序論:軽度の非致死的低浸透圧(146 mOsm)溶液により,低強度(0.08‐0.11 W/cm
2)の超音波が浮遊細胞の殺作用を増強することが示されている.
目的:本研究において,我々は浮遊細胞の低浸透圧誘導性細胞膨張が直接的に超音波を介した細胞殺作用に関係しているのかどうか,および同様の作用が循環する細胞または接着している細胞にも認められるかどうかを明らかにすることを目指した.
方法:軽度低浸透圧下にU937細胞を異なる時間にわたり超音波処理し,粒子径分布分析装置を用いてリアルタイムに細胞のサイズをモニターした.接着細胞に対する効果を検討するために,HeLa 細胞を
in vivoシミュレーション装置で低浸透圧下にて超音波処理した.
結果:細胞殺作用は低浸透圧誘発性の細胞膨張に直接比例して(最大2倍以上の)増強を認めた.PI染色より,同様の膜損傷が低浸透圧処理したHeLa細胞に認められた.
In vivoシミュレーション用循環システムでも同様の低浸透圧誘発性の超音波殺作用が認められた.
結論:これらの結果から軽度の低浸透圧は癌の治療,特に白血病の治療において超音波の作用を増強する可能性がある.このような作用の増強が細胞膨張に関係していることを示すこの結果は,今後の低浸透圧治療下の超音波処置の適切なタイミングを検討する上で有用と思われる.
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