超音波医学
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36 巻, 1 号
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総説
  • 田中 幸子
    2009 年 36 巻 1 号 p. 3-12
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/01/22
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    肝腫瘍の鑑別診断において血流画像診断は重要な位置を占めている.造影エコー法は造影CTに劣らない血流画像情報が得られ,さらに網内系細胞の存在についての情報も得られる.本稿では造影超音波検査の意義と位置付け,超音波造影剤の特性と造影効果出現の原理について述べるとともに,実際の検査の方法やプロトコール,代表的な肝腫瘍における特徴的造影所見について画像を示して解説する.
  • 尾上 篤志, 西岡 伯, 秋山 隆弘
    2009 年 36 巻 1 号 p. 13-22
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル 認証あり
    泌尿器科救急疾患として超音波検査を施行する上で,知っておかなければならない代表的疾患について主に泌尿器科以外の医師もしくは超音波検査技師を対象として解説した.泌尿器科領域において緊急手術や処置が必要な疾患は外傷(腎・膀胱・精巣),腎腫瘍破裂(腎癌・腎血管筋脂肪腫),腎動脈瘤破裂,腎梗塞,精巣軸捻転など多くはない.一方,待機的手術や保存的治療が必要な疾患には尿路結石・上部尿管結石,急性腎盂腎炎,急性腎不全,精巣炎,精巣上体炎,膀胱タンポナーデ,腎動静脈瘻,尿閉がある.これらの疾患について,腹痛,腰背部痛など症状から考えるべき疾患と血尿,尿閉など病態から考えるべき疾患に分類し,さらに陰嚢部痛を来たす疾患を独立した項として解説した.いずれの疾患においても救急検査時には,その泌尿器科疾患としての特徴的超音波像をよく理解しておくだけでなく,他の領域(消化器・消化管・婦人科領域など)の救急疾患との鑑別も念頭においた診断が必要である.
  • 岡庭 信司
    2009 年 36 巻 1 号 p. 23-31
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/01/22
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    超音波検査は簡易で低侵襲な検査法であるが,空気の存在によりその伝達が妨害される特性を持ち,診断能力は術者の技能に依存する.さらに,超音波検査特有のアーチファクトの存在およびその見分け方についても熟知しておく必要がある.胆嚢の腫瘍性病変においては,その超音波像を有茎性隆起型,広基性隆起型,壁肥厚型の3群に分類する.この分類は病変の鑑別診断のみならず深達度診断においても有用であり,有茎性隆起型の癌と診断出来ればその深達度は粘膜内に限局する早期癌(腺腫内癌)と考えられる.胆嚢癌との鑑別診断には,病変の大きさ,表面構造,内部エコー,病変付着部の胆嚢壁の性状などを評価することも重要である.さらに,胆嚢の腫大や胆泥の貯留あるいは虚脱といった胆嚢の異常像は潜在する胆管病変の拾い上げにも有用である.
原著
  • 源新 めぐみ, 角田 博子, 向井 理枝, 鈴木 咲子, 平山 美以子, 河内 伸江, 菊池 真理, 小野田 結, 鈴木 高祐
    2009 年 36 巻 1 号 p. 33-37
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/01/22
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    目的:エラストグラフィ技術が普及し,乳房疾患の良悪性の診断に寄与している.一方,血流が多い病変は悪性の可能性を考えてアプローチする必要があることが多い.日常臨床においてhypervasucularであるにも関わらず,エラストグラフィでは良性の可能性が示される病変が経験されている.そのような症例をretrospectiveに検討し,今後どのような点に留意して検査を行うべきかを知ることを目的とした.対象と方法:2007年4‐6月の間に超音波検査を施行され,Bモードでカテゴリー3以上かつカラードプラ法で血流が多い症例のうち,エラストグラフィでスコア3以下を示した17例を対象とし,これらの超音波所見と病理組織所見について検討した.結果:17例中乳癌は12例,良性疾患は5例であった.エラストグラフィにてスコア1または2を示した症例は8例で,非浸潤性乳管癌4例,乳頭腺管癌1例,乳腺症,乳管内乳頭腫,葉状腫瘍が各1例ずつであった.スコア3を示した症例は9例で,非浸潤性乳管癌4例,硬癌,充実腺管癌,乳頭腺管癌が1例ずつ,乳腺症と葉状腫瘍が1例ずつであった.乳癌12例中非浸潤性乳管癌が8例であり,残り浸潤癌4例中3例は浸潤部分がかなり小さく乳管内成分優位なものであった.結論:Bモードおよびカラードプラ法で悪性と考えた症例で,elasticity score3以下の病変は,非浸潤癌を示すか良性病変であるということが示された.
  • 神山 直久, 岡村 陽子, 掛江 明弘, 橋本 秀行
    2009 年 36 巻 1 号 p. 39-48
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/01/22
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    目的:本報告では,超音波診断装置を用いた乳房微細石灰化の検出能について検討する.方法:寒天グラファイトファントムに埋没させた微小構造物に対する空間分解能とコントラスト分解能の評価,および人間の微小輝度の視認性の評価を目的とした2種類の実験を行った.結果:結果として,微小輝度の輝度レベルのみではなく周囲の輝度が視認性の阻害要因となっていることが定量的に示された.これらの結果から導出される改善案して,乳腺組織構造を考慮した微細石灰化抽出のための画像処理法を提案した.この手法は,エコー信号の統計的性質を利用した画像処理であり,乳腺構造の特徴を考慮している.この画像処理法を臨床画像に試行した結果,乳腺組織構造がキャンセルされる一方で,微細石灰化が良好に抽出された.結論:提案する手法により,微細石灰化の視認性が向上することが示唆された.
症例報告
  • 山崎 修, 大庭 成喜, 山口 純奈, 石橋 由孝, 堀 雄一, 福本 誠二, 藤森 新, 内田 俊也, 藤田 敏郎
    2009 年 36 巻 1 号 p. 49-51
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/01/22
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    症例は37歳,男性.祖母に関節炎,母親に痛風の病歴あり.家族調査で11歳時に尿酸値 7.6mg/dL,Ccr 60mL/分の腎機能障害の診断を受けた.27歳で痛風関節炎を発症した.遺伝子解析でuromodulin(UMOD)遺伝子の翻訳領域exon4にグアニンからアデニンへの単塩基置換を同定,同変異がUMOD蛋白機能障害を起こし,家族性高尿酸血症性腎症を発症させたものと考えた.当院入院時Hb4.8g/dL,BUN182mg/dL,Cr21.91mg/dL,尿酸値7.6mg/dLと末期腎不全であり,血液透析療法を導入した.腎不全保存期から継続的な腹部超音波を施行しており,腎盂・腎杯拡張所見,尿路結石を認めた.本例は非侵襲的に経過観察を行うことができ,かつ疾患の慢性腎不全の機序を考える上で超音波所見が有用であったと考えた.
  • 網屋 俊, 塗木 徳人, 原口 浩一, 大納 伸人, 重信 秀峰, 佐多 直幸, 東福 勝徳, 福岡 嘉弘, 田上 和幸, 坪内 博仁
    2009 年 36 巻 1 号 p. 53-58
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/01/22
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    症例は,79歳男性.高血圧,糖尿病を治療中であった.2008年2月,慢性C型肝炎に対するインターフェロン治療目的で前医に入院した際に,胸骨右縁第二肋間を最強点とする収縮期雑音を聴取された.心エコーで三尖弁,右室自由壁を巻き込む右房内腫瘤を指摘された.右房は腫瘤で占拠され,右心系は拡大していた.PET/CTでは,縦隔および心臓に強い集積を伴う2ヵ所の腫瘤を認めた.発熱,めまいなど症状は無かったが,悪性疾患が強く疑われ,当院へ転院となった.全麻下縦隔鏡下リンパ節生検により,diffuse large B-cell lymphomaと診断し,rituximab併用化学療法を開始した.8クール施行した時点で,心エコー,CT上は腫瘤が著明に縮小した.原発性心臓腫瘍の発生頻度は剖検例の0.001‐0.28%と低く,その中で悪性は25%と少ない.悪性心臓腫瘍の95%は肉腫であり,リンパ腫は5%と稀である.心臓の悪性リンパ腫に対する治療法は確立していない.一方,悪性リンパ腫の治療はrituximabの導入により治療効果が著明に改善しており,心臓悪性リンパ腫であった本症例においても著効した.心エコーが心臓腫瘍の質的評価や経過観察,治療効果判定に有用であった.
今月の超音波像
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