超音波医学
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43 巻, 4 号
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総説
  • 大門 雅夫, 川田 貴之, 中尾 倫子, 木村 公一, 宇野 漢成
    原稿種別: (第14回教育セッション)(循環器)
    2016 年 43 巻 4 号 p. 549-555
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/07/19
    [早期公開] 公開日: 2016/05/13
    ジャーナル 認証あり
    近年,社会の高齢化に伴い左室駆出率の保たれた心不全(heart failure with preserved left ventricular ejection fraction: HFpEF)が増加している.HFpEFの病態において中心となるのは左室拡張不全であり,HFpEFを正しく診断をして適切な治療方針へ導くためには,左室拡張能の評価が不可欠である.心エコー図は左室拡張能評価に有用であり,臨床において非侵襲的で繰り返し施行可能である.左室拡張能は,左室流入パルスドプラ波形のE波とA波の比により,正常型および弛緩障害型,偽正常型,拘束型に分類される.僧帽弁輪部の組織ドプラ波形拡張早期波e′は左室弛緩能と相関し,正常型と偽正常型あるいは拘束型の分別に有用である.また,肺静脈血流や左房容積も左室拡張能評価に有用である.一方で,心エコーによるこれらの拡張能指標にはそれぞれ限界があるため,左室拡張能は単独の指標ではなく複数の指標を用いて包括的に判断する必要がある.さらに,左室拡張能は,健常人においても加齢に伴い低下する.そのため,左室拡張能の異常については,被検者の年齢も考慮して判断する必要がある.本論文では,心エコー図を用いた左室拡張能評価の基本について概説する.
  • 平田 正純
    原稿種別: (第14回教育セッション)(運動器)
    2016 年 43 巻 4 号 p. 557-561
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/07/19
    [早期公開] 公開日: 2016/05/23
    ジャーナル 認証あり
    運動器の構成体である骨,関節,骨格筋,腱,および靭帯そしてそれらを制御する神経のエコー像を理解することは重要である.肩関節前方走査で上腕骨大結節,小結節,結節間溝が描出され,結節間溝内には上腕二頭筋長頭腱が描出できる.外上方走査では背部体表から肩甲棘の走行を触知しこれと平行に肩外側にプローブをあてると体表から三角筋,その下に腱板(棘上筋・棘下筋),腱板が付着する上腕骨大結節が描出される.正常の腱板は上方になだらかなカーブ状凸像を呈し,内部はfibrillar patternを認める.後方走査では肩甲上腕関節短軸像が描出でき,棘下筋の深部に線状高エコーを呈する上腕骨頭と肩甲骨関節窩が確認できる.上腕骨頭・肩甲骨関節窩の間に三角形で高エコーを呈する関節唇を認める.腱板断裂の超音波像の特徴は外上腱板長軸像におけるperibursal fatの陥凹,平坦化,腱板付着部の表面不整像や腱板内の低エコー像がある.石灰性腱炎では腱板内に高エコー像を認め,硬い石灰は音響陰影を伴う.超音波診断装置は最近の整形外科領域でますますそのニーズが高まっており,さらに発展が期待される.
  • 田中 幸子
    原稿種別: (第14回教育セッション)(検診)
    2016 年 43 巻 4 号 p. 563-569
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/07/19
    [早期公開] 公開日: 2016/04/11
    ジャーナル 認証あり
    膵臓は,肋骨や胃の背側に存在するため,超音波検査ですっかり描出するのが困難な臓器である.無症状の人を対象とした検診で見落としてはならない最も重要な膵臓の病気は膵がんであるが,膵内にとどまるごく微小な病変をとらえないと根治可能な早期がんが発見できないので,診断がとても難しい.膵臓の超音波スクリーニング検査で大切なポイントとして,以下の3点があげられる.(1)体位変換,高周波プローブの活用,場合により胃充満法などを用い,可能な限り広い範囲を観察すること,(2)膵がんの直接所見である低(等)エコー像や間接所見(副所見)である主膵管・分枝膵管の拡張像を的確に検出し,早期の膵がんを見落とさないこと,(3)膵がん高危険群である主膵管拡張と膵嚢胞を拾い上げることである.この3点について,検診判定マニュアルに沿って解説した.
解説 シリーズ どうすれば超音波の生物学的作用に関する実験ができるか
症例報告
  • 本田 早潔子, 川崎 達也, 山野 倫代, 佐藤 良美, 張本 邦泰, 三木 茂行, 神谷 匡昭, 平井 康隆
    2016 年 43 巻 4 号 p. 577-580
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/07/19
    [早期公開] 公開日: 2016/05/13
    ジャーナル 認証あり
    Calcified amorphous tumor(CAT)は,石灰化を伴う極めて稀な非増殖性の腫瘤である.今回,僧帽弁輪部に心臓CATを発症した末期腎不全の1例を経験した.冠動脈インターベンションの既往がある70歳の女性が,冠動脈の再評価のために来院した.心エコー図検査では僧帽弁後尖の弁輪部に僧帽弁輪石灰化(mitral annular calcification: MAC)が存在し,可動性に富んだエコー輝度の高い直径10 mmの腫瘤が付着していた.1年前および半年前に施行された心エコー図検査の記録を確認したところ,MAC内部のエコー輝度が低下した乾酪様僧帽弁輪石灰化(caseous calcification of the mitral annulus: CCMA)が疑われたが,可動性の腫瘤はなかった.今回の心エコー図検査では,CCMAの外側が一部崩壊し,可動性腫瘤として左室内部に突出しているように観察された.塞栓症のリスクが高いため外科的に摘出し,最終的にCATと病理診断された.本例における心エコー図の経時的な変化は,CATが発生する一つの過程を示唆している可能性がある.
  • 山田 博胤, 田中 秀和, 宮原 俊介, 尾形 竜郎, 楠瀬 賢也, 西尾 進, 鳥居 裕太, 平田 有紀奈, 大北 裕, 佐田 政隆
    2016 年 43 巻 4 号 p. 581-586
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/07/19
    [早期公開] 公開日: 2016/06/20
    ジャーナル 認証あり
    症例は,46歳男性,循環器内科医師,主訴は左足関節内果部と上腕の疼痛である.僧帽弁逸脱症による僧帽弁逆流と発作性心房細動の既往がある.足関節の疼痛は蜂窩織炎を疑って,血液検査と表在エコー図検査を行った.疼痛部は皮下浮腫が著明であったが,軟部組織の血流シグナルが乏しく,後脛骨動脈の血管壁を主体とした炎症と,同動脈の閉塞が確認された.一方,左手関節近位の尺骨動脈は逆行性血流を示しており,左尺骨動脈分岐部直後で閉塞していた.これらの所見から多発性血管閉塞性動脈炎と診断し,その原因究明のために直ちに心エコー図検査を施行した.その結果,僧帽弁に可動性を有する棍棒状の異常構造物を認め,僧帽弁逆流は高度に増悪しており,感染性心内膜炎と診断された.頭部MRI検査で異常を認めなかったため,外科的加療(疣腫摘除術,僧帽弁形成術,左房縫縮術,左心耳閉鎖術,Maze手術)が行われた.血液培養は陰性であったが,摘出した疣腫の培養からStaphylococcus warneriが同定された.Staphylococcus warneriは皮膚常在菌であり,本病原体による自己弁の感染性心内膜炎は報告が少ない.術後の経過は良好であり,抗生剤を6週間静脈投与した後に社会復帰した.患者が循環器内科医であり,自身の足関節および上腕の疼痛を契機に,表在エコー図検査と心エコー図検査を用いることで,感染性心内膜炎を迅速に診断した稀有な症例であり,かつ,感染性心内膜炎の起炎菌としては稀なStaphylococcus warneriが同定されたので,文献的な考察を加えて報告する.
  • 市山 卓彦, 田中 利隆, 佐藤 杏奈, 植木 典和, 平山 貴士, 山口 貴史, 菅沼 牧知子, 田中 沙織, 五十嵐 優子, 田口 雄史 ...
    2016 年 43 巻 4 号 p. 587-592
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/07/19
    [早期公開] 公開日: 2016/05/23
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    非瘢痕子宮に発症する子宮破裂は診断に難渋することが多い.今回非瘢痕子宮の妊婦が分娩後に原因不明のショックのため産褥搬送となり,超音波検査により子宮破裂と診断した2例を経験した.1例目は34歳の初産婦に対し妊娠41週1日に分娩誘発を行った.胎児機能不全のため子宮底圧迫法を併用した吸引分娩で3,370 g,Ap 9/10の女児を娩出したが,分娩2時間後ショックとなり搬送されてきた.来院時血圧106/66 mmHg,心拍数153/分,Shock Index(以下SI)1.5であった.経腹超音波上,子宮水平断で左側筋層の連続性の途絶を認め,子宮破裂と診断した.造影CT検査を行った後,開腹し破裂部分を縫合止血した.2症例目は40歳の3経妊1経産の妊婦に対し,妊娠40週5日に分娩誘発を行った.胎児機能不全のため子宮底圧迫法を併用した吸引分娩で2,670 g,Ap 2/2の女児を娩出したが,分娩20分後にショックとなり搬送されてきた.来院時血圧101/73 mmHg,心拍数123/分,SI 1.2であった.経腹超音波上,子宮水平断で右側筋層の連続性の途絶を認め,子宮破裂と診断した.造影CT検査を行った後,開腹したが子宮の温存は困難であったため,子宮全摘出術を行った.分娩後ショックとなった場合,非瘢痕子宮であっても子宮破裂を鑑別すべきであり,診断には超音波検査で子宮水平断の子宮筋層の連続性を確認することが簡便で有用である.
  • 上田 優輔, 廣瀬 雅哉, 伊藤 拓馬, 安本 晃司, 川口 浩実, 宗重 彰, 中島 正敬
    2016 年 43 巻 4 号 p. 593-597
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/07/19
    [早期公開] 公開日: 2016/05/13
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    妊娠中のuterine synechiaは,一般的に子宮腔を横切る索状構造物を同定することにより診断に至る.今回,妊娠中期に内子宮口付近に現れた嚢胞性病変を契機としてuterine synechiaと診断した症例を経験した.26歳の初産婦が,妊娠26週0日に初めて,経腟超音波検査上,68×44 mmの嚢胞性病変を内子宮口付近に認めた.妊娠30週5日のmagnetic resonance imagingで頭尾側が丸く中央がくびれた,ひょうたん型の羊水腔を認めた.上部の羊水腔に横位となった胎児を認め,子宮体部正中を前後に交通する索状構造物を認めた.上部の羊水腔から11×10×10 cmの球状の羊水腔が内子宮口に向かって膨隆していた.妊娠36週6日に臍帯が下部の羊水腔に下垂しているのが観察されたため,妊娠37週3日に選択的帝王切開術を施行し,3,062 gの女児をアプガースコア9/9(1分/5分)で娩出し,索状構造物も同時に摘出した.経腟超音波で内子宮口付近の嚢胞性病変を同定することは,uterine synechiaの診断の契機になり,これを正確に診断することにより妊娠中の合併症を防止することにつながるものと考えられた.
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