超音波医学
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37 巻, 5 号
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原著
  • 松浦 秀哲, 山田 晶, 杉本 邦彦, 大平 佳美, 高橋 礼子, 杉本 恵子, 尾崎 行男, 岩瀬 正嗣, 石川 隆志, 石井 潤一
    2010 年 37 巻 5 号 p. 577-585
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/09/22
    ジャーナル 認証あり
    目的:左房容積係数(left atrial volume index: LAVI)は,左室拡張能の低下に伴う左室充満圧上昇により増大することに加えて,急性心筋梗塞患者の予後評価に有効であることが報告されている.また,組織ドプラエコー法を用いた僧帽弁輪部心房収縮速度波(A’)が,心房機能を反映することが報告されている.今回A’により,心事故発生を層別化出来るか否かを,左房拡大の有無を踏まえて検討を行った.対象と方法:対象は,当院CCUに入院した急性冠症候群(acute coronary syndrome: ACS)患者のうち,心房細動,心房粗動及び中等度以上の僧帽弁疾患を除外した連続212例(平均年齢64歳,男性166例).心臓死及び心不全による再入院を心事故と定義して,平均508日間の経過観察を行った.対象を左房拡大(LAVI≥32ml/m2)62例と非拡大150例の2群に分類し,検討した.結果:経過観察期間中に17例(死亡8例,心不全による再入院9例)の心事故が発生した.ROC曲線からA’のカットオフ値を10.7 cm/secに設定した.全例及び左房拡大例においては,A’≥10.7cm/secの群で心事故回避率が有意に高値であった.結論:左房拡大を伴うACS患者において,A’は心事故予測に有用である.
  • 矢島 義昭, 杉田 貴子, 佐藤 武敏, 見田 尊, 戸塚 真弓, 黒沢 功
    2010 年 37 巻 5 号 p. 587-592
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/09/22
    ジャーナル 認証あり
    目的:著者らは脂肪肝の超音波診断基準として“肝腎コントラスト”を1982年に報告したが,超音波装置の性能の向上によって超音波ビームのpenetrationが改善した結果,かつての基準を再検討する必要が生じた.今回はdifferential THIを登載した超音波装置を用いて肝腎コントラスト,肝静脈壁不鮮明化,深部減衰の各所見を再評価した.脂肪肝の程度を推定するgold standardとしてはCT numberを用いた.対象と方法:当院の健診で胸部レントゲン撮影と腹部US(超音波検査)を施行し,胸部レントゲン上の異常を指摘された結果,胸部単純CT撮影(上腹部を含む)を施行した312名である.用いた超音波装置は東芝のXARIO-XGで,CT装置はシーメンス社製のSomatom definition AS+である.結果:肝腎コントラスト(-)群,肝腎コントラスト(+)群,肝腎コントラスト+肝静脈壁不鮮明化(+)群,肝腎コントラスト+深部減衰(+)群のCTNはそれぞれ59.6±4.5HU(n=227),52.6±7.0HU(n=36),36.4±11.6HU(n=39),26.2±11.0HU(n=10)であった.結論:超音波ビームのpenetrationが改善された結果,小葉の30%の脂肪化は中等度の肝腎コントラストのみで検出することが出来る.肝静脈壁不鮮明化を伴った場合は小葉の>50%の脂肪化を検出することになる.
  • 中島 早苗, 渋谷 和俊, 神山 直久, 住野 泰清
    2010 年 37 巻 5 号 p. 593-600
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/09/22
    ジャーナル 認証あり
    目的:肝実質から得られるスペックルシグナルの統計的解析を応用して,慢性肝疾患の組織性状診断を行う.対象と方法:肝生検で病理診断を得たHCV関連慢性肝疾患65例を対象とし,脂肪肝及び大酒家,腹壁の厚い症例は除外した.装置は東芝AplioTMXGを使用.Radio-frequency(RF)信号振幅の確率密度分布の統計学的解析を応用したソフトウェアを用いて,Rayleigh分布から著しく逸脱した強い信号を含む領域をBモード画像上に赤く重畳表示した(本研究ではこれをUS-Redと呼ぶ).画像上に占めるUS-Red%と病理組織から得られた情報とを比較検討した.結果:US-Redは,主に線維の伸長による線維性架橋及び線維性隔壁による音響学的反射面を反映し,US-Red%は線維化ステージの進行につれ統計学的に有意に増加した.また,肝硬変症例ではUS-Red%のばらつきが大きく,大結節性の肝硬変では小結節性の肝硬変よりUS-Red%は有意に高値であった.結論:RF信号の統計的解析を応用したカラーイメージの検討は,線維化ステージ(F1-3)の推測や肝硬変症例における結節の大小の評価に有用である.加えて,病変の進行につれて増加する音響学的反射面をカラーイメージとして視覚的に捉えられることは,臨床的に有益な情報となると考えられる.
症例報告
  • 東野 英利子, 坂東 裕子
    2010 年 37 巻 5 号 p. 601-604
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/09/22
    ジャーナル 認証あり
    乳房超音波画像において乳癌の周囲に幅広い,弱い高エコーを認めた症例を2例報告する.これらの症例では,超音波上,通常のhaloと比較して幅広く,弱いhaloを認めたが,マンモグラフィ,あるいは病理組織学的にいわゆるhaloに相当する癌細胞の脂肪織への浸潤所見は見られなかった.そこでこれら2症例におけるhaloの原因は癌細胞と脂肪細胞の混在という器質的な変化ではなく,リンパ鬱滞による浮腫のような機能的な超音波所見と考えられ,pseudohaloと呼ぶことにした. 2例ともER陰性,PgR陰性,Her2 score0のいわゆるtriple-negative breast cancerであった.一般的にhaloは腫瘍の浸潤部と考えられるが,このように実際には腫瘍細胞の存在しない場合もあり,治療にあたっては注意を要すると考えられる.
  • 小河内 芳彦, 寉田 さやか, 山寺 陽一
    2010 年 37 巻 5 号 p. 605-609
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/09/22
    ジャーナル 認証あり
    症例:患者は69歳男性,健診後の精査目的のため来院.超音波検査にて右上腹部に無症状な腫瘤性病変を指摘.腫瘤径は47mm×35mm,内部は均一で右腎皮質に比して高エコーを呈した.後方エコーは不変から増強,境界は明瞭で辺縁に低エコー帯を認めた.内部の血流は認めなかった.術後の病理組織学的検査では,線維性被膜に覆われた脂肪壊死と診断された.考察:偽腫瘍性脂肪壊死は発見時の病期の違いから質的診断が困難と思われる.しかし,腸間膜内において内部に血流の認めない被膜形成を伴う腫瘤性病変を発見した場合は,この種の脂肪壊死も念頭に置くべきであろう.また,癒着の度合いや範囲により術式が変化する可能性もあるため,腫瘤の可動性をリアルタイムに観察出来る超音波検査の利点を活用し,癒着の有無や範囲を検索することが重要であると思われた.
今月の超音波像
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