超音波医学
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39 巻, 5 号
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総説
  • 山本 一博
    原稿種別: 第11回松尾賞受賞記念総説
    2012 年 39 巻 5 号 p. 515-523
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/26
    ジャーナル 認証あり
    左室機能は循環動態維持に重要な役割を果たし,この機能障害が心不全を招く.左室機能は収縮機能と拡張機能からなり,収縮機能が左室から大動脈への血液の駆出を司り,拡張機能が左房から左室への血液の流入を規定する.収縮機能障害が左室駆出率という簡便な指標で臨床的に評価可能であるのに対し,拡張機能障害の検出法は未だ確立していない.左室流入血流,肺静脈血流,僧帽弁輪部運動,左室や左房の形態と心周期内におけるそれらの動態などを記録して得られる幾つかの指標が拡張機能評価指標として提唱されている.しかし,多くのものは左室拡張機能障害に基づく二次的な左室充満圧上昇を検出する指標であり,拡張機能を直接評価し得ない.左室弛緩能,左室スティフネスを直接反映する指標も提唱されているが,まだ広く受け入れられているわけではない.さらに,各指標とも種々の限界を有しており,どのような患者にも用い得る信頼性の高い指標はない.したがって,拡張機能障害の検出においては,複数の指標を評価して総合的に判断せざるを得ないのが現状である.
症例報告
  • 橋本 あゆみ, 岡野 匡志, 杉岡 優子, 真本 建司, 多田 昌弘, 武田 節子, 髭野 泰博, 小池 達也
    2012 年 39 巻 5 号 p. 525-529
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/09/26
    ジャーナル 認証あり
    関節リウマチ(RA)治療に生物学的製剤が導入され,治療の目標である臨床的寛解状態を達成できる患者が増えてきている.さらに,臨床的寛解状態が維持された後に生物学的製剤を休薬することが可能な症例も出てきている.今回我々は抗腫瘍壊死因子抗体製剤であるアダリムマブ(ADA)投与患者において,臨床的寛解の後にADAが休薬可能であった症例と休薬後にRAの活動性が再燃した症例を1例ずつ経験し,その休薬前後での関節超音波検査所見を比較検討したので報告する.症例1は41歳の男性で,メトトレキサート(MTX)とADAの併用療法によって12ヵ月以上臨床的寛解状態が維持された後にADAを休薬した.休薬前の超音波検査では両手指・両手関節にパワードプラ(PD)シグナルは陰性であった.ADA休薬後も3ヵ月にわたって臨床的寛解状態が維持できている.症例2は33歳の女性でMTXとADAの併用療法によって症例1と同じく12ヵ月間臨床的寛解状態が維持された後にADAを休薬した.休薬前超音波検査では右手関節にPDシグナル陽性所見が認められた.ADA休薬後1ヵ月で全身の関節に疼痛と腫脹が再燃した.炎症反応の上昇も認められ,高疾患活動性となった.このことから,臨床的寛解状態においても関節超音波検査においてPD陽性滑膜が認められる場合は,生物学的製剤の休薬後にRAの活動性が再燃する可能性が示唆された.
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