超音波医学
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35 巻, 4 号
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原著
  • 杉浦 真里, 野田 明子, 後藤 由実, 美濃島 慎, 原 祐樹, 宮田 聖子, 伊藤 理恵子, 飯野 重夫, 永田 浩三, 古池 保雄
    2008 年 35 巻 4 号 p. 409-414
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/07/22
    ジャーナル 認証あり
    目的:3次元(three-dimensional: 3D)心エコー法による運動時の左心機能評価の信頼性および実用性について,パルスドプラ法および断層エコー(two-dimensional: 2D)心エコー法と比較検討した.対象と方法:健常成人18例を対象に仰臥位自転車エルゴメーターによる多段階運動負荷試験を施行し,運動時の左心機能を3D心エコー法により評価した.3D法による運動中の一回拍出量係数(stroke volume index: SVI, stroke volume / body surface area),心係数(cardiac index: CI, cardiac output / body surface area)および左室駆出率(left ventricular ejection fraction: LVEF)をパルスドプラ法および2D法によるそれらと比較した.各方法によるSVI,LVEF,左室収縮および拡張末期容積の同一者間,他者間変動を検討した.結果:運動中のSVI,CIおよびLVEFの同一者間および他者間変動はパルスドプラ法および2D法に比し3D法で小であった.また,3D法によって求めたSVIおよびCIは,運動中,心拍数の上昇と共に最大運動時まで増大した.3D法では安静時および最大運動時のdyssynchronyの評価が可能であった.結論:運動中の左心機能評価として3D心エコー法は実用的と考えられた.
  • 横井 英人, 福田 浩之, 露口 利夫, 松谷 正一, 税所 宏光
    2008 年 35 巻 4 号 p. 415-427
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/07/22
    ジャーナル 認証あり
    近年,電子カルテが普及し,診療結果を電子的に記録することが一般的になってきた.電子データの共有・二次利用のためには,記録項目・用語の標準化が必要である.我々は腹部超音波検査に関する所見項目・用語について国内の種々の教科書から取材した結果と,診療施設で入力されたデータの検討を元に,コンピュータ用にオントロジーの性質を持った用語集案を作成した.この用語集は階層構造で用語同士の関係を表しており,多くの同義語を用語集の中で利用出来るように設計した.用語集の編集には専用のツールを作成し,このツールからはClaMLと呼ばれるXMLを用いた用語集の国際的表現方法で用語集を出力出来る.この機能により,用語集を多くのシステムで半自動的に取り込むことを目指している.
  • 銭谷 平, 鈴木 亮, 丸山 一雄, 古幡 博
    2008 年 35 巻 4 号 p. 429-436
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/07/22
    ジャーナル 認証あり
    目的:バブルリポソーム(Bubble Liposomes: BLs)と低周波超音波(連続波,500kHz)の併用による血栓溶解効果加速化をin vitro実験によって検証した.対象と方法:血栓としてウシ血漿にトロンビンを加えたフィブリン塊を用いた.その血栓塊を加圧容器内溶液に封入し,その圧力150mmHg,37℃の状態で超音波(Ultrasound: US)を照射し,血栓重量減少率を測定した.重量減少率は(封入前重量‐超音波照射後摘出時重量)/封入前重量とした.超音波条件は連続波500kHz,暴露時間60秒,音響強度0.7W/cm2 (非加圧状態での容器内).容器内溶液として,生理食塩水(control群),BLs溶液(脂質量として0.5mg/ml) (BLs群),rt-PA(monteplase)溶液 1000IU/ml(rt-PA群),BLs(脂質量として0.5mg/ml)を含むrt-PA溶液 1000IU/ml(rt-PA+BLs群)を用いた.それぞれに対し超音波照射・非照射を行い,各群(各n=10)について重量減少率を2群間比較(t検定)した.結果と考察:BLsを加えたrt-PA+US群の血栓溶解増強効果は,60秒ではrt-PA,BLs,USの単独および,どの2因子の組み合わせに対しても有意であった(0.001<p<0.027).結論:BLsはrt-PA併用超音波血栓溶解効果を60秒で促進した.
症例報告
  • 福西 雅俊, 後藤 浩実, 佐藤 麻美, 田村 悦哉, 高野 良二, 縣 潤
    2008 年 35 巻 4 号 p. 437-441
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/07/22
    ジャーナル 認証あり
    大動脈縮窄症は大動脈弓より遠位で動脈管接合部に狭窄を生じる先天性疾患である.心奇形を伴う複合型と動脈管が閉鎖し心奇形を合併しない単純型に大別され,成人例では薬物抵抗性の高血圧,上肢の高血圧と下肢血圧低下により発見されることが多い.我々は背部血管雑音を契機に発見された単純型大動脈縮窄症の成人例を経験したので報告する.症例は26歳,男性,感冒症状のため近医受診した際,高血圧と背部血管雑音,CTにて胸部大動脈拡張が指摘され精査となった.上肢血圧132/70mmHg左右差なく,背部脊椎左側に収縮期雑音を聴取した.心エコー図検査では,心臓に異常所見は認めなかったが,下行大動脈に33mmの拡張所見と内部に乱流が検出された.胸骨上窩からは,大動脈弓部の低形成と,その遠位部血管径が縮小し,その末端側の拡張が観察された.縮小部位に一致して狭窄血流を認め,連続波ドプラ法で求めた最大流速が3.4m/s,縮窄部前後の推定圧較差は46mmHgと計測された.腹部大動脈の流速が遅く,立ち上がりが緩徐で,拡張期にも末梢側へ流れる独特の波形を呈した.日頃より理学所見に注目し,大動脈走行の理解と描出を心掛けるべきであり,腹部大動脈血流波形に注意することで本疾患の存在が推測出来ると思われる.
  • 杉山 祐公, 鈴木 理代, 平野 圭一, 中村 啓二郎, 高橋 真生, 清水 一寛, 野池 博文, 田端 強志, 東丸 貴信
    2008 年 35 巻 4 号 p. 443-449
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/07/22
    ジャーナル 認証あり
    経胸壁ドプラ心エコー法による冠動脈の描出が可能となり,冠血流速波形の解析から冠循環の評価が行われるようになってきた.冠動脈遠位部は検出率が高く,その血流評価に対する多数の報告がなされているのに対して,冠動脈近位部を評価した報告は少ない.今回我々は,経胸壁ドプラ心エコー法により,冠動脈近位部狭窄の診断が可能であった不安定狭心症の2症例を経験したので報告する.症例1:79歳,男性.胸痛を主訴に入院.発作時の心電図では II ,III,aVF,V3‐6のST低下を認めた.経胸壁心エコー検査では,左室壁運動が心尖部で若干低下していたが左室駆出率は正常であった.大動脈弁レベルの短軸像で冠動脈近位部を直接描出したところ,左前下行枝近位部に加速血流を認め拡張期最高血流速度は104cm/秒と高速であった.冠動脈造影の結果,分節6に99%狭窄を認め,経胸壁心エコー検査で認められた狭窄部と一致していた.狭窄部にステントを留置し良好な拡張に成功した.術後の経胸壁心エコー検査では,冠動脈内の加速血流は消失し拡張期最高血流速度は40cm/秒と正常化した.症例2:59歳,男性.胸痛を主訴に入院.発作時の心電図で II ,III,aVFの陰性T波を認めた.経胸壁心エコー検査では,左室壁運動異常は認めなかった.大動脈弁レベルの短軸像で冠動脈近位部を直接描出したところ,右冠動脈近位部に加速血流を認め拡張期最高血流速度は108cm/秒と高速血流であった.冠動脈造影の結果,分節1に99%狭窄を認め,経胸壁心エコー検査で認められた狭窄部と一致していた.狭窄部にステントを留置し良好な拡張に成功した.術後の経胸壁心エコー検査では,冠動脈内の加速血流は消失し拡張期最高血流速度は26cm/秒と正常化した.非ST上昇型の不安定狭心症において,経胸壁ドプラ心エコー法により冠動脈近位部の狭窄病変を直接描出することが可能であった.本法は,冠動脈近位部狭窄の有無を心臓カテーテル検査前に予測する上で有用な検査法と考えられた.
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