超音波医学
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35 巻, 1 号
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総説
  • 尾辻 豊
    2008 年 35 巻 1 号 p. 03-11
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/01/16
    ジャーナル 認証あり
    低血圧・ショックは,左室駆出が減少した場合と左室駆出が保たれた場合に分類出来る.左室駆出の減少は,左室機能低下や大動脈弁および僧帽弁の機能異常によって生じ,基礎疾患として拡張型心筋症,虚血性心筋症,左主幹部病変,急性心筋炎などが挙げられる.急性および亜急性の大動脈弁逆流によっても低血圧・ショックとなり,心エコー検査により感染性心内膜炎や高安動脈炎の診断が可能となる.左室流出路閉塞も本法により診断可能である.左室前負荷が足りないための低血圧・ショックは,タンポナーデや右室駆出不全(肺塞栓症,三尖弁逆流,右室梗塞,緊張性気胸,hypovolemiaなど)により出現し,左室腔は小さく,左室壁運動は正常もしくは亢進していることが特徴である.左室駆出が正常なのに低血圧・ショックとなることもあり,これには敗血症・アナフィラキシー・神経調節性疾患が含まれる.偽低血圧は,大動脈解離・高安動脈炎・閉塞性動脈硬化症・大動脈縮窄症などにより出現する.胸骨右縁からのアプローチにより上行大動脈の解離を観察しやすくなる.このように基本的な心エコー検査により低血圧・ショックの迅速な診断が可能である.
原著
  • 石蔵 文信, 浅沼 俊彦, 山本 一博, 大森 浩二, 高野 真澄, 別府 慎太郎
    2008 年 35 巻 1 号 p. 13-18
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/01/16
    ジャーナル 認証あり
    背景および目的:拡張能指標である僧帽弁左室流入波形E/Aは有用であるが,心拍数が高い小動物ではE波とA波が重畳するためE/A計測が困難である.今回の研究の目的は麻酔薬による心拍数の低下時におけるE,A波の分離,左室収縮機能の変化を検討することである.方法:雄性SDラットを対象とし,GE社製ViVid7,10s型プローブ(11.5MHz,234FPS)を用いた.ペントバルビタール麻酔後および,その後心拍数低下作用のある麻酔薬キシラジン1回当たり0.005ml/100gを,複数回腹腔投与して心エコー測定を行った.左室流入波形はE波とA波の分離の度合いに応じて完全重複群,重複群,分離群,完全分離群の4群に分類した.収縮能指標には左室面積変化率(FAC)と1回拍出量(SV)を用いた.結果:ペントバルビタール麻酔のみでは完全分離,分離群は20%であったが,キシラジンで心拍数が下がるとE波とA波が分離し,350/分以下では78%が計測可能であり,300/分以下では全て計測可能であった.心拍数の低下前後で,E波高,A波高,E/Aに著明な変化は認めなかったが,FACは軽度低下(p<0.05)し,SVは軽度増加した.結語:通常のペントバルビタール麻酔下では心拍数の個体差が大きく,80%でE/A計測が出来ない.心拍数を350/分から250/分まで低下させると78%で計測可能であったが,収縮能指標に若干の変化があった.収縮能指標変化を無視出来ないような微細な拡張能を検討する場合には,各例で心拍数を極力揃えるのが望ましい.
症例報告
  • 泉 学, 藤原 理佐子, 小野 幸彦, 熊谷富美子 , 佐藤 匡也, 庄司 亮, 熊谷 肇, 大阪 孝子, 菊池 藍, 鬼平 聡
    2008 年 35 巻 1 号 p. 19-24
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/01/16
    ジャーナル 認証あり
    心臓超音波検査法(以下心エコー)において,心腔内に血栓や腫瘍を認める場合がある.その際,塞栓症や外科的な治療を要する必要があり,特に左心房においては,血栓や粘液腫などが心原性脳塞栓症などの原因となるため,素早く的確な判断が必要である.しかし,右心系に関する血栓や腫瘍の報告は少ない.我々が経験した症例は,左片麻痺で発症した脳梗塞であるが,脳塞栓症が疑われたため,発症12病日に原因精査として行った心エコーで,右室流出路に約3.5cm長の可動性に富んだhyperechoic massを認めた.肺血流シンチで右下葉に一部欠損が認められ,併せてMRIでは茎のような付着点を流出路に持つmassが確認出来たため,腫瘍性の病変および血栓の両方の可能性を考えながら,外科的摘出術を考慮して抗凝固療法を行っていたところ,massの消失を認めた.下肢静脈エコーでは,左ヒラメ筋内静脈の拡張を認めた.経過からヒラメ静脈血栓がリハビリとともに右心室内に達し,付着していたと考えられた.消失してからの心エコーでは,右心系の負荷所見を認めず,さらに流出路に留まった器質的な原因を指摘出来なかった.右心系の中でも稀とされる右室流出路に血栓を認め,診断に苦慮したが,良好な転記を得たので報告する.
  • 青木 信裕, 岩崎 信広, 今井 幸弘, 岡部 純弘, 千葉 勉
    2008 年 35 巻 1 号 p. 25-31
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/01/16
    ジャーナル 認証あり
    症例は20歳,女性.5年前に本態性血小板血症で内服治療歴がある.腹部膨満感と黄疸を主訴に2006年2月精査を施行し,肝生検にてうっ血性肝障害を認めるも,その原因は不明であった.2006年7月には腹部造影CTで肝静脈の完全閉塞が認められ,カラードプラ法で門脈右枝の逆流と傍臍静脈の再開通が観察されたことから,肝静脈閉塞型Budd-Chiari症候群(BCS)と診断された.以後の経過観察中の超音波検査で肝に2cm以下の辺縁低エコー帯を有し,内部不均一な充実性腫瘤が多数観察されるようになった.Sonazoid®を用いた造影超音波検査が行われたが,早期相で腫瘤中心部まで動脈が流入し,その後車軸状に広がる血管構築像が描出された.後期相では,周囲肝実質より腫瘤の方が高エコーに染影された.末期肝硬変であったため,患者・家族の希望もあり2007年3月生体肝移植が施行された.切除肝の病理組織学的検索では,肝実質は肝静脈閉塞に起因するうっ血性肝硬変の像であり,腫瘤は中心瘢痕と流入血管を有するfocal nodular hyperplasia(FNH)様過形成結節であった.カラードプラ法による肝の血行動態評価および造影超音波検査による肝腫瘤の血行動態評価が,BCSおよびこれに伴った腫瘤性病変の診断にきわめて有用であった.
今月の超音波像
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