超音波医学
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38 巻, 6 号
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総説
  • 小林 薫, 太田 寿, 福島 光浩, 網野 信行, 宮内 昭
    2011 年 38 巻 6 号 p. 625-636
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/11/25
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    全ての甲状腺の腫瘍に対して超音波検査を行う.乳頭癌は悪性の超音波所見を呈する.充実性パターン,不整形,境界粗雑,内部低エコー,不均質,微細多発高エコー,ドプラ法で血流シグナルあり,頸部リンパ節腫大がその所見である.甲状腺乳頭癌の特殊型には特別の超音波所見を呈し,良性所見を呈するタイプや,結節非形成のタイプがある.濾胞癌と濾胞腺腫の超音波所見はよく似ているので鑑別はかなり困難である.悪性リンパ腫はかなり特徴的な超音波所見を呈する.腺腫様甲状腺腫・腺腫様結節,嚢腫などについても説明する.嚢腫,腺腫様甲状腺腫・腺腫様結節,精査基準などについて説明する.超音波画像をみて臨床的判断が出来るように手術適応,経過観察,細胞診すべき部位などの事項も説明した.
原著
  • 高橋 政義, 飯田 和成, 和久井 紀貴, 高山 竜司, 塩澤 一恵, 住野 泰清
    2011 年 38 巻 6 号 p. 637-646
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/11/25
    ジャーナル 認証あり
    目的:肝細胞癌(hepatocellular Carcinoma: HCC)患者において,Sonazoid®造影超音波後血管相(Kupffer phase)の肝実質内micro bubble(MB)に高音圧超音波ビームを照射した際の崩壊距離と,ラジオ波焼灼療法(radio frequency ablation: RFA)における焼灼範囲を比較しその関係を明らかにする.対象:2008年1月から2009年12月までの間にCool-tip 20 mm針でRFA単独治療を行ったウイルス性慢性肝疾患を伴うHCC48症例48結節.方法:RFA施行前にSonazoid®造影超音波検査を施行.造影開始10分後の後血管相(Kupffer phase)において,flash-replenishment sequenceで肝右葉のMBを崩壊させ,肝表面からの崩壊距離を測定した.その後,RFA治療を行い,治療後の造影CTで焼灼範囲を測定し崩壊距離と比較した.さらに,治療前の各種肝線維化マーカーと崩壊距離を比較した.結果:崩壊距離が深くなるに従い,RFA焼灼範囲は有意に狭くなった(P=0.0001).また,IV型コラーゲン 7SはMB崩壊距離が深くなるに従い,有意に増加し,崩壊距離に肝線維化が関与している可能性が示唆された.結論:Sonazoid®造影超音波の後血管相(Kupffer phase)におけるMB崩壊距離が深くなればなるほど,RFA焼灼範囲は狭くなることが判明した.RFAの術前に焼灼範囲を推測する方法として有用と考える.
症例報告
  • 岡田 大司, 吉冨 裕之, 伊藤 早希, 安達 和子, 石橋 豊, 岡田 行功, 田邊 一明
    2011 年 38 巻 6 号 p. 647-650
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/11/25
    ジャーナル 認証あり
    症例は50歳,男性.高血圧症にて近医通院中であったが,2004年12月に心機能評価目的で施行された経胸壁心エコー検査にて,径4 mmの僧帽弁腫瘍を指摘された.精査加療を勧められたが,本人が希望せず経過観察となっていた.その後,腫瘍サイズの増大が見られ,本人が手術を希望したため2009年8月に当院入院となった.経胸壁心エコー検査では,僧帽弁後尖(P2)左房側弁腹に10×13 mmの可動性に富む球状腫瘍を認めた.辺縁は比較的整であったが,拡大像では毛羽立ち様であった.茎ははっきりしなかった.また,腫瘍による弁狭窄や閉鎖不全は認めなかった.経食道心エコー検査では腫瘍表面は凸凹し,内部には無エコー部分を認めた.また,3次元(3D)経食道心エコー検査で腫瘍が僧帽弁弁腹に存在し弁閉鎖を阻害していないことを確認した.塞栓症の危険性を考え,腫瘍切除術を施行した.病理組織診断は乳頭状線維弾性腫であった.5年間で腫瘍の増大が確認でき,3D経食道心エコー検査が腫瘍の評価に有用であった僧帽弁乳頭状線維弾性腫の1例について報告する.
  • 宮崎 真紀, 廣岡 昌史, 大野 由香理, 作岡 南美子, 上甲 毅, 西宮 達也, 渡邊 亮司, 池田 宜央, 日浅 陽一, 恩地 森一
    2011 年 38 巻 6 号 p. 651-655
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/11/25
    ジャーナル 認証あり
    胃重積は,胃腫瘍などによる胃‐十二指腸重積,胃切除後などに発生する胃‐空腸重積が一般的に知られているが,胃‐胃重積はきわめて稀である.今回我々は,超音波検査にて胃にmultiple concentric ring signを呈した胃巨大ポリープによる胃‐胃重積を経験したので報告する.症例は54歳,女性.子宮頸癌の経過観察中に施行された造影CT検査にて胃内に巨大腫瘤を指摘され,超音波検査を行った.心窩部縦走査にて,胃体部より幽門側にかけてmultiple concentric ring sign及びHay-Fork signを認め,その肛門側に直径40mm程度で境界は明瞭,内部不均一な腫瘤が見られた.上部消化管内視鏡検査で,胃体下部前壁大彎よりに約50mmの有茎性の腫瘤が見られ,病理検査結果は,過形成性ポリープ(GroupI)であった.内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)により胃ポリープは切除された.胃‐胃重積は非常に稀な病態で,特徴的な超音波画像を呈した.超音波検査は診断に有用であった.
  • 藤本 武利, 加藤 洋
    2011 年 38 巻 6 号 p. 657-662
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/11/25
    ジャーナル 認証あり
    進行胆嚢癌であっても漿膜下層浸潤が浅く2 mm以下の深さに留まる胆嚢癌,すなわち初期の漿膜下層浸潤胆嚢癌が予後良好であると報告され,その超音波像が注目を浴びている.他方,肝外胆管癌は深達度診断が困難であり,早期胆管癌の超音波像が報告されている一方で,初期の漿膜下層浸潤胆管癌のそれは報告されていない.我々は,病理組織学的に初期の漿膜下層浸潤胆管癌と考えた症例を経験したのでこの画像を中心に報告する.本症例では,腹部超音波検査(US)で胆嚢腫大と肝外胆管拡張がみられ,中部胆管に腫瘤を認めた.MRCP・ERCで中上部胆管が不整な狭窄を示した.管腔内超音波検査(IDUS)を行うと,腫瘤は中部胆管内腔をほぼ占拠するが,外側高エコー層に明らかな不整を認めなかった.早期胆管癌と考え,胆嚢・胆管切除を行った.術中超音波検査(術中US)で三管合流部の前壁に腫瘤を認め,この直下の外側高エコー層が肥厚しており,一部で蚕食像がみられた.病理組織学的診断は,進行胆管癌:Bm,pap > tub1,深達度ss,pN0であり,漿膜下層浸潤が浅く2 mm以下の深さに留まっていた.外側高エコー層の肥厚は漿膜下層浸潤胆管癌の初期にみられる所見であるかどうか,今後の症例集積による検討が望まれる.
今月の超音波像
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