超音波医学
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43 巻, 3 号
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総説
  • 長谷川 英之
    原稿種別: (第14回教育セッション)(基礎)
    2016 年 43 巻 3 号 p. 411-415
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/05/16
    [早期公開] 公開日: 2016/03/25
    ジャーナル 認証あり
    現在,超音波ドプラ法は血流計測から組織運動計測まで幅広く利用されており,臨床診断に必要不可欠な技術となっている.連続波ドプラ法は空間分解能を有さない反面,速度の測定可能上限がないため,心臓弁狭窄により発生する高速流などの測定に用いられる.血流計測においては,血球からの超音波散乱波の振幅が,心臓壁などの低速な組織からの散乱波に比べ非常に小さいことから,血球と組織の移動速度の差を利用して組織からのエコーを抑圧するクラッタフィルタが必要となる.パルスドプラ法はパルス状超音波を用いているため空間分解能を有し,レンジゲートで指定した位置のドプラスペクトルから血流情報を得ることができる一方,計測可能な速度の上限値が存在する.その上限を決定するエイリアシング現象についても説明する.カラードプラ法は自己相関法を用いて対象の速度を推定する手法であり,2次元もしくは3次元の速度分布を得ることができる.本稿では,ドプラ法の原理と,それを応用した基本的な測定法について概説する.
  • 中西 弘毅, 福田 祥大, 尾辻 豊
    原稿種別: (第14回教育セッション)(循環器)
    2016 年 43 巻 3 号 p. 417-426
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/05/16
    [早期公開] 公開日: 2016/02/22
    ジャーナル 認証あり
    ストレイン心エコー図法は心臓の局所および全体の機能を客観的,定量的に評価する方法として急速な発展を遂げてきた.ストレインは組織ドプラ法または,二次元スペックルトラッキング法によって得ることができる.ストレインエコーに基づく定量的評価は,虚血性心疾患,心室内同期不全,各種心筋症や拡張機能障害,さらに弁膜症による心筋障害の病態解明に大きな役割を果たしてきた.またストレインエコーは化学療法に伴う早期の心筋障害の検出にも利用されている.さらにストレインエコーは左室のみならず右室や左房にも応用され,近年では技術の進歩に伴い三次元スペックルトラッキング法が出現した.しかし,ストレインエコーの結果に基づいた臨床判断が心疾患の患者の予後を改善させるか否かは十分な検討がなされておらず,今後の臨床研究が必要である.ストレインエコーは現在もなお発展途上であり,その長所・短所を十分に理解したうえで使用すれば,我々の日常臨床において,重要な役割を果たす可能性がある.
  • 小林 薫
    原稿種別: (第14回教育セッション)(甲状腺)
    2016 年 43 巻 3 号 p. 427-434
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/05/16
    [早期公開] 公開日: 2016/04/04
    ジャーナル 認証あり
    甲状腺の偶発腫瘤(腫瘍)の発見が増加しつつある.有病率がかなり高いものであり,超音波,CT,MR,PET検査,胸部レントゲン撮影,頸動脈エコーの施行時に甲状腺の腫瘍が偶発的にみつかっている.甲状腺腫瘤に対して良性悪性の鑑別が最重要であり,超音波診断基準を適用して超音波の診断を行う.次に細胞診施行の適応を考慮する.超音波診断において,良性でかつ小さい結節は細胞診を省略して,そのまま経過観察にする.それ以外は細胞診を施行する.その上で手術か経過観察かを決定する.超音波検査では悪性腫瘍,とくに乳頭癌を見逃さないことが重要である.乳頭癌の大部分は典型的画像を示すので診断は容易である.乳頭癌と診断されるときは頸部リンパ節転移の検出が必要である.微小乳頭癌がみつかる機会が増えている.それを高リスクと低リスクに分類し,低リスクの微小乳頭癌は手術を行わず経過観察を推奨しており,その結果は十分に満足できるものである.良性腫瘍の大部分は手術を行わず経過観察にする.一部に手術適応がありうる.一般病院の対応としてはどの時点で専門の施設に紹介するべきかを決定する必要がある.
  • 鈴木 昭広, 野村 岳志
    原稿種別: (第14回教育セッション)(救急)
    2016 年 43 巻 3 号 p. 435-440
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/05/16
    [早期公開] 公開日: 2016/03/25
    ジャーナル 認証あり
    近年,迅速に病態を把握し,診療の方向性決定に役立てるpoint of care超音波に世界的な注目が集まっている.筆者らは気道・呼吸・循環・中枢神経異常や深部静脈血栓などの生理学的異常に介入できる超音波テクニックをABCD sonographyと名付けて教育的活動を行っている.本稿ではその概要をABCD・・の順に紹介する.
特集「産婦人科超音波の新技術」
  • 木戸 浩一郎, Barbera Antonio, 梁 栄治, 綾部 琢哉
    原稿種別: 産婦人科超音波の新技術
    2016 年 43 巻 3 号 p. 443-455
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/05/16
    [早期公開] 公開日: 2016/03/14
    ジャーナル 認証あり
    経会陰超音波は,会陰部に超音波の探触子(プローブ)をあてて,体腔内を観察する超音波検査手法である.1970‐80年代から泌尿器科領域で利用されていた手法であるが,近年,産婦人科領域でも活用されつつある.本法は肛門括約筋を含む骨盤底や,経腟分娩時に産道を下降する胎児の児頭,の描出に優れており尿失禁,分娩進行,産褥の肛門括約筋の損傷,などの評価に利用されつつある.超音波検査という特性上,診察室,陣痛室,分娩室で非侵襲的に簡便に施行可能で,動画を含めて画像という形で保存可能なため,単に静的・形態的面だけではなく動的・機能的の評価を客観に行える.骨盤底を明瞭に描出することで,尿道過運動・内因性括約筋不全を評価することが可能で,女性に多い腹圧性尿失禁・切迫性尿失禁の診断に有用で,治療の経過観察にも利用される.また,分娩時には恥骨と児頭との位置関係を描出することにより,児頭下降を経時的に客観的に評価し分娩進行の評価に利用される.3D超音波では児頭の回旋も描出することが可能であり,回旋異常の診断も可能とする報告もある.従来の内診と同等に有用とする報告もある.また産褥の肛門括約筋を描出する研究では,従来考えられていたよりも,肛門括約筋の損傷が高頻度に発生する可能性が指摘されている.経腹・経腟超音波検査の基本的な経験と骨盤底の解剖学的知識があれば,本法の実施と解釈は比較的容易であるため,今後,産婦人科領域で広く普及することが期待される.
  • 小林 浩一, 後藤 美希, 坂巻 健
    原稿種別: 産婦人科超音波の新技術
    2016 年 43 巻 3 号 p. 457-465
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/05/16
    [早期公開] 公開日: 2015/08/20
    ジャーナル 認証あり
    Sonography-based volume computer-aided display labor法を用いた分娩時の経会陰超音波検査は,児頭の下降や回旋の評価などにおいて,内診所見を補完することが可能である.また,鉗子や吸引で児頭を牽引する場合,その安全性や成功率を評価することができ,牽引を開始する方向を知ることができるため安全で確実な鉗子/吸引分娩に寄与する可能性がある.
  • 宮越 敬, 田中 守
    原稿種別: 産婦人科超音波の新技術
    2016 年 43 巻 3 号 p. 467-476
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/05/16
    [早期公開] 公開日: 2015/07/17
    ジャーナル 認証あり
    スペックルトラッキング法は,スペックルを含む“領域”をBモードのフレームごとに検索し,組織局所の運動を追跡する技術である.成人ではスペックルトラッキング法により得られる心臓組織局所のVelocity,StrainおよびStrain rateが疾患の病態評価に応用されている.スペックルトラッキング法は超音波角度非依存性であるため,胎児心臓の動態解析も行われてきた.これまでの研究により,正常胎児におけるVelocity,StrainおよびStrain rateの情報が集積し,胎児心室動態の特徴が明らかになりつつある.今後,疾患児を対象としたスペックルトラッキング解析を行うことにより,疾患の病態生理について新たな知見が得られるものと期待される.
  • 中田 雅彦
    原稿種別: 産婦人科超音波の新技術
    2016 年 43 巻 3 号 p. 477-482
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/05/16
    [早期公開] 公開日: 2015/10/08
    ジャーナル 認証あり
    Dual gate Doppler法は,従来は1つの関心領域のDoppler信号しか検出できなかった方式と異なり,同時に2つのサンプリングポイントを設定することで,超音波断層像上の異なる位置の血管や組織のDoppler法を同時に測定することを可能にした.このことで,胎児の動脈系と静脈系の血流評価が同時相で可能となり,胎児不整脈の診断が容易となった.また,pulsed wave Doppler法のみならず組織ドプラ法での測定が可能なため,胎児心機能評価における新たな可能性をもたらすことが期待される.成人領域と異なり,限られたデバイスでしか評価することができない胎児の機能評価において新たな未来を想像させてくれる.
  • 宮下 進, 室月 淳, 室本 仁, 小澤 克典, 長谷川 英之, 金井 浩
    原稿種別: 産婦人科超音波の新技術
    2016 年 43 巻 3 号 p. 483-490
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/05/16
    [早期公開] 公開日: 2015/08/10
    ジャーナル 認証あり
    位相差トラッキング法(phased-tracking method)は,東北大学大学院工学研究科の金井らにより開発された,微細な運動計測を可能とする次世代の超音波計測モードである.超音波探触子からの送受信により,運動している関心点の変位を観測するためには,受信信号のフレーム間の受信遅延時間の変化を検出する必要がある.位相差トラッキング法では受信した超音波RF信号の直交検波信号に相関法を適用して受信信号の位相偏移を推定することで受信信号の遅延時間の変化を高精度に検出し,関心点の微細な運動計測と追跡が可能となる.この方法では波長の制限を受けないため,高精度での計測が可能である.非侵襲的な高精度計測という特性を活かして,成人領域では動脈壁の弾性特性の推定などに応用されており,今後は胎児の循環動態評価に応用が期待される.筆者らは正常および発育不全胎児における下行大動脈の血管内径変動と,脈波伝播速度計測に位相差トラッキング法を応用し,さらに脈圧推定を試みた.発育不全胎児では脈波伝播速度と推定脈圧は有意に大きく,胎児期からの血管壁構造リモデリングによる壁特性(コンプライアンス)の変化を観察している可能性が示唆された.
  • 長谷川 潤一, 秦 利之
    原稿種別: 産婦人科超音波の新技術
    2016 年 43 巻 3 号 p. 491-495
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/05/16
    [早期公開] 公開日: 2015/05/25
    ジャーナル 認証あり
    High-definition real-time ultrasound(HDlive)は,従来からの3D/4D超音波像を,よりリアルな表面画像として構築する新しい手法である.撮像対象に仮想光源を照射することによる陰影が表現できるため,より立体感のある画像となる.皮膚を模擬した色調で表現するため胎児鏡で胎児をみた様なリアリティーの高い画像となる.さらに,この仮想光源は照射の方向を調整することが可能で,撮像対象を視点方向から照射した場合はスポットライトが当たった様に明るく表示され,背側から照射した場合は逆光を受けたシルエットの様に薄暗く表示される.本稿では,その原理と臨床応用について紹介する.
症例報告
  • 池田 敦之, 田中 秀行, 中井 喜貴, 杉村 真弓, 松本 愛, 橋本 喜代美, 青木 由美子, 畦地 英全, 安原 裕美子, 國立 裕之
    2016 年 43 巻 3 号 p. 497-503
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/05/16
    [早期公開] 公開日: 2016/02/22
    ジャーナル 認証あり
    64歳,男性.検診異常を機に発見された肝腫瘤を主訴に入院精査.CT,MRIで胆嚢に近接して肝S4に45 mm大の腫瘤性病変を認めたが,胆嚢の異常は指摘できず,肝内胆管癌や肝膿瘍が疑われた.腹部超音波検査では,S4に約6 cm大の類円形の腫瘤を認めた.境界はやや不明瞭で辺縁は整,内部は等‐高エコーの腫瘤であり,肝膿瘍は否定的であった.胆嚢には壁不整は指摘できず,隆起性病変も認めなかった.高周波プローブを用いた超音波検査で,胆嚢底部に肝腫瘤と連続する限局性の不整な壁肥厚を認めた.造影超音波検査で,腫瘤と胆嚢の壁肥厚は,動脈優位相において共に強い濃染を認めた後,腫瘍辺縁にリング状濃染を認めた.後血管相では明瞭な欠損像を呈した.以上の超音波所見より胆嚢癌肝浸潤と診断し切除術を施行.病理組織所見で肝腫瘤は,低分化型から中分化型の管状腺癌であった.胆嚢壁は全体に硝子化していたが,胆嚢内腔面にも低乳頭状を呈する分化型腺癌を認め,平坦浸潤型の胆嚢癌肝浸潤の所見であった.胆嚢床に存在する肝腫瘍は高周波プローブを用いた超音波で胆嚢との関係を詳細に観察することが有用である.また,胆嚢との連続性が疑われた場合は,造影超音波検査での血流評価が有用であると考えられた.
  • 川上 穣, 日高 庸博, 原 枝美子, 佐藤 由佳, 近藤 有希子, 村田 将春, 藤田 恭之, 加藤 聖子
    2016 年 43 巻 3 号 p. 505-508
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/05/16
    [早期公開] 公開日: 2016/04/11
    ジャーナル 認証あり
    妊娠中のサイトメガロウイルス(CMV)感染は児に不良な予後をもたらしうる重大な感染症であり,診断には母体の血清CMV-IgMが用いられることが多い.症例は29歳の初産婦.妊娠24週の超音波検査で胎児の発育不全,腹水,腸管高輝度像を認めた.胎児中大脳動脈最高血流速度が2.5 MoMと高値であり臍帯穿刺を行ったが,臍帯血の血色素量は9.2 g/dlと貧血は軽度で,一方で血小板数が2.8万/μlと著明低値であった.母体血清よりTORCHスクリーニングを行ったが,CMV-IgMをはじめ全て陰性であった.しかし諸所見からCMV感染を強く疑い,羊水でのCMV-PCR検査を行ったところ,陽性であり先天感染の診断に至った.妊娠26週に胎児機能不全と診断したが急速墜娩を選択されず,子宮内胎児死亡となった.死産後の胎盤病理検査で巨細胞封入体を認め,免疫染色で抗CMV抗体が陽性であった.先天性CMV感染は母体のCMV-IgMが陰性であることをもって必ずしも否定されず,諸所見で感染を強く疑えば羊水PCR検査を考慮すべきである.
  • 玉木 恵里子, 杤尾 人司, 木川 雄一郎, 今井 幸弘, 黒田 真百美, 荒木 直子, 登阪 貴子, 橋本 一樹, 簑輪 和士, 加藤 大 ...
    2016 年 43 巻 3 号 p. 509-514
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/05/16
    [早期公開] 公開日: 2016/04/04
    ジャーナル 認証あり
    乳腺のMyeloid Sarcoma (MS)について造影超音波検査(造影US)を施行した報告はない.今回我々は乳腺のMSの1例を経験し,治療前後において造影USを施行した.治療前のBモード超音波(BモードUS)像では,腫瘤は境界不明瞭な低エコー腫瘤として描出され,内部エコーは不均質で,一部に極めて低エコーに描出される領域を含んでいた.造影USでは,腫瘤は全体的に濃染された.その後,急性骨髄性白血病(AML)およびAMLに伴い形成された乳房腫瘤(乳腺のMS)と診断され,寛解導入療法が開始された.化学療法開始2ヵ月後のBモードUSでは,化学療法の開始前の腫瘤像と比較し,サイズに大きな変化はなかったが,腫瘤内部の極めて低エコーに描出されていた領域はやや縮小化していた.造影USでは,腫瘤は全体的に染影性に乏しく観察された.この染影像は,腫瘤摘出後の病理標本における,大部分が線維化組織に置き換わっていたという所見とよく一致していた.造影USは乳腺のMSの治療効果の判定に有用と考えられた.
今月の超音波像
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