目的:肝実質から得られるスペックルシグナルの統計的解析を応用して,慢性肝疾患の組織性状診断を行う.
対象と方法:肝生検で病理診断を得たHCV関連慢性肝疾患65例を対象とし,脂肪肝及び大酒家,腹壁の厚い症例は除外した.装置は東芝Aplio
TMXGを使用.Radio-frequency(RF)信号振幅の確率密度分布の統計学的解析を応用したソフトウェアを用いて,Rayleigh分布から著しく逸脱した強い信号を含む領域をBモード画像上に赤く重畳表示した(本研究ではこれをUS-Redと呼ぶ).画像上に占めるUS-Red%と病理組織から得られた情報とを比較検討した.
結果:US-Redは,主に線維の伸長による線維性架橋及び線維性隔壁による音響学的反射面を反映し,US-Red%は線維化ステージの進行につれ統計学的に有意に増加した.また,肝硬変症例ではUS-Red%のばらつきが大きく,大結節性の肝硬変では小結節性の肝硬変よりUS-Red%は有意に高値であった.
結論:RF信号の統計的解析を応用したカラーイメージの検討は,線維化ステージ(F1-3)の推測や肝硬変症例における結節の大小の評価に有用である.加えて,病変の進行につれて増加する音響学的反射面をカラーイメージとして視覚的に捉えられることは,臨床的に有益な情報となると考えられる.
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