超音波医学
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35 巻, 5 号
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特集「腹部検診エコー」
  • 石田 秀明
    2008 年 35 巻 5 号 p. 511-512
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/09/29
    ジャーナル 認証あり
  • 小野寺 博義
    2008 年 35 巻 5 号 p. 513-520
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/09/29
    ジャーナル 認証あり
    腹部超音波検診に関して初めて報告がされてから25年になる.しかし,現在の腹部超音波検診はエビデンスに基づくことなく,エビデンスを求めようともせずに漫然と行われている.科学的根拠に基づく保健医療(evidence-based healthcare)とは程遠い現状にある.超音波検診の信頼失墜の前に超音波検診のデータ解析を早急に行い,エビデンスを確立する必要がある.そのためには,日本超音波医学会がイニシアティブを発揮し,超音波検診を科学的根拠に基づく保健医療(evidence-based healthcare)とするための施策を講じるために,超音波検査を検診に用いている各学会に共同して検討することを呼びかけるべきである.
  • 竹内 和男, 桑山 美知子, 辻 裕之, 原 茂子
    2008 年 35 巻 5 号 p. 521-527
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/09/29
    ジャーナル 認証あり
    虎の門病院健康管理センター人間ドックでは,1984年開設後,毎年10,000件を超える腹部エコースクリーニング検査を行なってきた.本稿では,人間ドックで得られる各種所見について,その内容と頻度について述べるとともに,開設後5年間にエコーにより発見された悪性腫瘍の成績を示した.悪性腫瘍の頻度は全体で0.12%であり,腎臓癌が0.08%と最も頻度が高く,浸潤性膵管癌や胆管癌の頻度は0.01%以下と低かった.今後は,単に発見された悪性腫瘍の数や頻度にとどまるのではなく,早期の悪性腫瘍をどれだけ発見出来たかが問われる時代になると考えられる.そのためには,スクリーニングを担当する超音波検査士の診断能力の向上だけでなく,超音波専門医による適切な事後管理に加え,人間ドック後に引き続き行われる精密検査の質を高める必要がある.
  • 草野 健
    2008 年 35 巻 5 号 p. 529-537
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/09/29
    ジャーナル 認証あり
    鹿児島県の腹部超音波集検は1984年に当時の県成人病予防協会(現県民総合保健センター)によって開始された.鹿児島県厚生連健康管理センターでは1994年から巡回健診の一部としての集検を開始した.また人間ドックでは胆のう検診として行っていた腹部超音波検査を,上腹部5臓器を標的とする検診として本格化した.現在では集検3万人,ドック1万人を越える受診者に対し0.06%強のがんと多数の要処置疾患を発見してきている.しかし,検診成立要件として考察すると安全性,簡便性,効率などは満たしているものの経済性や有効性に関しては検討がきわめて不十分である.さらに,腹部超音波検診は他のがん検診と異なり健康診断的性格を有しているが,生活習慣病対策としての効果についても検討が必要である.これらの検討のためには,今後は事後管理活動の強化が必要であり,腹部超音波検診に従事する医師や技師にもそのような視点・意識が要求される.
  • 渡部 多佳子, 石田 秀明, 小松田 智也, 古川 佳代子, 長沼 裕子
    2008 年 35 巻 5 号 p. 539-543
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/09/29
    ジャーナル 認証あり
    腹部超音波集検は“mass-screening”の一環として行われることが多い.この20年超音波工学の進歩は目覚しいが,この進歩が集検用の装置に改革をもたらしたことは無く,安価な装置でなされてきた.やはり,精度向上のため,我々の腹部超音波集検用装置についての認識もそろそろ変えなくてはいけない時期になっているのではないだろうか.この目的に沿っていると思われる幾つかの技術をここで述べる.1)音速補正法:超音波画像作成のための現行装置が使用している〔体内の音速伝播速度は一定である〕非現実的過程を補正する試みである.伝播時間から対象までの距離を算出する際の仮定伝播速度を変化させる方式では,距離方向の画質向上が期待出来る.一方,超音波を幅広い“zone”で放射し多数の素子で反射信号を受信,その整合性を検討する方式(zone sonography)では方位分解能の向上が期待出来る.2)視野角可変方式:Trapezoid scanningに見られるように視野角を変化させることで解剖学的オリエンテーションがつきやすくなる.3)装置の小型化:コンピューター技術の進歩に伴い可能とはなるが,画質の劣化や操作性の低下は避ける必要がある.4)3D:3Dは位置認識が正確となり急速に普及してきた.これにより,多方向からの検討や正確な測定が容易となりつつある.まとめ:以上のような技術の取り込みも超音波集検用装置にとって考慮すべき時期となっている.
原著
  • 真島 康雄
    2008 年 35 巻 5 号 p. 545-552
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/09/29
    ジャーナル 認証あり
    背景:頸動脈のIMT(内膜中膜肥厚)計測は,脳梗塞や冠動脈イベントのリスクを判定する“窓”として用いられている.しかし,頸動脈の動脈硬化所見が無くてもイベントが少なからず発生している.目的:イベント予知のために,新たな“窓”を発見すること.対象および方法:当院に通院中の30歳以上の連続628名を対象とし,イベント歴有り26名,無し602名の右鎖骨下動脈と頸動脈の最も厚いIMTを計測し,それぞれS-max,C-maxとした.無イベント例ではLDL,HDL,TG,食の好み,糖尿病や高血圧と,S-maxおよびC-maxとの関連を調査した.イベント例のS-max,C-maxの所見から,対象を5群のリスクレベルに分類した.結果:S-maxを97.1%(610/628)に検出した.60歳以上の症例でのS-maxは,LDLやTGの高値,高血圧,肉類や糖分の摂取過多,および野菜不足を,C-maxはLDL高値,HDL低値,高血圧,肉類の摂取過多の程度を反映していると考えられた.レベル0‐4までのイベント歴率を計算すると,それぞれ0%(0/182),1.2%(2/164),2.0%(2/100),11.4%(9/79),14.1%(12/85)であった.結語:S-max は動脈硬化の定量診断や,経過観察のための新しい明瞭な“窓”と言える.S-max とC-maxで分類したカテゴリーは,脳梗塞や冠動脈疾患のイベントのリスクレベルを判定するのに非常に有用である.
  • 道倉 雅仁, 柏瀬 一路, 長谷部 愛, 守安 謙志, 北出 和史, 前田 匡, 森 宏樹, 有田 勝, 辻本 正彦, 上田 恭敬
    2008 年 35 巻 5 号 p. 553-559
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/09/29
    ジャーナル 認証あり
    目的:頸動脈超音波像と冠動脈血管内視鏡検査での血管所見を比較し,頸動脈超音波検査が冠動脈の血管状態の予測や経過観察に有用であるかを検討した.また,スタチン製剤による冠動脈と頸動脈の治療効果についても検討した.対象と方法:心臓カテーテル検査を施行した際に血管内視鏡検査を行った症例のうち,検査前3日以内に頸動脈超音波検査を施行した症例を対象とした.対象者の頸動脈超音波像と冠動脈の状態を比較した.またスタチン製剤による経時的変化も比較した.結果:冠動脈のyellow plaque(YP)個数とplaque score(YPの個数×その冠動脈の最大のYP grade)が増加するに伴い,頸動脈のプラーク形状においてhigh-echo plaqueの占める割合が有意に増大した.しかし,YP gradeと頸動脈での平均の内膜中膜壁厚 (intima-media thickness:IMT)や最大プラーク径については有意な関連は認めなかった.また,アトルバスタチン投与群と非投与群において,頸動脈と冠動脈項目の平均4.2ヵ月の経時的変化を比較した結果,投与群の頸動脈平均IMTとプラークの大きさは,非投与群に比較し有意に縮小した.また非投与群のYP個数は,投与群に比し有意に増加した.結論:評価方法に制約があるものの,頸動脈超音波像は冠動脈の状態を推測出来る事が示唆された.
症例報告
  • 山下 都, 畠 二郎, 中武 恵子, 竹之内 陽子, 谷口 真由美, 小島 健次, 今村 祐志, 眞部 紀明, 楠 裕明, 春間 賢
    2008 年 35 巻 5 号 p. 561-567
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/09/29
    ジャーナル 認証あり
    症例は68歳,女性.嘔気のため他院で上部消化管内視鏡検査が施行されたが明らかな異常は認められなかった.次第に腎不全および高カルシウム血症を伴うようになり,当院を紹介受診.体外式超音波上,十二指腸は上腸間膜動脈と腹部大動脈の間よりやや肛門側の水平部から上行部にかけて約4cmの範囲で壁が全周性に肥厚し,その層構造は不明瞭であった.Levovist®を用いたadvanced dynamic flowTM(ADF)間歇送信による造影超音波では,壁内の血流は寡少であった.また,左腎に腎盂の拡張を認め腎盂尿管移行部付近で狭小化していた.さらに腎門部近傍の脂肪織は肥厚し縦横比の高いリンパ節が数個観察された.以上より広範囲に浸潤した原発性十二指腸癌が疑われ,姑息的手術を目的として開腹術となった.腫瘍は上腸間膜動静脈を巻き込んでおり切除困難で,小腸間膜には多数の播種を疑う結節を認めた.小腸間膜播種生検標本の病理組織学的所見から原発性十二指腸癌およびその播種性転移と診断された.患者は腎不全のため化学療法は困難であり,2ヵ月後に永眠された.通常の上部消化管内視鏡検査では十二指腸水平部や上行部を積極的に観察しないことも多く,本症例のように消化管疾患に由来すると思われる上腹部症状を有しながらも通常の上部消化管内視鏡検査で異常を認めない症例には,超音波を積極的に応用すべきであると思われた.
今月の超音波像
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