目的:エラストグラフィ技術が普及し,乳房疾患の良悪性の診断に寄与している.一方,血流が多い病変は悪性の可能性を考えてアプローチする必要があることが多い.日常臨床においてhypervasucularであるにも関わらず,エラストグラフィでは良性の可能性が示される病変が経験されている.そのような症例をretrospectiveに検討し,今後どのような点に留意して検査を行うべきかを知ることを目的とした.
対象と方法:2007年4‐6月の間に超音波検査を施行され,Bモードでカテゴリー3以上かつカラードプラ法で血流が多い症例のうち,エラストグラフィでスコア3以下を示した17例を対象とし,これらの超音波所見と病理組織所見について検討した.
結果:17例中乳癌は12例,良性疾患は5例であった.エラストグラフィにてスコア1または2を示した症例は8例で,非浸潤性乳管癌4例,乳頭腺管癌1例,乳腺症,乳管内乳頭腫,葉状腫瘍が各1例ずつであった.スコア3を示した症例は9例で,非浸潤性乳管癌4例,硬癌,充実腺管癌,乳頭腺管癌が1例ずつ,乳腺症と葉状腫瘍が1例ずつであった.乳癌12例中非浸潤性乳管癌が8例であり,残り浸潤癌4例中3例は浸潤部分がかなり小さく乳管内成分優位なものであった.
結論:Bモードおよびカラードプラ法で悪性と考えた症例で,elasticity score3以下の病変は,非浸潤癌を示すか良性病変であるということが示された.
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