超音波医学
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42 巻, 3 号
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総説
  • 岡庭 信司, 石井 重登, 岩下 和広
    原稿種別: 第13回教育セッション(消化器)
    2015 年 42 巻 3 号 p. 329-336
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/05/21
    [早期公開] 公開日: 2015/04/02
    ジャーナル 認証あり
    胆道感染症は腹痛,黄疸,発熱といったCharcotの3徴を特徴とする比較的頻度の高い腹部感染症であり,早期に適切な対処を行わないと敗血症のような重症感染症を併発し死に至ることもある.一方,超音波検査は簡易で低侵襲な検査であるため救急患者の診断にも広く用いられており,急性胆管炎・胆嚢炎ガイドライン2013でも胆道感染症が疑われる全ての症例に対して初診時にまず超音波検査を行うべきとしている.急性胆嚢炎の診断には,胆嚢腫大,胆嚢壁肥厚,結石,デブリエコー,sonographic Murphy’s signが有用である.一方,急性胆管炎には特異的な画像所見はないが,Charcotの3徴と胆道系酵素や炎症反応の上昇に加え,超音波検査にて胆管拡張あるいは結石や腫瘍といった閉塞機転が指摘されれば急性胆管炎の診断が可能である.今回は,急性胆嚢炎と胆管炎の超音波所見と胆嚢炎の重症度判定に加え,急性胆嚢炎の患者が短時間に増悪する病態である胆嚢捻転,気腫性胆嚢炎,壊疽性胆嚢炎,胆嚢穿孔について解説する.
原著
  • 伝法 秀幸, 斎藤 聡, 窪田 幸一, 宇賀神 陽子, 竹内 和男, 井上 雅文
    2015 年 42 巻 3 号 p. 337-345
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/05/21
    [早期公開] 公開日: 2015/04/07
    ジャーナル 認証あり
    目的:近年の機器の進歩により,脂肪肝における各Bモード所見の出現頻度が変化している.また,non alcoholic fatty liver disease activity score(NAS)では組織脂肪化を5%以上と分類しているため,Bモードでの各脂肪化所見に関して,NASの脂肪化分類に準拠し検討を行った.対象と方法:肝組織診断と超音波検査を施行した75症例.東芝製Aplio XGを使用しBモードの脂肪化所見である肝腎コントラスト,bright liver, 深部減衰の増強,脈管不明瞭化に加え限局性低脂肪化域の出現頻度とNASの脂肪化分類を比較検討した.結果:NASとUS脂肪肝の比較;肝腎コントラストおよびbright liverの両方を認める例,ないしはそれらの所見が軽微な場合,限局性低脂肪化域を併せて認める例をUS脂肪肝とすると,NAS脂肪化分類のGrade0/1/2/3(S0‐3)では0%/52%/100%/100%がUS脂肪肝となった.また,5‐33%の軽度脂肪化例では組織脂肪化を5‐10%/11‐20%/21‐33%に細分類すると,21%/88%/100%がUS脂肪肝となった.Bモードでの各脂肪化所見の有無;高度脂肪肝の所見である深部減衰の増強はS2:10%/S3:75%,脈管不明瞭化はS2:0%/S3:38%に認められ,限局性低脂肪化域はS1/2/3では32%/70%/88%と高度になるにつれ認められた.まとめ:機器の進歩により深部減衰の増強と脈管不明瞭化の出現頻度は減少した.また,bright liver,肝腎コントラストはもちろんのこと,限局性低脂肪化域の所見も重要であり,10%程度の軽度脂肪化から指摘可能と考えられた.
  • 青木 弘子, 市塚 清健, 市原 三義, 松岡 隆, 長谷川 潤一, 岡井 崇, 梅村 晋一郎
    2015 年 42 巻 3 号 p. 347-351
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/05/21
    [早期公開] 公開日: 2015/03/20
    ジャーナル 認証あり
    目的:胎児閉塞性尿路疾患の外科的シャント留置術に代わる胎児治療として,強出力集束超音波(high-intensity focused ultrasound: HIFU)を用いて,下部尿路閉塞の胎児膀胱に瘻孔を形成することが可能かどうかを検討する目的で動物実験を行った.材料と方法:イメージング用プローブとHIFUトランスデューサを一体化させた治療器を作成し本実験に用いた.巨大膀胱の新生仔兎モデルを作成し,HIFU照射は脱気水で満たされた水槽内で行い,動物実験モデルの巨大膀胱により膨隆した下腹部にHIFUを照射した.照射した瘻孔部位は組織学的検討を行った.結果:5,500 W/cm2の超音波強度においてHIFU照射後60秒以内に膀胱皮膚瘻が下腹部に形成され,瘻孔から尿が噴出することを確認した.組織学的検討では瘻孔周囲の組織には損傷はみられなかった.結論:脱気水で満たされた水槽内での動物実験モデルではあるが,HIFU照射により母獣の腹壁,子宮に侵襲を与えることなく非観血的手技により胎児人工瘻孔を形成できる可能性が示唆された.
症例報告
  • 村上 孟司, 日高 庸博, 城戸 咲, 福嶋 恒太郎, 永田 公二, 田口 智章, 加藤 聖子
    2015 年 42 巻 3 号 p. 353-358
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/05/21
    [早期公開] 公開日: 2015/04/07
    ジャーナル 認証あり
    先天性横隔膜ヘルニア胎児の肺低形成を超音波で評価するにあたって,肺胸郭断面積比(lung-to-thorax transverse ratio: LTR)や肺断面積児頭周囲長比(lung area to head circumference ratio: LHR)が用いられるが,これらの指標は健側肺がターゲットであり,患側肺は考慮しない.今回,胎児期に左横隔膜ヘルニアと診断,LTRやLHRは低値でなかったにもかかわらず,生後に重篤な経過をたどり,手術時に左肺の無形成が判明,救命できなかった症例を経験した.症例は33歳の初産婦,胎児胃像の胸腔内脱出を指摘され妊娠28週で当科紹介された.胎児超音波検査で左横隔膜ヘルニアと診断,同時にファロー四徴症の合併を指摘した.主肺動脈には順行性血流が観察された.胎児左胸腔に胃と肝左葉を認め,LTR 0.17,LHRのo/e比は51%,胃の位置Grade1(Kitano)であり,重症な肺低形成を示唆しなかった.妊娠36週に胎児機能不全の診断で緊急帝王切開術を施行した.児は2,056 gの男児で,Apgar score は1/7点であった.外表異常として左拇指欠損,両耳介欠損を認めた.2生日で手術が行われ,左肺は完全欠損の状態であった.術後は体外式膜型人工肺により生命維持を行ったが離脱できることなく,肺高血圧は進行し,15生日に死亡した.本児の予後が不良であった原因として心疾患の合併は重要な因子であったが,術後に膨らむべき肺が完全欠損していたことの影響も小さくないと考えられた.横隔膜ヘルニア胎児の画像評価では,健側肺のみならず患側肺にも注目することの意義を再認識した.
  • 森本 由紀子, 平井 都始子, 伊藤 高広, 丸上 永晃, 山下 奈美子, 豊國 美鈴, 杉井 公美, 齊藤 弥穂, 大石 元
    2015 年 42 巻 3 号 p. 359-364
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/05/21
    [早期公開] 公開日: 2015/03/20
    ジャーナル 認証あり
    超音波検査で観察できた2 cm以下の下咽頭癌2例を経験した.正常下咽頭超音波像と経験症例の超音波像について報告する.超音波では頸部正中やや外側の横断走査,ほぼ頸動脈分岐部レベルで,甲状軟骨後方に喉頭が描出され,隣接する喉頭蓋ヒダを隔てて,内腔に空気を有する梨状陥凹の前外側壁が観察できる.症例1,症例2ともに70歳代男性,内視鏡検査で左梨状陥凹に2 cm以下の腫瘍を指摘され,頸部リンパ節転移検索のため超音波検査を施行した.いずれの病変も超音波で左梨状陥凹内腔を占める低エコー腫瘤として描出され,カラードプラ法では喉頭蓋ヒダから腫瘤内部に流入する豊富なカラー表示が認められた.下咽頭癌は初発症状に乏しく,リンパ節転移を契機に進行癌で発見されることが多く,発生部位は梨状陥凹が60‐70%と最も多い.今回経験した2症例は梨状陥凹の2 cm以下の病変であったが超音波検査で明瞭に描出可能であった.頸部超音波検査の際に,特に高齢男性,アルコール多飲や喫煙歴を持つハイリスクの症例には,梨状陥凹の観察を心掛けることが,下咽頭癌の早期発見につながる可能性がある.
今月の超音波像
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