超音波医学
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40 巻, 5 号
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総説
  • 立花 克郎
    原稿種別: 第11回松尾賞受賞記念総説
    2013 年 40 巻 5 号 p. 463-471
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/25
    [早期公開] 公開日: 2013/07/03
    ジャーナル 認証あり
    近年,超音波と薬物を併用した新しい治療法に関する研究は飛躍的に進歩した.血栓溶解剤と超音波を併用する超音波治療用カテーテルは米国では既に臨床応用されている.超音波エネルギーは様々な生体組織で薬物の吸収・浸透を促進する働きがあることから,血管治療,再生医療,癌化学療法,薬物経皮吸収パッチなど,多くの分野へ広く利用される可能性がある.また,超音波造影剤(マイクロバブル)を超音波治療促進剤として利用すれば遺伝子の細胞内導入も可能である.今後,遺伝子治療など,様々な分野における超音波とマイクロバブルの組み合わせが期待される.マイクロバブルの崩壊を時間的,空間的に制御できることから各疾患に対する治療成績の向上,治療時間の短縮,薬物投与の減量,副作用の軽減につながると思われる.また,超音波分子標的造影剤(インテリジェント・マイクロバブル)の研究が進めば,Molecular ImagingとMolecular Therapyを同時にできる理想的な診断治療法になると予想される.
  • 林田 晃寛, 玉田 智子, 尾長谷 喜久子, 大倉 宏之, 吉田 清
    原稿種別: 第11回教育セッション(循環器)
    2013 年 40 巻 5 号 p. 473-483
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/25
    [早期公開] 公開日: 2013/06/05
    ジャーナル 認証あり
    大動脈弁狭窄症(aortic stenosis: AS)は,重症であれば即大動脈弁置換術の適応というわけではなく,低左心機能でない限り症状が出現してから手術適応となる.大動脈弁通過血流速度は予後と相関するため,大動脈弁狭窄症の重症度評価は,心エコー図法の連続波ドプラによる大動脈弁通過血流速度から求められた圧較差を中心に,プラニメトリ法や連続の式による大動脈弁口面積評価が行われる.大動脈弁通過血流速度から得られた圧較差と計測された大動脈弁口面積に差が生じるのは,計測誤差の場合と,心拍出量が増加しているか低下している場合である.計測誤差を最小限にするためには,大動脈弁通過血流の方向と水平に連続波ドプラを当てることが重要である.心拍出量が低下すると重症であっても,圧較差が大きくならない場合があり,low-flow, low-gradient ASと呼ばれ左心機能が低下している例と保たれている例がある.左心機能が低下している例では,ドブタミン負荷で心拍出量を増加させ,真の重症ASと偽性重症ASを鑑別する.左心機能が保たれている例は,重症ASを見逃す可能性もあり,近年注目されている疾患群である.
  • 皆川 洋至
    原稿種別: 第11回教育セッション(整形外科)
    2013 年 40 巻 5 号 p. 485-494
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/25
    [早期公開] 公開日: 2013/06/05
    ジャーナル 認証あり
    筋は,運動器構成体の中で唯一能動的に硬さを変えながら機能し,日常生活やスポーツ活動に大きく関わる組織である.整形外科臨床においては,筋の廃用性萎縮によって生じる転倒,オーバーユースを基盤に生じる肉ばなれ,腱断裂,腱炎,腱鞘炎,さらに筋による関節の衝撃干渉作用低下が引き起こす疲労骨折など様々な疾患の病態に深く関わる.筋の硬さを客観的に定量評価する臨床的意義は大きく,これまで触診,関節可動域,筋硬度計によって評価が試みられてきた.しかし,触診は客観性に乏しく,関節可動域は必ずしも筋の硬さを反映せず,筋硬度計は皮膚表面から深部全体の硬さしか表現できない欠点があった.一方,超音波エラストグラフィでは筋の硬さを客観的に可視化して表現できるため,近年様々な基礎研究,臨床応用が始まった.筋が極端に硬くなるコンパートメント症候群は,筋内圧の著しい上昇が引き起こす疾患であり,ときに重篤な後遺障害を残す.一般に針を直接筋へ刺入し内圧を測定して診断するが,超音波エラストグラフィでは非侵襲的に筋の硬さを評価でき,鍼治療や筋膜切離による除圧効果の確認,術後の経時的評価にも威力を発揮する.超音波エラストグラフィは,疾患の診断や病態把握,治療効果判定ばかりでなく,傷害の予防にも役立てる試みがなされている.
原著
  • 荒井 修, 東 隆, 川畑 健一, 村垣 善浩, 伊関 洋
    2013 年 40 巻 5 号 p. 495-506
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/25
    [早期公開] 公開日: 2013/07/12
    ジャーナル 認証あり
    目的:安全かつ確実な強力集束超音波(high-intensity focused ultrasound: HIFU)治療のために,事前に焦点位置を確認できる技術の開発が望まれている.本研究では,熱変性を引き起こさない低いエネルギーのHIFUパルスを照射し,音響放射力によって生じた変位を超音波で撮像して焦点を可視化する.対象と方法:照射終了から変位観察を行うまでの時間に関して,感度と正確度それぞれに最適な条件が異なる可能性がある.そこで,パルス照射終了から焦点撮像までの時間間隔を0.3 ms,0.8 ms,1.3 msとして変位画像を撮像し,描出された焦点領域を実際のHIFU照射による熱凝固領域と比較した.実験試料はブタ肝臓とした.結果と考察:どの条件でも十分な感度が得られることを確認した.一方,正確度については,0.3 msの撮像であれば,サイズ1.1 mm×3.6 mmのHIFU熱凝固領域を0.8 mmの正確度で予測できたが,撮影時刻が遅くなると,変位分布の変化により正確度と精度が低下することを確認した.この結果はせん断波の伝搬によって説明できた.焦点を正確に描出するためには,せん断波速度を考慮した条件設定で変位を撮像する必要があることが明らかになった.結論:焦点イメージングによって,術者は,熱凝固が起こる領域を事前に予測できるようになる.この技術は,HIFU照射のターゲティングの課題を克服するものであり,さらに超音波装置を使ったコンパクトなシステムなので,HIFU治療をより多くの医療機関,疾患へ普及させられる可能性を持っている.
今月の超音波像
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