超音波医学
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42 巻, 4 号
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総説
  • 嶺 喜隆, 久我 衣津紀
    原稿種別: (第13回教育セッション)(基礎)
    2015 年 42 巻 4 号 p. 435-444
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/30
    [早期公開] 公開日: 2015/05/11
    ジャーナル 認証あり
    近年,3次元超音波技術が発展し,リアルタイムに3次元超音波画像が表示できる超音波診断装置が開発されている.機械揺動式電子プローブや2次元アレイプローブで収集された3次元画像データはリサンプリングされ ,3次元データに再構成される.超音波の3次元データを利用した3次元表示法の原理と効果を解説する.3次元表示法は,任意断面表示法としてMPR (multi-planar reconstruction/reformation)法と,3次元画像を2次元面上に立体的にみえるように投影表示するレンダリング法の2種類がある.レンダリング法では,超音波データに適したボリュームレンダリング法が利用されている.ボリュームレンダリング法には,半透明表示法とMIP (maximum intensity projection)法がある.半透明表示法で導入される不透明度(opacity)の概念と画質を調整するオパシティーカーブについて説明する.レンダリング法はドプラモードとの組み合わせや透視投影法の導入により,診断目的に合わせて多様な観察が可能になっている.大域照明がフォトンマッピング技術で実用化され,照明の位置や間接光の効果がシミュレートされた写実性の高い3次元表示が可能になっている.よりよい画質で3次元画像を得るためには,第一に,よりよい条件でデータを収集することが重要である.ボリュームレンダリング像の表示では,閾値や透明度,画像を平滑化するフィルター設定が画質に影響する.目的に合わせた表示法の選択と画質条件の設定が大切である.
  • 富松 宏文
    原稿種別: (第13回教育セッション)(循環器)
    2015 年 42 巻 4 号 p. 445-456
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/30
    [早期公開] 公開日: 2015/04/20
    ジャーナル 認証あり
    循環器疾患の診療において心エコー検査は非侵襲的に多くの情報を得ることができるものであり,欠くことのできない検査である.一方,先天性心疾患(congenital heart disease: CHD)に対する心臓手術成績は飛躍的に向上し多くのCHD患者が成人期に達するようになり成人CHD患者(adult congenital heart disease: ACHD)は既に40万人に達している.これら多くのACHDが,生活習慣病や妊娠および心臓機能障害などに直面する機会も増加しつつある.しかし,ACHDの内科的診療に携わる可能性のある小児循環器科医は少ない.したがって,ACHDの心エコー検査の知識は内科医・検査技師にとっても必要なものである.ACHDでは複雑な心形態を示すことが多いうえに,音響窓の制限が多いため心エコー検査だけではその心形態を正確に評価することが困難なことがある.しかし,区分診断法を用いてその基本形態を評価するとともに,その状態ごとに問題点を整理把握して検査を進めることにより病態を把握することは可能である.ACHDの心エコー検査では原疾患の形態的特徴に加え,自然歴,手術術式,術後歴(合併症,残遺症,続発症)などの知識を整理しておくことが重要である.
  • 新居 正基
    原稿種別: 第13回教育セッション(小児科)
    2015 年 42 巻 4 号 p. 457-473
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/30
    [早期公開] 公開日: 2015/05/07
    ジャーナル 認証あり
    胎児心エコーの進歩は,先天性心疾患を持つ胎児の周産期治療を大きく変貌させた.また,出生前における両親への疾患に関する正確な情報の提供やカウンセリングは,疾患を持って生まれてくる子供の受け入れについて,両親に時間的猶予を与えることを可能とした.また,本邦で既に高度先進医療として始まっている,双胎間輸血症候群,胎児胸水,または,胎児不整脈に対する胎児治療は,胎児診断なくしては成立しない.本総説では,胎児心特有の血行動態についても触れるとともに,segmental approachに沿った先天性心疾患のスクリーニングの手順について概説を行った.
特集「肝臓の組織進展度診断:エラストグラフィ up-to date」
  • 斎藤 聡, 伝法 秀幸
    原稿種別: 肝臓の組織進展度診断:エラストグラフィ up-to date
    2015 年 42 巻 4 号 p. 477-485
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/30
    [早期公開] 公開日: 2015/02/20
    ジャーナル 認証あり
    Transient elastography(TE)は装置のプローブから発するせん断弾性波の肝臓内の伝播速度を計測し,肝硬度を求める装置である.肝硬度は肝線維化を反映するため,線維化評価に関して,侵襲性の高い肝生検の代替え検査として使用可能である.使用装置はフィブロスキャン®(FibroScan)である.世界中で数多く使用され,我国でも肝硬変の診断に関して保険承認がなされている.線維化評価の中でも,肝硬変の診断能は高く,C型肝疾患における肝硬変の鑑別能はAUROC(area under the receiver operating characteristic curve)がおおむね0.9以上である.原疾患毎に肝硬度のカットオフ値は異なるものの,それぞれ肝硬変の検出には高い診断能を有する.TEによる肝硬度は線維化をよく反映するが,それ以外では炎症(急性肝炎など),うっ血,胆道内圧上昇,アミロイド沈着などの影響を受けるとされている.従来,超音波検査は定性的かつ主観的な検査であり,個々の検者の技量に依存するところが大きかった.一方,TEは一定の方法通りに行えば,定量的かつ客観的な検査方法となる.
  • 藤本 研治, 東 哲明, 山田 幸則, 山本 佳司, 加藤 道夫
    原稿種別: 肝臓の組織進展度診断:エラストグラフィ up-to date
    2015 年 42 巻 4 号 p. 487-504
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/30
    [早期公開] 公開日: 2015/04/10
    ジャーナル 認証あり
    びまん性肝疾患の長期予後において,肝発癌リスクの評価として肝線維化の診断や治療による肝線維化の改善の評価,予測をすることは非常に重要である.肝線維化の評価は肝生検組織診断がゴールドスタンダードとされるが,侵襲的であるため繰り返し評価が困難であることや,サンプリングエラーなどの理由により,肝生検に代わる非侵襲的かつ正確な肝線維化評価法が望まれている.これまでに血小板数や肝線維化マーカーの測定,血液検査を基にした肝線維化計算式などが試みられてきた.また,超音波を用いた肝線維化評価法も開発され,その有用性が報告されつつある.Real-time tissue elastography(RTE)は日本で開発,市販の診断装置に搭載された技術で,生体内の組織ひずみを高速演算する手法であるcombined autocorrelation method(CAM)を用いて,リアルタイムで組織の相対的な硬さ情報をカラー表示するものである.肝線維化の評価においてRTEは非侵襲的かつ簡便に計測可能である.RTE画像から得られた特徴量や様々な肝線維化stage評価法と肝線維化との関係が報告されたが,RTEは炎症や胆汁うっ滞および脂肪沈着の影響を受けることなく線維化を良好に反映した.また,治療による肝線維化の改善を経時的に評価可能であった.
  • 黒田 英克, 柿坂 啓介, 及川 隆喜, 小野寺 美緒, 滝川 康裕
    原稿種別: 肝臓の組織進展度診断:エラストグラフィ up-to date
    2014 年 42 巻 4 号 p. 505-516
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/07/30
    [早期公開] 公開日: 2014/10/14
    ジャーナル 認証あり
    急性肝炎において肝硬度が上昇するという報告が散見される.肝細胞壊死と炎症に起因すると推測されるが,未だ不明瞭な点も多いのが現状である.本稿では,急性肝炎におけるVTQ(virtual touch quantification)を用いた肝の剪断弾性波伝播速度(velocity of shear wave: Vs)測定の有用性を検討するとともに,肝硬度と病理所見との対比を中心に基礎的検討を行ったので報告する.急性肝疾患51例の入院時Vsの平均値±標準偏差は,急性肝炎:2.03 ± 0.55 m/s,急性肝炎重症型:2.54 ± 0.56 m/s,劇症肝炎:3.65 ± 0.86 m/sで,重症度に伴い有意に高値を示した(p < 0.001).劇症化予知に関するVTQのAUCは0.893で,cut off値を3.14 m/sとすると感度80.0%,特異度93.5%であった.生存例ではVsの有意な経時的低下を認めた(p = 0.003).D-galactosamine投与ラット肝障害モデルを用い,肝硬度と炎症や壊死の程度とを比較すると,肝障害度別のVsは,G0: 1.07 ± 0.05 m/s,G1: 1.27 ± 0.09 m/s,G2: 1.54 ± 0.23 m/s,G3: 1.99 ± 0.16 m/sで,病理変化に伴いVsの有意な上昇を認めた(p < 0.01).急性肝炎では肝細胞壊死と炎症の影響でVsが上昇する.Vsは重症度や病態を反映する予後予測指標で,経時的計測からより正確に予後推定が可能であり,移植適応判定にも応用できる可能性が示唆された.
  • 玉城 信治, 土谷 薫, 安井 豊, 泉 並木
    原稿種別: 肝臓の組織進展度診断:エラストグラフィ up-to date
    2015 年 42 巻 4 号 p. 517-524
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/30
    [早期公開] 公開日: 2015/04/10
    ジャーナル 認証あり
    肝実質のスペックルシグナルは内部が均一であると仮定した場合には,エコー信号の確率密度分布(probability density function: PDF)はレイリー分布に近似されることが知られている.肝病態の進展によって線維や脂肪などの構造物が増加するとPDFはレイリー分布から逸脱することとなる.Acoustic structure quantification(ASQ)はこのレイリー分布からの逸脱度を定量化する手法である.すなわちASQは肝実質エコーの粗雑さを定量化する手法であり,肝線維化や肝脂肪化診断における有用性が報告されている.レイリー分布からの逸脱度はROI内の分散の平均とレイリー分布の分散値の比(Cm2)で計算される.肝線維化との関連を検討すると線維化の進行に従いCm2が有意に上昇する相関関係が報告されている.また,肝脂肪化診断において,ASQの手法を用いた肝局所の不均一性を評価するパラメータ(focal disturbance-ratio: FD-ratio)の有用性が報告されており,肝脂肪の増加によりFD-ratioが低下し,脂肪化診断に有用であると報告されている.肝臓の硬さを定量評価するelastographyとは異なり,ASQは肝実質の粗雑さを定量化する手法であり,びまん性肝疾患を定量化する新たな手法として今後さらなる発展を遂げることが期待される.
  • 和久井 紀貴, 松清 靖, 住野 泰清
    原稿種別: 肝臓の組織進展度診断:エラストグラフィ up-to date
    2015 年 42 巻 4 号 p. 525-532
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/30
    [早期公開] 公開日: 2015/02/06
    ジャーナル 認証あり
    肝臓は他の臓器と異なり,門脈と肝動脈という2つの血管から血液が供給されている.その流入血液量の割合は約7‐8割が門脈由来で肝細胞に栄養や様々な物質を供給し,約2‐3割が肝動脈由来で主に胆道系の栄養を司っている.動脈圧が100 mmHg以上であるのに対し,門脈圧は6‐8 mmHgときわめて低圧であるがゆえに肝病変の影響を受けやすい.肝臓はこのような2本の供給血管で賄われているが,例えばC型肝炎ウイルスに罹患すると,肝細胞の壊死・脱落・線維化を繰り返し,慢性肝炎から肝硬変へと病期が進展するに従い,門脈血流は低下し,それを補うが如く肝動脈血流が増加する.すなわち,門脈と肝動脈の肝血流バランスは病期進行に従い門脈優位から肝動脈優位へと変化するわけである.その肝血流バランスの変化を画像診断で定量的に評価が可能であれば,C型慢性肝疾患の病変進展度合いを非侵襲的に把握ができ,インターフェロン治療開始時期や合併症発現などの推測ができるため臨床的に役に立つ.筆者らはこれら肝栄養血流の動態を造影超音波(arrival-time parametric imagingingなど)で解析し,肝疾患の病態理解に役立てているため,その最新事情につき紹介する.
原著
  • 塩屋 晋吾, 平賀 真雄, 橋口 正史, 川村 健人, 大久保 友紀, 林 尚美, 佐々木 崇, 坂口 右己, 中村 克也, 重田 浩一朗
    2015 年 42 巻 4 号 p. 533-540
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/30
    [早期公開] 公開日: 2015/05/07
    ジャーナル 認証あり
    目的:慢性肝疾患で最も初期に起こる形態変化として肝左葉内側区域(S4)の萎縮が報告されている.Bモード画像によりC型慢性肝炎患者のS4の萎縮を評価し,FibroScan®(以下,FS)による肝線維化指標との比較を行った.対象と方法:対象はC型慢性肝疾患で腹部超音波検査とFSを同日に施行した52例.S4形態は,門脈左枝横行部‐S4辺縁間距離(以下,S4距離)で評価した.肝線維化は,FSのStiffnessの中央値をgold standardとして判断した.S4距離とStiffness,各血液検査データ,脾腫との相関を検討した.結果:S4距離をFSにおける肝線維化staging毎に評価するとF0,F1,F2,F3,F4では平均4.0 mm,4.2 mm,7.6 mm,7.9 mm,9.5 mmと長くなり,F0とF2・F3・F4間,F1とF2・F3・F4間に有意差を認めた.Cut off値を5.6 mmとするとF2以上はsensitivity 91.3%,specificity 80.0%で区別できた.S4距離と各血液検査データとの間に相関を認めた.脾腫との間には相関は認めなかった.結語:S4距離での肝線維化評価は,簡易的かつ客観的肝線維化stagingの新しい評価法の1つとなり得ることが示唆された.特に,F1以下とF2以上を高率に検出できる点で臨床的に有用な手段と考える.
症例報告
  • 田端 強志, 中神 美奈, 稲岡 努, 益原 大志, 本村 昇, 徳山 宣, 蛭田 啓之, 東丸 貴信
    2015 年 42 巻 4 号 p. 541-549
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/30
    [早期公開] 公開日: 2015/05/07
    ジャーナル 認証あり
    膝窩動脈外膜嚢腫は動脈の外膜に発生した嚢腫の圧排により血管内腔が分節的に狭窄や閉塞を来たし,下肢が虚血症状を呈する非動脈硬化性の末梢動脈疾患である.今回我々は,当院で経験した膝窩動脈外膜嚢腫の2症例を報告する.【症例1】56歳,男性.急激な右下肢の間欠性跛行が出現,増悪したため近医を受診した.右ABI値が1.10から0.58と3ヵ月間で急激な悪化を認めたため当院を紹介受診.超音波検査で右膝窩動脈に隣接した嚢胞性腫瘤を認め,動脈内腔を高度に狭窄していた.CT検査やMRI検査でも同様の所見であり膝窩動脈外膜嚢腫と診断した.手術を検討していたが4週間後,突然症状は消失した.超音波検査で症状悪化時に認めた嚢腫は消失し,経過観察する方針となった.【症例2】52歳,男性.右下肢の間欠性跛行で当院を受診.左右ABI値は正常値であった.超音波検査で右膝窩動脈に隣接して嚢胞性腫瘤を多数認め,動脈内腔は圧排され狭小化されているようにみえた.下肢MRI検査では右膝窩動脈周囲に縦長の構造物を認め,同部で膝窩動脈が圧排されていた.膝窩動脈外膜嚢腫と診断し,膝窩動脈切除と大伏在静脈を用いた自家静脈移植術を施行した.術後間欠性跛行は消失し,現在まで再発所見は認めていない.
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