超音波医学
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38 巻, 1 号
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総説
  • 豊田 智彦
    2011 年 38 巻 1 号 p. 3-12
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/01/25
    ジャーナル 認証あり
    外科治療の進歩,内科管理の向上により,先天性心疾患患者の大部分が成人に達するようになり,成人の先天性心疾患患者数は小児のそれを上回る時代となった.また,それと共に,比較的複雑な心奇形群も成人に達するようになった.このため,成人循環器医,超音波検査士においても先天性心疾患の解剖,自然歴,手術の術式や治療後の長期予後などについて,今まで以上に深い理解が求められるようになった.また,小児期に修復術を終えた患者でも,成人になってから再度の手術介入を必要とすることは稀でなく,治療の至適タイミングを判断することが求められる.心エコー図法は成人期の先天性心疾患における形態学的診断ばかりでなく,病態の診断において,簡便でありながら,有用な情報を得ることが出来る最も基本かつ重要な画像診断である.本稿では,比較的遭遇する代表的な六つの疾患(心房中隔欠損症,心室中隔欠損症,房室中隔欠損症,修正大血管転位症,ファロー四徴症,Ebstein奇形)を取り上げ,主にその手術適応を検討する際に重要な超音波診断のポイントに焦点を当て,概説を試みた.
原著
  • 吉田 茉莉子, 入江 健夫, 稲川 天志, 山下 恵永, 高村 公裕, 山川 仁憲, 貞岡 亜加里, 成尾 孝一郎, 三枝 裕和, 宮本 幸 ...
    2011 年 38 巻 1 号 p. 13-17
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/01/25
    ジャーナル 認証あり
    目的:医原性仮性動脈瘤の従来からの治療法として外科的治療,超音波ガイド下プローブ圧迫法などが行われている.超音波下トロンビン注入療法は医原性仮性動脈瘤の治療成績がよく,1980年代後半より多くの報告がされてきた.今回我々は,超音波下少量トロンビン注入による仮性動脈瘤の塞栓効果につき検討した4症例について報告する.対象と方法:2005年6月から2008年12月までに,血管造影後に仮性動脈瘤を形成した4例を対象とした.塞栓方法は,超音波下に仮性動脈瘤内に23G針を穿刺後,カラードプラ法にて血流状態を確認しながらトロンビンを100単位ずつ注入した.カラードプラ法による血流表示が消失した時点でトロンビン注入を終了とした.結果:全例で良好な塞栓効果が得られた.使用したトロンビン量は,平均575単位であり,今回の4症例のうち3症例は少量でのトロンビン注入にて,仮性動脈瘤の治療に成功し,合併症は認められなかった.医原性仮性動脈瘤に対する超音波下トロンビン注入療法において,トロンビン使用量を比較的少量に抑えることによって,合併症の頻度を最小限にし得ること,また少量投与で十分な効果を得られることが示唆された.結論:医原性仮性動脈瘤に対する治療法として,超音波下トロンビン注入療法は塞栓効果をカラードプラ法にて確認でき,少量でも確実性が高く合併症,再発もなく有用であると考えられた.
症例報告
  • 福田 順子, 田中 幸子, 仲尾 美穂, 上田 絵理, 鈴木 玲子, 高倉 玲奈, 高野 保名, 井岡 達也, 吉岡 二三, 冨田 裕彦
    2011 年 38 巻 1 号 p. 19-24
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/01/25
    ジャーナル 認証あり
    膵粘液性嚢胞腫瘍(MCN)は比較的稀な疾患であり,長期にわたり経過観察された報告は少ない.今回5年間の経過中,画像上多彩な変化を認め,自然経過を知る上で興味深い症例を経験した.また,診断には超音波検査(US)時のボリュームデータから作製したvirtual sonographic cystoscopyが有用であった.症例は50歳代女性.既往歴に特記事項なし.左側腹部痛を訴えて受診し,初診時のUSで膵体尾部に24mm大の単房性嚢胞を指摘された.MRCPでは嚢胞の尾側の膵管拡張を認め,ERPでは嚢胞は造影され主膵管との交通が明らかとなった.上流側の主膵管は造影されず,小膵癌によるretention cystやIPMCを疑ったが,膵液細胞診は陰性であった.経過中の嚢胞径は概ね15-20mm大であったが,腹痛を伴う一過性の嚢胞径増大(26mm大)を認め,膵炎による仮性嚢胞の可能性も示唆された.5年後のUSでは隔壁を疑い,Sonazoid®造影3DUSでcyst in cystが明瞭に描出されMCNを疑った.3ヵ月後に嚢胞径は30mm大に増大,より細かいcyst in cystが描出された.また,virtual sonographic cystoscopyでは平滑な球状の内腔面とcyst in cystを立体画像で表示でき,画像上MCNと診断した.切除手術の結果,病理組織学的にMCNと確定診断された.本例は当初,主膵管と交通する単房性嚢胞として発見され,長期間の経過中に嚢胞径の増大やcyst in cystの出現という多彩な変化を来し,臨床的に診断の難しい症例であったが,最終的にはUSで画像上典型的なMCNの像を呈し,診断に有用であった.
今月の超音波像
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