目的:妊娠中の胎児発育は推定体重によって評価されるが,母体の体型は考慮されず,小さい体型の母体では,見合った適正な発育であっても胎児発育遅延と診断されることがある.母体の体型が胎児推定体重にどの程度影響を与えるか知ることを目的として本研究を行った.
対象と方法:2005‐2010年に在胎28週以後に当院で分娩した症例の,在胎日数,出生体重,経産回数,性別,母体体重,母体身長および分娩直前に測定された胎児推定体重を診療録より後方視的に調査し,胎児推定体重との関連を検討し,重回帰分析を用いて母体体型による児体重推定式を作成した.
結果と考察:3,417例を検討した.在胎日数,性別,母体体重,母体身長は分娩直前に測定された胎児推定体重と関係する因子であった.また,推定体重に影響を与える因子の重回帰分析の結果,推定体重=-4,825+4.7×母体身長+5.7×母体妊娠前体重+24.2×在胎日数+62.5×性別(男子=1,女子=0)(標準偏差=0.7513×在胎日数+127.91)のモデルで表されることが分かった.
結論:児の予後との関連は別途に検討すべきであるが,胎児発育評価においては小さい母体では,分布が小さい方へシフトすることが明らかになった.本研究結果を用いて,母体体型を考慮した胎児発育の臨床評価を行い,今後の管理に役立てたい.
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