超音波医学
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37 巻, 2 号
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総説
  • 落合 厚
    2010 年 37 巻 2 号 p. 97-105
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/03/24
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    経直腸的超音波検査は本邦で実用化され,前立腺癌のスクリーニング,浸潤度判定などに広く応用され,普及した.前立腺特異抗原(PSA)の発見と前立腺系統的針生検の開発により前立腺癌の早期診断が可能となった一方で,gray-scale法超音波検査の局在診断能は十分なものとは言えなくなり,その有用性はPSA容積補正のための前立腺容積測定や,系統的生検時の領域同定などに限定されている.新しい技術の進歩によりこれまで超音波で同定困難であった病変の局在診断が可能となれば,癌検出や治療の戦略が変わることが可能となる.近年,造影ドプラ検査,エラストグラフィが各領域において非侵襲的診断法として臨床応用されており,前立腺癌診断でもこれらの診断法を導入し,癌検出能の向上,新しい癌検出戦略の構築,治療への応用などが期待される.本稿では造影ドプラ法,エラストグラフィに関する最近の報告を紹介する.また,近年著しく進歩している経直腸的超音波による前立腺全摘術時の手術支援についても紹介する.
  • 三原 修一, 大竹 宏治, 木場 博幸, 田中 信次, 平尾 真一
    2010 年 37 巻 2 号 p. 107-114
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/03/24
    ジャーナル 認証あり
    1983年度から2003年度までの腹部超音波検診受診者延べ1,375,565名から1,403例の悪性疾患が発見された.そのうち腎泌尿器の悪性疾患は,腎細胞癌337例,腎盂尿管癌18例,膀胱癌123例,前立腺癌62例など545例で,38.8%を占めた.腎細胞癌,腎盂尿管癌,膀胱癌,前立腺癌の切除例はそれぞれ332例(98.5%),16例(88.9%),121例(98.4%),10例(16.1%),切除例の10年生存率は腎細胞癌96.8%,腎盂尿管癌52.0%,前立腺癌100%,膀胱癌では7年生存率99.1%であった.腎細胞癌は病期 I が86%,膀胱癌は病期 I が98.3%を占めたのに対し,腎盂尿管癌では病期 I が33.3%,病期III・IVが60%であった.膀胱癌では98.3%がTUR-Btにて治療された.超音波検診は,腎細胞癌,膀胱癌の早期発見にきわめて有用である.小腎細胞癌は高エコー均一な腫瘍が多く,血管筋脂肪腫との鑑別が重要である.また,腫瘍径の増大とともに,不均一になる.嚢胞タイプの腎癌では,壁の肥厚や内部の充実エコーに注意することが発見のポイントになる.腎盂尿管癌では,CEC内の充実エコー像やCECの経時的変化,水腎・水尿管に注意する.膀胱癌は後壁(三角部)に多発し,隆起性病変の検出がポイントである.
  • 武藤 智
    2010 年 37 巻 2 号 p. 115-121
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/03/24
    ジャーナル 認証あり
    高密度焦点式超音波治療high-intensity focused ultrasound(HIFU)は強力超音波を照射することにより標的となる焦点域内の組織を壊死させ,しかも周囲の正常組織に影響を与えない新しい低侵襲的治療である.限局性前立腺癌に対してもその有用性は立証され,再治療が可能な非観血的治療法として注目されている.また,高齢者や抗凝固療法施行例など合併症のある症例にも安全に行なうことが出来る.最近機器の改良により照射域の温度モニタリングと照射域の追加変更が容易となり,より確実の標的に対する照射が可能となった.他の癌種と同じように,前立腺癌に対しても病巣のみの部分治療であるFocal therapyの必要性が最近認識されつつある.そのデバイスとしてもHIFUの有用性が認められていることから,今後さらに限局性前立腺癌治療の重要な一翼をHIFUが担っていくと考えられる.
  • 小野寺 博義
    2010 年 37 巻 2 号 p. 123-130
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/03/24
    ジャーナル 認証あり
    超音波検査が検診(健診)に用いられるようになって約30年が経過した.しかし,未だに充分な評価がなされていない.検診に超音波検査を導入する目的の第一は,がんの早期発見と考えられることから,ここではがん検診を中心に実施体制,がん検診を行なうための条件,評価法,精度管理,受診者とのコミュニケーションなどについて概説する.
  • 中谷 敏
    2010 年 37 巻 2 号 p. 131-140
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/03/24
    ジャーナル 認証あり
    スペックルトラッキング法は,組織ドプラ法と違って,運動方向にとらわれずに心筋の速度を知ることが出来る.したがって,心筋の動線に沿ったストレインやストレインレートを壁の部位によらず求めることが出来る.このことはdyssynchronyの評価や虚血のサインであるpostsystolic shorteningの評価に有利である.また,最近は心筋全層の機能のみならず,心筋内スペックルを追跡することにより心内膜下層,中層,心外膜下層の機能も評価出来るようになってきた.心筋層別の機能評価が出来るようになれば,心筋虚血など種々疾患の詳細な評価が可能であり,新しい病態解析に繋がるであろう.さらに,スペックルトラッキング法を用いることにより従来の手法では評価困難であった心室の回転や捻れ運動まで定量的に計測出来るようになった.拡張期の心室回転やほどけ運動から拡張障害の程度を推定する研究も報告されており,今後,これらの指標の臨床的意義が確立されていくと思われる.現在のスペックルトラッキング法は2次元断層像に対して用いられているのが一般であるが,3次元画像に対して適用可能な機種が市販されている.本来,3次元的な動きを行う心筋の機能を,より生理的に評価出来る可能性があり,これからの展開が楽しみな領域である.
症例報告
  • 福西 雅俊, 高野 良二, 佐藤 麻美, 田村 悦哉, 後藤 浩実, 縣 潤, 青山 徹
    2010 年 37 巻 2 号 p. 141-147
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/03/24
    ジャーナル 認証あり
    症例は63歳,男性.心筋梗塞にて冠動脈形成術の既往あり.早朝,強い前胸部痛を自覚し当院に緊急搬送された.来院時心電図ではST変化は明らかではないが,以前と比べ右脚ブロックへ変化していた.血液検査では心筋逸脱酵素の上昇もなくトロポニンTも陰性であったが,臨床症状より急性冠症候群が疑われたため心エコー検査を施行したところ,前壁中隔は無収縮を呈していた.しかし,4分後,壁運動異常は著明に改善し,壁運動異常部位は認められなくなった.14分後には,同部位において再度壁運動異常が出現し低収縮となった.検査終了後に施行した2Dスペックルトラッキングによる画像解析では,4分後の画像ではpostischemic diastolic stunningを,14分後の画像ではpostsystolic shorteningが確認された.緊急冠動脈造影を行ったところ,以前左前下行枝に留置されたステント内に90%狭窄が認められ,同部位に冠動脈形成術を施行した.今回我々は,心エコー検査中に著明な壁運動の変化を呈した稀な症例を経験したので報告する.
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