目的:先天性左横隔膜ヘルニアにおける出生直前の超音波胎児肺胸郭断面積比(LT比)の短期予後予測因子としての有用性を検討した.
対象と方法:2005年9月から2012年3月の間に当院で管理した孤発性左横隔膜ヘルニア症例を対象に,診療録より後方視的に検討した.出生直前のLT比の値0.08未満と0.08以上で対象を2群に分け,重篤な合併症なき生存退院の割合,人工換気・酸素投与期間,パッチ必要例・手術不能例の割合を両群間で比較検討した.LT比0.08未満で予後不良を予測する場合の陽性適中率,陰性適中率を算出した.LT比と生後の人工換気・酸素投与日数の相関関係を評価した.
結果と考察:LT比<0.08群に12例,LT比≧0.08群に28例が分類,計40例の対象のうち重篤な合併症なき生存退院例は34例(85%)であった.合併症なき生存退院の割合は,LT比<0.08群で7/12(58%),LT≧0.08群で27/28(96%)であり,前者で有意に低かった.生存例における人工換気・酸素投与日数は前者で有意に長く,手術不能例・パッチ必要例は前者で有意に多かった.LT比0.08未満で予後不良例を予測する場合の陰性適中率は96%,陽性適中率は42%であった.出生直前のLT比と生後の人工換気・酸素投与日数に負の相関関係を認めた.
結論:出生直前のLT比は左横隔膜ヘルニア児の短期予後の予測因子として有用である.
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