超音波医学
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40 巻, 1 号
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原著
  • 出口 亜弥, 河野 浩之, 稲富 雄一郎, 山川 津恵子, 久木野 拓己, 山本 多美, 泉田 恵美, 志水 秋一, 米原 敏郎
    2013 年 40 巻 1 号 p. 3-9
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/01/22
    ジャーナル 認証あり
    目的:vertebral artery (VA) stump syndromeの報告例は少ない.本病態における頸部血管エコーの所見を検討した.対象と方法:対象は,2005年9月から2011年5月に当院に入院し,VA stump syndromeの診断に至った7症例(男性4例,平均58歳)である.頸部血管エコーを実施し,頭部MRA,3D-CT血管造影,脳血管造影の所見と比較した.結果:入院時の頸部血管エコーで, 7例中3例で可動性血栓による閉塞,1例で閉塞遠位部に浮遊する可動性血栓,1例で閉塞遠位部の血流うっ滞を認めた.VA椎体内の血流は4例で順行性であり,流速が低く収縮期の立ち上がりがなだらかなpost-stenotic patternを呈していた.残り3例は収縮期逆行性のto-and-fro patternであった.また,4例で側副血行路とその流入部位も確認できた.頭部MRAでは2例で椎骨脳底動脈系に明らかな血管病変は認めなかった.結論:頸部血管エコーは,VA起始部の閉塞部位の性状やVA椎体内の血流パターン,側副血行路を評価できるので,VA stump syndromeのスクリーニングに有用である.
症例報告
  • 上嶋 亮, 鈴木 健吾, 出雲 昌樹, 黄 世捷, 水越 慶, 高井 学, 立石 文子, 明石 嘉浩, 信岡 祐彦, 三宅 良彦
    2013 年 40 巻 1 号 p. 11-16
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/01/22
    ジャーナル 認証あり
    症例は50歳,女性.34歳時に全身性エリテマトーデスと診断され,ステロイド内服加療を受けていた.スクリーニング目的で施行した経胸壁心エコーで左室流出路に突出した僧帽弁前尖の腫瘤性病変を認めた.その後施行した3D経食道心エコーでも,左室流出路の約2/3程度を占める腫瘤が確認され,さらに左房側にも同様の小腫瘤の付着を認めた.ステロイド服用に伴う易感染状態であったが,感染兆候を示す所見はなく,複数回採取した血液培養も全て陰性.Duke診断基準を満たさず,感染性心内膜炎は否定的であった.形状や付着部位,SLEの臨床背景より非細菌性血栓性心内膜炎(nonbacterial thrombotic endocarditis: NBTE)が疑われた.頭部CTにて散在する陳旧性脳梗塞像を認め,その付着部位や可動性から重症塞栓の高リスクと判断し,準緊急的に腫瘤摘出術,僧帽弁置換術を施行した.腫瘍は肉眼的に多房性,軟であり,組織学的には好中球と組織球浸潤を伴うフィブリン血栓を認め,NBTEと診断した.術後経過良好で,新規塞栓症状の出現はなく術後第19病日に退院となった.NBTEは悪性腫瘍などに伴う過凝固状態や免疫複合体などによる内皮細胞損傷を背景に発症することが多いとされる.本症例は経食道心エコーを用いることでその局在や形状,付着部位を詳細評価し神経学的後遺症を残さず治療し得た1例であり,考察を加えて報告する.
  • 小倉 健, 増田 大介, 井元 章, 竹内 利寿, 井上 拓也, 時岡 聡, 栗栖 義賢, 内山 和久, 梅垣 英次, 樋口 和秀
    2013 年 40 巻 1 号 p. 17-23
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/01/22
    ジャーナル 認証あり
    今回我々は,endoscopic ultrasound-guided fine needle aspiration (EUS-FNA)下の嚢胞液分析が鑑別診断の一助になった稀な嚢胞状後腹膜リンパ管腫の1例を経験したので報告する.症例は40歳,男性.背部痛を主訴に近医を受診,精査の結果,膵嚢胞を指摘されたため,精査加療目的で当科に紹介入院となった.腹部造影CTでは,膵尾部,脾臓,左腎,胃に囲まれた部位に分葉状の造影効果のない嚢胞性病変が認められた.Magnetic resonance cholangiopancreatography (MRCP)では,嚢胞は多房性に描出されたが,主膵管の拡張はなく,主膵管との交通も判然としなかった.十二指腸内視鏡では,粘液の排泄は認められなかった.膵管造影では,粘液を疑う透亮像はなく,また,造影剤の注入圧を上げても嚢胞は描出されなかった.Endoscopic ultrasonography (EUS)では膵尾部に径80 mm大の,大小様々からなる多房性の嚢胞性病変が描出された.以上の画像所見から,intraductal papillary mucinous neoplasm (IPMN)は否定的であり,serous cystic neoplasm (SCN)や,膵仮性嚢胞との鑑別のために嚢胞に対しEUS-FNAを行った.嚢胞内容液は,黄色調であり,CEAは正常範囲内,アミラーゼも161IU/lと軽度高値を示すのみで,粘液性腫瘍や膵仮性嚢胞は否定的であった.有症状であったため,嚢胞摘出術を行った.病理組織学的検討では,腫瘍は大小様々な嚢胞から形成されており,嚢胞壁は,異型を伴わない一層の扁平な上皮からなり,平滑筋成分も認められ,嚢胞状リンパ管腫と診断された.
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