超音波医学
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41 巻, 6 号
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特集「超音波を用いた腎・泌尿器科領域の各臓器血流測定とその意義」
  • 守屋 仁彦
    原稿種別: 超音波を用いた腎・泌尿器科領域の各臓器血流測定とその意義
    2014 年 41 巻 6 号 p. 801-810
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/11/14
    [早期公開] 公開日: 2014/09/02
    ジャーナル 認証あり
    急性陰嚢症は陰嚢内容の疼痛・腫脹を呈する様々な疾患の総称であるが,早急な処置を必要とする精索捻転が含まれており,診断が確定できない場合には緊急手術の適応となる.精索捻転の診断・除外にはこれまで核医学検査やMRIなどによる画像診断の有用性も報告されているが,近年では超音波検査が第一選択となっている.精索捻転の診断において,gray-scale modeの超音波検査とともにcolor Dopplerエコーによる精巣内の血流信号の同定はきわめて重要な情報である.当科の経験でも,約1/3は臨床所見と血流信号の存在から緊急手術を回避して保存的に加療を行い精巣の萎縮を認めなかった.しかしながら,精索捻転の2‐3割では血流信号が残存しており,血流信号のある症例でも精索捻転を否定はできない.診察所見の他,渦巻きサイン(whirlpool sign)や精巣周囲の血流増加などの画像にも気を配る必要がある.精巣内に血流信号を認めた症例であっても臨床所見から精索捻転の疑いが強い場合には,緊急手術を躊躇してはならない.たとえ精索捻転であっても術前に血流信号が確認された症例では捻転解除後の精巣の予後は比較的良好であると報告されており,血流信号は予後を反映する指標とも考え得る.しかしながら,超音波検査はoperator-dependentな検査であり,昼夜を問わず発症する急性陰嚢症症例の治療成績の向上のためには,高度なエコー技術を持ったoperatorの育成と救急医療に対応するためのシステム構築が望まれる.
  • 山本 徳則, 後藤 百万
    原稿種別: 超音波を用いた腎・泌尿器科領域の各臓器血流測定とその意義
    2014 年 41 巻 6 号 p. 811-818
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/11/14
    [早期公開] 公開日: 2014/09/02
    ジャーナル 認証あり
    腎・泌尿器科領域の各臓器血流測定を造影超音波検査を用いて微小循環の観点から述べる.超音波造影剤(Sonazoid®)は安定した剤型なので,長期間の腎・泌尿器科領域の各臓器の血流測定を可能にした.具体的に,腎機能評価,腫瘍質的診断そして前立腺肥大症の血流評価,前立腺癌の質的診断と広く応用されている.新しい腎機能評価,腎細胞癌の診断率向上そして新しい前立腺肥大症の評価,前立腺癌の診断率の向上に寄与することが期待される.
  • 和田 直樹, 柿崎 秀宏
    原稿種別: 超音波を用いた腎・泌尿器領域の各臓器血流測定とその意義
    2014 年 41 巻 6 号 p. 819-825
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/11/14
    [早期公開] 公開日: 2014/09/02
    ジャーナル 認証あり
    最近,ドプラ超音波法を用いた臨床研究により,下部尿路閉塞(bladder outlet obstruction: BOO)によって引き起こされる膀胱虚血が膀胱機能や下部尿路症状(lower urinary tract symptoms: LUTS)に与える影響について報告されつつある.Belenkyらは,BOOでは内腸骨動脈領域の血管抵抗(resistive index: RI)が高値であることを報告した.また,前立腺肥大症(benign prostatic hyperplasia: BPH)に対するα1遮断薬や経尿道的前立腺切除術(transurethral resection of the prostate: TURP)によって膀胱RIが改善し,さらにTURP後の排尿筋過活動の残存群においてRIが高値であることが報告されている.造影超音波検査を用いて行った我々の臨床研究では,(1)膀胱RIが前立腺腫大やBOOと相関すること,(2)TURPや5α還元酵素阻害薬投与によって膀胱RIは改善するが,これらの治療後の過活動膀胱の残存群では膀胱RIの改善が乏しいこと,(3)これらの治療後の膀胱RIの改善が乏しい群ではBOOの改善が乏しく,高血圧などの動脈硬化のリスクとなる全身疾患の罹患率が高いこと,が示されている.超音波技術の進歩に伴い簡便かつ正確な膀胱虚血の測定が可能になれば,膀胱虚血がLUTSに与える長期的な影響や,薬物治療もしくは外科的治療介入による膀胱虚血と膀胱機能障害の可逆性について解明されることが期待される.
  • 伊藤 寿樹, 新保 斉, 栗田 豊
    原稿種別: 超音波を用いた腎・泌尿器領域の各臓器血流測定とその意義
    2014 年 41 巻 6 号 p. 827-833
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/11/14
    [早期公開] 公開日: 2014/09/02
    ジャーナル 認証あり
    近年,高齢化時代の到来に伴い前立腺肥大症(benign prostatic hyperplasia: BPH)の診療機会が増えている.BPHはクオリティ・オブ・ライフ(quality of life: QOL)疾患との位置付けがなされているが,主たる病態の一つである膀胱出口部閉塞(bladder outlet obstruction: BOO)は,急性尿閉,腎機能障害,尿路感染症などを引き起こし生命予後にも関与するため,適切な診断と積極的な治療が必要である.BPHの診断において経直腸的超音波検査(transrectal ultrasonography: TRUS)は前立腺の形態的な評価に優れており非常に有用である.TRUSにより得られる前立腺の推定体積や膀胱内前立腺突出度(intravesical prostatic protrusion: IPP)はBOOの重症度を予測するパラメーターして有用である.また近年,ドプラ法によって得られる前立腺動脈被膜枝のResistive index(RI)がBOOの重症度と相関することがわかってきた.現在では一般的に,BOOの評価には内圧尿流検査(pressure-flow study: PFS)が最も正確な検査法と考えられているが,PFSは侵襲的な検査のため適応が制限される.今回の我々の検討では,PFSでBOOなしと判定された症例でのRIが0.66と低値であったのに対して,BOOのある症例では0.75と高値であった.また,RIからのBOOの有無について受信者操作特性(receiver operating characteristic: ROC)解析を行った結果,0.80と高値であった.BPHに起因したBOOの重症度評価においては,TRUSにRIの測定を組み合わせることによりさらなる診断能力の向上が期待できる.
原著
  • 本間 博, 大野 忠明, 時田 祐吉, 松崎 つや子, 藤本 啓志, 吉永 綾, 佐藤 丞子, 横島 友子, 伊藤 恵子, 水野 杏一
    2014 年 41 巻 6 号 p. 835-843
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/11/14
    [早期公開] 公開日: 2014/08/04
    ジャーナル 認証あり
    目的:本研究の目的は大動脈弁石灰化(aortic valve calcification: AVC)と胸部上行大動脈(thoracic ascending aorta: TAA)近位部の硬度上昇との関係を明らかにし,それらの左室(left ventricular: LV)機能および腎機能に対する影響を調べることである.方法:糖尿病32人,脂質異常症60人を含む計138人の高血圧患者をAVCの重症度に応じて4群に分けた.TAA近位部の弾性度を組織ドプライメージング法に基づいて計測したストレインレートの指標(最大ストレインレート値[SR(+)],最小SR値[SR(-)]およびQRSピークからTAA近位部SR(-)までの時間〔SRT〕)を分析した.結果:SR(+)およびSRTは中等度のAVCを有する患者で軽度のAVCを有する患者よりも有意に高値であった.SRTおよびSR(-)は年齢,大動脈弁位での最大血流速度,TAA壁の厚さ(IMC),左室拡張能および腎機能とよく相関した.SRTはIMC,脂質異常症および左室拡張機能と独立した相関を認めた.結論:AVCの重症度はTAA近位部の弾性度と相関が認められた.SR指標はAVCを有する患者においてTAAの硬度と左室機能および腎機能との関係を評価するのに有用である.
  • 神崎 智子, 畠 二郎, 今村 祐志, 眞部 紀明, 桶井 一秀, 楠 裕明, 鎌田 智有, 塩谷 昭子, 春間 賢
    2014 年 41 巻 6 号 p. 845-851
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/11/14
    [早期公開] 公開日: 2014/07/22
    ジャーナル 認証あり
    目的:腸管虚血における超音波造影剤Sonazoid®を用いた造影超音波の有用性を明らかにする.方法:対象は2007年3月から2009年2月の間に腹痛を訴え,かつ超音波Bモード上で2.5 cm 以上の腸管の拡張(n=40)または1分間に5回以下の蠕動の低下(n=13)を認めた53例,ならびに基礎疾患に心血管病変を有し,かつ説明困難なアシドーシスを呈することから腸管虚血が疑われた12例である(のべ65例,男性35例,女性30例,平均年齢70.4±16.1歳).Sonazoid®をワンショットで静注した後に,低音圧ハーモニックイメージングで再度観察し,腸管壁の染影態度を正常あるいは減弱に分類した.確定診断は手術(n=30),剖検(n=6),内視鏡検査(n=3),腹部血管造影検査(n=1),経過観察(n=25)により総合的に行った.結果:造影超音波上で腸管壁染影態度を正常と判断した50例全例を腸管虚血無しと最終診断した.染影態度を減弱と判断した15例のうち,14例で腸管虚血有りと最終診断した.感度は100%(95% 信頼区間(CI)80.7‐100%),特異度は98%(95% CI 89.5‐99.9%),陽性予測値は93%(95% CI 68.1‐99.8%),陰性予測値は100%(95% CI 94.1‐100%)であった.結論:超音波造影剤Sonazoid®を用いた造影超音波は,腸管虚血の診断において感度と特異度のきわめて高い画像診断法であり,臨床上有用である.
症例報告
  • 渡邊 伸英, 佐藤 寛大, 安達 知子, 伊藤 早希, 竹田 昌希, 菅森 峰, 遠藤 昭博, 高橋 伸幸, 吉冨 裕之, 田邊 一明
    2014 年 41 巻 6 号 p. 853-858
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/11/14
    [早期公開] 公開日: 2014/09/22
    ジャーナル 認証あり
    乳癌に対する化学療法として用いられるトラスツズマブ(trastuzumab: TRZ)は副作用に心筋障害が知られている.今回我々はTRZ投与中にたこつぼ型心筋症を発症した症例を経験したので報告する.症例は58歳,女性.200X‐2年11月に左乳癌と診断され乳房切除術を施行された.その後,術後補助化学療法を開始され,200X‐1年5月よりTRZが投与された.200X年8月,左室駆出率は38%と低下し,たこつぼ型心筋症様の壁運動異常を認めた.TRZを中止し経過観察したところ壁運動異常は改善した.TRZによる心筋障害は用量に依存せず,1‐4%に症候性心不全,10%に左室駆出率低下を認めるとされる.TRZ投与中にたこつぼ型心筋症を発症した症例はまれであり,報告する.
  • 柴田 有紀子, 竹元 伸之, 山田 順一, 白石 克子, 小池 淳子, 山本 宏
    2014 年 41 巻 6 号 p. 859-865
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/11/14
    [早期公開] 公開日: 2014/10/30
    ジャーナル 認証あり
    症例は35歳,男性.他院にて脾過誤腫疑いと診断され2005年より当院にて経過観察されていた.2010年1月,腹部膨満感と腹部圧迫感を主訴に受診.触診上腫瘤は触知せず圧痛も認めなかったが,超音波検査では脾臓に境界不明瞭で内部は低~等エコーの不均一な大小多数の腫瘤を認め,経年により腫瘤の数は増加傾向にあった.造影CT検査では,脾臓に早期相で内部が不均一な増強効果を示す多発性腫瘤を認めた.単純MRI検査のT1強調像では腫瘤は指摘できなかったが,T2強調像では低信号の腫瘤様像が存在するようにも観察された.フェルカルボトランを用いたSPIO (super paramagnetic iron oxide) MRI検査では腫瘤に取り込みが認められ,多発性脾過誤腫に合致した.有症状であったこと,腫瘤が増加傾向であったこと,患者の強い切除の希望があったことより手術の方針とし,2010年3月,開腹下脾臓摘出術を施行した.病理組織学的検査では術前検査同様,多発性赤脾髄型の過誤腫と診断された.多発性脾過誤腫は非常にまれであり,文献的考察を含めて報告する.
  • 鯨岡 結賀, 臺 勇一, 市岡 恵美香, 池田 達彦, 原 尚人
    2014 年 41 巻 6 号 p. 867-870
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/11/14
    [早期公開] 公開日: 2014/10/17
    ジャーナル 認証あり
    カラードプラ法でtwinkling artifactを呈した乳房コレステリン肉芽腫の1例を報告する.症例は45歳,女性.左乳房腫瘤を自覚して来院.超音波検査Bモード法で円形の境界明瞭平滑な低エコー腫瘤を認めた.カラードプラ法にて腫瘤の表層に複数のtwinkling artifactを認めた.マンモグラフィでは病変部に,微小円形石灰化を数個認めるのみであり,コレステリン結晶がtwinkling artifactの要因と推測された.Twinkling artifactを呈する乳房腫瘤ではコレステリン結晶の存在も考える必要があると思われる.
  • 山本 浩之, 貴田岡 正史, 森田 恒治, 相田 真介, 清水 誠一郎
    2014 年 41 巻 6 号 p. 871-875
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/11/14
    [早期公開] 公開日: 2014/10/14
    ジャーナル 認証あり
    症例は72歳,女性.尿路結石および胸椎圧迫骨折の既往があり,骨粗鬆症・Ca高値・P低値・iPTH高値の所見から原発性副甲状腺機能亢進症の疑いで当院紹介となった.Bモード断層像で甲状腺左葉前面に接する扁平な低エコー領域が存在し,power Doppler法で同部位に血流を認めた.3次元超音波法では冠状断面で長径16 mmの楕円形の低エコー領域として描出された.MIBIシンチグラフィーでは早期像で甲状腺に正常な集積があり,後期像で甲状腺左葉下部に結節状の集積残存がみられ,冠状断面像と形態が一致していた.他に異所性副甲状腺は認めず,手術により摘出し術後病理で副甲状腺であることが確認された.下副甲状腺は発生学的に頚部から縦隔にかけて広範囲に存在し得ることが知られているが,甲状腺前面に認めることはまれであり,病変の同定に3次元超音波法が有用であった.
  • 角田 聖, 小田 洋平, 光本 保英, 山田 千尋
    2014 年 41 巻 6 号 p. 877-882
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/11/14
    [早期公開] 公開日: 2014/09/11
    ジャーナル 認証あり
    症例は20年来の反復するめまい発作で近医にて内服治療を受けている70歳,女性.持続するめまいと嘔吐を主訴に当院救急外来を独歩で受診した.身体所見は特に異常なく耳鳴りや眼振は認めず,頭部MRI検査でも急性の脳血管障害は指摘されなかったが,めまい症状が強いため観察入院となった.めまいは炭酸水素ナトリウム点滴などで改善し,嘔吐も自然に軽快したが,原因検索目的に施行した腹部超音波検査で,下大静脈(inferior vena cava: IVC)と血流の交通がある長径45 mm,短径25 mmの静脈瘤を認めた.造影CT所見ではIVCの閉塞は伴わない肝後面/腎静脈頭側の嚢状瘤であり,内部に血栓を認めず,肺動脈血栓塞栓症も認めなかった.IVC造影では瘤内造影剤のwash out遅延を認め,内部に一部隔壁を伴っていた.3次元エコーにて仮想血管内視鏡画像を作成し,IVC内および瘤内の視点で立体的に連続性を確認した.3次元エコーは2次元で得られた画質に依存することに留意し,血管壁の質感や細部の構造が実際に則しているか他の画像診断と比較検討する必要はあるが,血管内異常構造物の直観的な把握に有用な手法であると思われた.血栓塞栓症の既往がないため,抗血小板薬内服で経過観察の方針とした.
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