背景:頸動脈のIMT(内膜中膜肥厚)計測は,脳梗塞や冠動脈イベントのリスクを判定する“窓”として用いられている.しかし,頸動脈の動脈硬化所見が無くてもイベントが少なからず発生している.
目的:イベント予知のために,新たな“窓”を発見すること.
対象および方法:当院に通院中の30歳以上の連続628名を対象とし,イベント歴有り26名,無し602名の右鎖骨下動脈と頸動脈の最も厚いIMTを計測し,それぞれS-max,C-maxとした.無イベント例ではLDL,HDL,TG,食の好み,糖尿病や高血圧と,S-maxおよびC-maxとの関連を調査した.イベント例のS-max,C-maxの所見から,対象を5群のリスクレベルに分類した.
結果:S-maxを97.1%(610/628)に検出した.60歳以上の症例でのS-maxは,LDLやTGの高値,高血圧,肉類や糖分の摂取過多,および野菜不足を,C-maxはLDL高値,HDL低値,高血圧,肉類の摂取過多の程度を反映していると考えられた.レベル0‐4までのイベント歴率を計算すると,それぞれ0%(0/182),1.2%(2/164),2.0%(2/100),11.4%(9/79),14.1%(12/85)であった.
結語:S-max は動脈硬化の定量診断や,経過観察のための新しい明瞭な“窓”と言える.S-max とC-maxで分類したカテゴリーは,脳梗塞や冠動脈疾患のイベントのリスクレベルを判定するのに非常に有用である.
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