,均一な虚血巣を作成し,心筋コントラストエコー(MCE)法を用いて,心筋血液量,微小循環血流速度を検討した.方法:麻酔開胸犬8匹を用い,冠血流量をモニターしつつ,マイクロスフェア(平均径100μm)を左回旋枝より段階的に注入し,4段階の斑状心筋虚血モデルを作成した.各段階で安静時とATP負荷時にリアルタイムMCE法を施行した.関心領域を虚血領域と,対側の正常領域に設定し,輝度回復曲線y=A(1-e-βt)から,心筋血液量(A値)と心筋血流速度(β値)を算出した.結果:虚血領域では冠血流量は第4段階で初めて低下したが(コントロール,第1‐4段階でそれぞれ,20.8,21.8,19.0,13.4,9.2ml/min),ATP負荷時の冠血流量は漸次低下し(47.6,39.0,31.0,20.4,11.6ml/min),冠血流予備能も低下した(2.28,1.83,1.65,1.53,1.23).A値は漸次低下した(前値111±8.7から104±9.5,90±11.9,74±19.2,56±31.9).β値は当初は変動せず,実験後半で低下した(前値0.71±0.22から,0.89±0.27,0.65±0.25,0.62±0.33,0.29±0.18).ATP負荷時のβ値は漸次低下し(前値2.07±1.34から,1.56±0.92,1.18±0.78,0.87±0.47,0.34±0.31),β予備能は漸次低下した.正常領域ではA値,β値とも変動はなかった.結語:斑状の心筋虚血モデルでは,冠動脈狭窄がなくとも,冠血流予備能が低下する.
  • 犬塚 斉, 岩瀬 正嗣, 安野 泰史, 中野 由紀子, 加藤 美穂, 杉本 邦彦, 梶原 克祐, 山田 晶, 松山 裕宇, 菱田 仁
    2007 年 34 巻 6 号 p. 579-586
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/11/20
    ジャーナル 認証あり
    三次元心エコー図法(3DE)との比較による肉眼的左室駆出率(EF)の有用性について検討した.洞調律の97例(平均62.9±13.9歳)を対象とし,肉眼的EF,biplane Simpson法のEF(bp-EF),3DE法のEF(3DE-EF)を計測した。また,そのうち21例でhelical CTによるEFの計測を行った(HCT-EF).HCT-EFと3DE-EFはきわめて良好な正相関が認められた(r=0.92,95% CI=7.7±14.9%).左室壁運動異常のある症例では3DE-EFを基準にした場合、肉眼的EFはbp-EFより良好であった(r=0.88,95% CI=-2.0±13.5% vs.r=0.83,95% CI=0.1±14.2%).以上の結果から,特に壁運動異常を認めた症例については二次元的な評価法(biplane Simpson法)よりも三次元的な評価法(3DE,肉眼的EF)がより適切であると考えられた.現時点ではルーチン検査として3DE法を用いるのは実際的ではなく,肉眼的EFは機器の特別な操作をすることなく簡便且つ迅速に行える三次元的な方法であり有用性が高い.しかしながら,肉眼的EFの評価にはある程度の経験を有し,注意して用いる必要がある.
症例報告
  • 佐藤 早見, 渡邉 百合, 吉武 靖展, 福島 敬子, 植田 和子, 尾田 敏恵, 柏木 稔, 眞柴 順子, 大谷 規彰, 林 靖生
    2007 年 34 巻 6 号 p. 587-591
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/11/20
    ジャーナル 認証あり
    左室心筋緻密化障害は,心腔内に著明に突出した肉柱と,肉柱間の深い陥凹を特徴とする,稀な先天性心疾患である.症状は,無症状から心不全や不整脈,塞栓症など多岐にわたるが,症状出現により診断されることが多い.我々は無症候性の左室心筋緻密化障害で,4年間経過観察した症例を報告する.症例は31歳女性で,肉眼的血尿の精査のために腎生検目的で入院となった.術前の心エコー図では,左心室下壁の菲薄化と壁運動低下,さらには下後壁に不規則に突出する肉柱構造とカラードプラ法で肉柱間隙内に入り込む血流像を認めた.また,MRI検査では心エコー図と同様に,下壁から心尖部にかけての肉柱構造とそれに伴う深い間隙が観察された.よって,心筋緻密化障害と考えられた.その後4年間の経過観察を行っているが,無症状であり,不整脈や塞栓症などの合併症は認められていない.左室心筋緻密化障害は,小児科領域での稀な心筋疾患とされてきたが,成人でも比較的多いと報告されるようになった.診断には心エコーとMRIが有用と考えられる.その予後は必ずしも楽観出来るものではないため,早期診断が重要である.
今月の超音波像
feedback
Top