超音波医学
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43 巻, 5 号
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解説 シリーズ どうすれば超音波の生物学的作用に関する実験ができるか
原著
  • 小井土 惇, 和田 洸, 保坂 直斗, 望月 剛, 桝田 晃司, 小田 雄介, 鈴木 亮, 丸山 一雄
    2016 年 43 巻 5 号 p. 639-648
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/09/15
    [早期公開] 公開日: 2016/08/26
    ジャーナル 認証あり
    目的:超音波と微小気泡との併用で超音波治療の効率向上が期待されているが,体内に注入後の微小気泡は血流と共に体内へ拡散してしまう.我々はこれまで,任意の箇所での微小気泡の濃度を高めることを目的として,流水中で超音波照射による微小気泡の誘導を行ってきた.この方法を,生体投与可能で様々な薬剤を包含できる微小気泡(バブルリポソーム,BLs)に応用する必要に迫られている一方,血流中での微小気泡の制御可能性については未確認であった.しかもBLsの平均直径は0.5 μmと小さく,従来の光学顕微鏡ではBLsの濃度を計測できない.対象と方法:そのため,超音波画像中の輝度変化からBLsの濃度を計測する校正法を確立し,生理食塩水とブタ血液の2種類の媒質を用いて実験を行った.まず超音波画像そのものによるBLsの破壊効果を調査し,BLsの濃度計測に影響を与えない超音波画像のMI値を検証した.さらにY字分岐を有する人工血管において,BLsを特定の経路に押し出す誘導実験を行った.ここでの実験条件は中心周波数5 MHz,最大音圧300 kPa-ppの集束波,流速30 mm/sとした.結果と考察:誘導実験の結果として,生理食塩水の場合に比べて,血流中ではBLsの破壊が軽減されることが今回の実験により初めて確認された.さらに誘導用音波の照射位置は,人工血管の分岐点で押し出すのでは無く,数mm離れた位置に設定した方が,誘導性能が向上することが分かった.結論:本研究の結果より,生体中におけるBLsの誘導の可能性を更に発展できる足がかりを確認できた.
  • 浅沼 俊彦, 岡 雅通, 増田 佳純, 櫻井 大輔, 中谷 敏
    2016 年 43 巻 5 号 p. 649-654
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/09/15
    [早期公開] 公開日: 2016/08/08
    ジャーナル 認証あり
    目的:スペックルトラッキング法を用いた心筋ストレイン解析により,収縮期最大ストレインだけでなく,early systolic lengthening(ESL)やpost-systolic shortening(PSS)といった微細な心筋運動も容易に評価できるようになった.二次元(2D)法では,これらの微細運動評価により,虚血診断精度が改善すると報告されているが,三次元(3D)法での有用性は不明である.本研究では,2Dおよび3D法において,収縮期最大ストレインと比べて,このような微細心筋運動の評価が虚血診断精度を改善するかを検討した.対象と方法:麻酔開胸犬20頭を用い,左冠動脈回旋枝の狭窄前,20‐40%の血流低下時(狭窄1),60‐80%の血流低下時(狭窄2)に,2D法または3D法による画像を取得した.虚血領域の収縮期最大ストレイン,ESL,PSSを計測し,ROC解析の曲線下面積(AUC)から,各指標の狭窄1と狭窄2の診断精度を求めた.結果:2D法のAUCは,狭窄2診断では,すべての指標でAUC=0.5と比べて有意に高値であったが,狭窄1診断では,PSSのみが有意に高値であった(AUC: 収縮期最大ストレイン=0.70,ESL=0.72,PSS=0.87).一方,3D法のAUCは,2D法と比べると低く,狭窄1診断では,どの指標も有意ではなかった(AUC: 収縮期最大ストレイン=0.64,ESL=0.51,PSS=0.61).結論:スペックルトラッキング法による虚血診断において,2D法は3D法よりも優れた診断精度を示した.PSSによる診断は,2D法では収縮期最大ストレインよりも優れていたが,3D法ではその優位性は示されなかった.
  • 神山 直久, 住野 泰清, 丸山 憲一, 松清 靖, 和久井 紀貴, 篠原 正夫
    2016 年 43 巻 5 号 p. 655-662
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/09/15
    [早期公開] 公開日: 2016/08/08
    ジャーナル 認証あり
    目的:高度の脂肪肝や非アルコール性脂肪性肝炎の症例において,B-mode像に複数観察される,線状の低エコーアーチファクト,いわゆる「簾状エコー」について発生機序の解明を行うこと.対象と方法:はじめに,簾状エコーの可能性がある音響陰影アーチファクト6種類を定義し,脂肪肝症例21例(うち高度脂肪肝9例)に対して記録されたB-mode画像を元に,種類ごとの発生機序を特定する.また対象症例に対し病理診断にて脂肪割合と線維化スコアを得る.さらに,グラファイトファントムの空隙に異なる音速の水溶液を注入し,異なる音速を持つ媒質の境界で,屈折による音響陰影が発生することを検証する.結果と考察:簾状エコーは,肝臓内血管断面から発生している,という仮説が最も適合した.また簾状エコーに類似した陰影が肝外からも発生していることも判明したが,最大輝度保持法を利用したB-mode再構成により両者の判別が可能となった.ファントム実験では,音速値が2.6%低い媒質間においても音響陰影の発生が観察され,これは高度脂肪肝における肝臓実質の音速低下のレベルに同程度であることが考察できた.結論:高度脂肪肝により音速が低下した肝実質と血管内血液間の屈折現象が,簾状エコー発生の一つの主要な原因であることが明らかとなった.
  • 西野 聖吾, 松田 夕子, 川島 朝子, 吉本 智子, 斎藤 浩志, 加茂 健太
    2016 年 43 巻 5 号 p. 663-668
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/09/15
    [早期公開] 公開日: 2016/08/31
    ジャーナル 認証あり
    目的:アキレス腱付着部炎,足底腱膜炎は脊椎関節炎の特徴的な所見であり,脊椎関節炎の疾患活動性の評価部位でもある.しかし単純X線上で認められる腱,靭帯付着部の骨棘(以下,X線骨棘)と腱肥厚の関係性を明らかにした報告はほとんどない.本調査では,単純X線での骨棘の有無,超音波検査(ultrasonography: US)での腱の厚さの関係を明らかにすることを目的とした.対象と方法:2014年6月から2015年11月までに当院整形外科を受診し,疾患特異性を含んだ165名(330足)のうち脊椎関節炎・関節リウマチなど炎症性リウマチ性疾患と診断された患者と圧痛を有する患者を除外した46名(91足)を対象とした.調査項目はUSを用いてアキレス腱と足底腱膜の厚さを測定し,これを単純X線による両踵骨付着部の骨棘の有無と比較した.結果と考察:アキレス腱付着部においては,X線骨棘を認めた群で有意に腱が厚かった (各々4.45±0.78, 3.96±0.65, p<0.01).足底腱膜付着部では,X線骨棘の有無は腱の厚さと有意な関連はなかった(各々2.85±0.48, 2.77±0.64, p=0.52).アキレス腱付着部では腱付着部内に骨棘が認められるが,足底腱膜付着部では骨棘は足底腱膜付着部の深層に認められることから,それぞれの骨棘形成機序の違いを反映している可能性がある.結論:アキレス腱付着部においては,X線骨棘を有する症例では腱が厚くなっている可能性がある.従って,X線骨棘を有する場合には腱肥厚の解釈に注意を要す.
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