目的:死因診断においてCTによるautopsy imaging が注目されているが,より簡便な検死時超音波検査autopsy ultrasonographyの有用性について急性大動脈解離(acute aortic dissection: AAD)の診断を通して検討した.
対象と方法:2007‐2010年の間,検死378件中,34例がAADと診断され,26例に携帯超音波装置を用いてautopsy ultrasonographyを施行した.超音波所見とともに,経過および診断過程をも検討した.
結果と考察:AAD件数は急増傾向にあり,年齢は70歳以上が77%と高齢者に多い.発症は失神・意識消失が18例,胸・背・肩・腹部の痛みが8例で,1例に嘔吐を伴った.23例が救急搬送され,22例が搬入時心肺停止,1例が救急室で死亡して検死となった.3例は搬送されずに直接検死された.2007‐2010年2月までの9例では,穿刺にて血性胸水と血性心膜液を確認した.2010年3月より胸骨上縁や胸骨右縁左縁からの観察を試み,上行大動脈・弓部の拡張,遊離した動脈壁など解離の直接所見を17例で確認できた.3例では経過とautopsy ultrasonographyの所見のみでAADと診断した.
結論:autopsy ultrasonographyはAADの死因診断に有用である.
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