超音波医学
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35 巻, 3 号
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総説
  • 東野 英利子, 植野 映, 相田 久美
    2008 年 35 巻 3 号 p. 295-302
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/05/23
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    乳腺疾患の組織像は多彩であり,乳癌であっても同一ではない.超音波像は組織学的構成成分によって異なるので,各疾患の組織学的な特徴を知ることは重要である.日ごろ遭遇することの多い乳腺疾患の代表的な超音波像と病理組織像を提示する.
  • 小井戸 一光
    2008 年 35 巻 3 号 p. 303-313
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/05/23
    ジャーナル 認証あり
    腹部造影超音波の最新造影技術とその臨床応用に関して概説する.造影超音波の造影手法には高音圧でバブルを破砕しながら造影するloss of correlation(LOC)あるいはstimulated acoustic emission(SAE)と,低音圧でバブルを共振させて発生するハーモニック信号を利用するphase inversion法がある.本邦で使用可能な造影剤では前者がLevovist®に後者がSonazoid®に有用な手法である.LOCによる造影では非常に高い造影コントラストが得られるが,長時間にわたる連続的造影は不可能である.phase inversion法では連続的な造影が可能で,Micro Flow Imagingなどの手法によって微細血管構築も描出出来るようになった.一方,Levovist®,Sonazoid®ともにKupffer細胞に取り込まれる性質があり,これを利用して肝臓の臓器特異的な造影が可能となった.これらの手法の臨床応用として,臓器のパーフュージョン観察,腫瘍の血流や血管構築から見た鑑別診断,膵癌化学放射線療法後の治療効果判定や膵癌VEGF発現評価,肝癌の非手術的治療に対する治療効果判定,さらに造影超音波ガイド下肝腫瘍熱凝固術などが挙げられる.超音波に造影剤がもたらされたことによって,超音波は再び精密腹部画像診断の一翼を担うこととなった.
原著
  • 田中 直彦
    2008 年 35 巻 3 号 p. 315-328
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/05/23
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    はじめに:通常のカラードプラ法により検出出来る最大の血流速は,エイリアシングによって制限されている.そこで,エイリアシングを生じることなく,高速度の血流速を推定する広帯域ドプラ法を考案した.方法:提案する方法では広帯域パルスを送波し,得られる広帯域エコー情報の全てを用いて速度を推定する.受波したエコー信号はフーリエ変換し,クロススペクトルに変換する.クロススペクトルの位相は周波数の関数であり,これを直線近似した時の傾きが反射体の平均速度に対応する.反射体の速度がナイキスト限界より大きい場合,クロススペクトルの一部の位相が±πradを越えて折り返す.この折り返した位相を,広帯域のエコー情報を用いて修正することでエイリアシングを回避する.反射体の速度は,折り返しの修正された位相の傾きから求められる.結果:本方法により速度推定範囲が従来法の約3倍に拡大出来ることを,計算機シミュレーションで確認した.また,雑音や反射体速度のばらつきに対して,良好な頑健性を持っていることが確認出来た.結言:ナイキスト限界を越えることの出来る血流速推定法を示した.本方法により,エイリアシングの生じないカラードプラ診断装置が実現出来る可能性がある.
症例報告
  • 藤山 澄代, 谷口 健治, 尾下 素子, 松林 智江子, 山崎 哲也, 有馬 哲彦, 古林 正夫, 木原 正高, 深堀 愛子
    2008 年 35 巻 3 号 p. 329-334
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/05/23
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    肝性胸水とは,心臓,肺に明らかな基礎疾患を有しない肝硬変患者に見られる胸水の総称である.今回,我々は腹部超音波検査を行い横隔膜の欠損を認め,カラードプラ法で腹水の胸腔への移行を示す特徴的な所見が見られた肝性胸水の症例を経験したので報告する.症例は75歳女性,肝硬変の既往を有し,下血を主訴に受診,呼吸困難は訴えなかったが右胸水を認め入院.減塩食治療および利尿剤投与にて改善退院.二ヵ月後,息苦しさを訴え,右胸水の増加で再入院.腹部超音波検査で横隔膜の欠損を確認し,カラードプラ法ではこの欠損部位に腹腔から胸腔へ向かうジェット流を認めたため,肝性胸水と診断した.またその後の経過観察にてジェット流の変化が見られた.超音波検査は肝性胸水の診断およびその発生機序を考える上でも有用である.
今月の超音波像
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