超音波医学
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43 巻, 6 号
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解説 シリーズ どうすれば超音波の生物学的作用に関する実験ができるか
原著
  • 小谷 敦志, 濱口 浩敏, 松尾 汎
    2016 年 43 巻 6 号 p. 723-728
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/11/15
    [早期公開] 公開日: 2016/10/11
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    はじめに:現行の頸動脈エコー検査においては,2種類のガイドライン(標準的評価法)が存在する.しかし,実際の現場では両評価法をもとに独自の計測を行っているのが現状である.目的:全国の頸動脈エコーを施行している主要施設にアンケートを行い,各施設での頸動脈エコーの検査内容を調査し,実臨床に即した手順を策定する.対象と方法:2010年5月に全国61施設に対してアンケートを依頼し,その結果をもとに2013年から2014年にかけて頸動脈エコースクリーニング基本的検査項目および手順を策定した.結果と考察:アンケート結果より,最も重視されている項目はmax IMTであることが判明した.一方で,血流速度やプラーク性状など,一部では必須と考えられながらも再現性が良いと判断されない項目もみられた.これらをもとに,スクリーニング手順としてA.必須項目(CCA,分岐部,ICA max IMT,CCA血流速度,VA血流速度,VA血管径),B.准必須項目(CCA mean IMT,CCA血流速度,ICA血流速度),C.追加項目(CCA血管径,ICA血管径,ECA血流速度,右SCA IMT)の三段階に分ける方法を策定した.この結果,頸動脈エコーでスクリーニングに優先されるべき項目が明瞭となり,検査時間の短縮を図ることが可能になった.結論:ガイドラインを参考に,実際の現場に即した検査手順を策定した.
症例報告
  • 水上 雪香, 山元 博義, 加藤 弘康, 國重 めぐみ, 小杉 元宏, 別府 慎太郎
    2016 年 43 巻 6 号 p. 729-732
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/11/15
    [早期公開] 公開日: 2016/09/23
    ジャーナル 認証あり
    大動脈四尖弁は非常に稀な先天性心疾患である.我々は中等度から高度の大動脈弁閉鎖不全を有する4例の大動脈四尖弁を経験した.これらすべての症例は心エコー検査で偶然発見されたものであり,弁不全に関連した症状はなかった.弁の形態としては,小さな余剰弁尖を有する例が4例中3例,残り1例は4尖とも同サイズであった.大動脈4尖弁にはいくつかの形態的分類があるが,形態による予後の差は明らかにされてない.しかし4尖弁の余剰尖の位置情報は外科的治療の方針に影響を与えることから,心エコー図による詳細な評価は重要である.
  • 山崎 正之, 竹内 陽史郎, 石上 晃子, 吉永 仁香, 堀家 由貴, 小川 正子, 藤田 淳子, 高岡 理恵, 望月 泰秀, 志手 淳也
    2016 年 43 巻 6 号 p. 733-738
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/11/15
    [早期公開] 公開日: 2016/09/16
    ジャーナル 認証あり
    症例は50歳代男性.主訴は頭痛,左視野障害,既往歴に特記事項なし.運転中に突然左視野障害,頭痛,嘔気が出現したため当院来院.頭部コンピューター断層撮影にて両側小脳,右後頭葉,左前頭葉に脳梗塞を認め,当院神経内科に入院した.塞栓源検索のため経胸壁心臓超音波検査で僧帽弁前尖左房側に18mm大の可動性のある異常構造物を認めた.僧帽弁は逸脱なく,逆流もごく軽度であった.形状から乳頭状弾性線維腫を疑い摘出術が検討されたが,抗凝固療法にて経過観察中の経胸壁及び,経食道心臓超音波検査で異常構造物は,ほぼ消失した.感染兆候はなく,血液培養陰性で,感染性心内膜炎は否定的であったため非細菌性血栓性心内膜炎と診断し,外科治療は回避された.本例では非細菌性血栓性心内膜炎に多く認められるとされる悪性腫瘍や敗血症,自己免疫疾患などに伴う凝固亢進状態を認めなかった.以上,明らかな基礎疾患を有しない非細菌性血栓性心内膜炎の1例を経験し,その診断,治療方針の決定に心エコー図法による詳細な経過観察が有用であった.
  • 須磨谷 いづみ, 吉岡 賢二, 鍵山 暢之, 水上 暁, 本間 浩一, 大塚 喜人, 田邉 大明, 橋本 裕二
    2016 年 43 巻 6 号 p. 739-743
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/11/15
    [早期公開] 公開日: 2016/09/16
    ジャーナル 認証あり
    症例は70歳女性.2年前に原発性卵巣腫瘍に対して開腹下付属器摘出術を施行され,病理所見から卵巣カルチノイドと確定診断された.その頃より重症三尖弁逆流症が指摘されていたが,自覚症状がなかったため経過観察されていた.入院1ヵ月前より下肢浮腫増強があり,利尿剤を開始したが改善せず,全身浮腫のため入院となった.入院5年前の心エコー図では三尖弁逆流症,肺動脈弁逆流症ともにほとんど認められなかったが,入院時の心エコー図では三尖弁,肺動脈弁ともに強い肥厚と短縮,可動性の低下を伴い,重症三尖弁逆流症,重症肺動脈弁逆流症,右房・右室拡大を認めた.利尿剤を増量したが心不全のコントロールがつかず,入院30日目に三尖弁置換術を施行した.術後,一時は車椅子移乗まで改善したが,その後敗血性ショックを来して入院39日目に永眠された.手術所見および剖検所見では三尖弁弁葉および弁下組織は高度に肥厚し,かつ短縮,硬化所見あり,弁尖の可動性は高度に低下していた.肺動脈弁も同様の所見であった.病理検査ではいずれの弁尖にも筋繊維芽細胞,平滑筋細胞,粘液基質の沈着を認め,カルチノイドによる変化と診断された.今回我々は明らかな症状が発現した後に急速な経過で不幸な転帰をたどった1例を経験した.一次性三尖弁逆流は不可逆性であり,症状発現後は病状が比較的急速に悪化することもある.症状の発現に注意し,適切な時期に手術を検討する必要が示唆された.
  • 山口 祐美, 河野 靖, 白澤 邦征, 田口 晴之
    2016 年 43 巻 6 号 p. 745-749
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/11/15
    [早期公開] 公開日: 2016/10/03
    ジャーナル 認証あり
    症例は84歳,女性.2007年より複数の欠損孔を有する心房中隔欠損を指摘されており,2015年3月にうっ血性心不全のため入院となった.その際,肺体血流比が1.8であり,心不全を併発していたことから外科的治療を勧められたが,高齢を理由に希望しなかった.同年8月に急性下壁梗塞の診断で緊急入院となり,冠動脈造影検査で右冠動脈の近位部に完全閉塞を認めた.同部位に対して経皮的冠動脈インターベンションを施行され,入院後の第1病日にはバイタルサインは安定していた.しかし,第2病日に急激に呼吸状態が悪化した.経胸壁心エコー図検査にて心房中隔欠損孔を通して新たに右左シャントが生じており,これに伴う低酸素血症と考えられた.再度外科的治療を勧められたが,ご家族は希望されなかった.内科的治療を継続したが,治療の甲斐なく他界した.右室梗塞の経過中に卵円孔開存や心房中隔欠損を介した右左シャントを生じた例はこれまでにも報告されているが,本症例では解剖学的な要因も関与していた可能性がある.たとえば,心房中隔の伸展とそれに伴う下大静脈の血流方向の変化,ペースメーカーリードによる三尖弁逆流ジェットの偏位である.これらのことを踏まえた上で,考察も交えて報告する.
  • 芳賀 真代, 平井 都始子, 中井 登紀子, 小林 豊樹, 中村 卓, 丸上 亜希, 伊藤 高広, 武輪 恵, 丸上 永晃, 吉川 公彦
    2016 年 43 巻 6 号 p. 751-758
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/11/15
    [早期公開] 公開日: 2016/09/05
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    乳管内進展を伴った乳癌症例では,一般的に造影MRIが広がり診断に有用と考えられている.造影MRIは,重篤な腎障害や気管支喘息のある患者は原則禁忌であるが,超音波造影剤ソナゾイド®は,安全性が高く腎障害や喘息の既往があっても使用できる.今回我々は,ソナゾイド®造影超音波で広範囲な乳管内進展を描出できた2例を報告する.1例は喘息,もう1例は透析患者で造影CT/MRIは実施できなかったが,ソナゾイド®造影超音波では副作用を認めなかった.症例1は73歳女性.マンモグラフィ(MG)で腫瘤から連続する淡く不明瞭な石灰化を区域性に認め乳管内進展が示唆されたが,Bモードでは乳管内進展を疑う所見を認めなかった.症例2は67歳女性.MGで腫瘤近傍に多形性不均一な石灰化が区域性に分布し,Bモードで腫瘤から連続する低エコー域を認め,乳管内進展が示唆された.いずれの症例も,ソナゾイド®造影超音波で乳管内進展は腫瘤から連続する帯状濃染域として描出され,時間輝度曲線(time intensity curve: TIC)では主腫瘤と同様のピークとwashoutを示した.造影超音波での濃染の広がりの結果から,症例1は部分切除術を症例2は乳房全摘術を選択した.病理では広範囲に拡張乳管内に増殖した乳管内癌成分を認め,病変断端は陰性であり治療方針にも寄与した.
  • 田端 強志, 丹治 直映, 佐々木 健, 稲岡 努, 清水 一寛, 東丸 貴信
    2016 年 43 巻 6 号 p. 759-763
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/11/15
    [早期公開] 公開日: 2016/10/03
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    胸郭出口症候群(Thoracic outlet syndrome: TOS)は胸郭出口部における狭い空間で神経や血管が圧迫されて上肢の疼痛やしびれ,冷感などの症状が起こる疾患である.TOSは神経性,動脈性,静脈性に分類されており,殆どが神経性で血管性TOSは稀と言われている.今回我々は,当院で経験した血管性TOSの2症例を報告する.【症例1】59歳女性.主訴は左上肢拳上による蒼白.上肢動脈超音波検査を最初に通常の下垂位で施行した.左右共に鎖骨下動脈から橈骨動脈や尺骨動脈まで血流波形パターンは正常で血流速度に左右差は認めなかった.次に左腕拳上位で検査を施行した.左肩関節過外転位90°で鎖骨下動脈に加速血流を認め,最大血流速度は92 cm/secから200 cm/secと上昇した.また,同側の上腕動脈の血流速波形パターンは明らかな狭窄後パターンを示した.日常生活に支障なく,自覚症状もないことからこれ以上の精査や手術は希望されず経過観察となった.【症例2】31歳男性.主訴は右上肢腫脹と疼痛.現病歴は1ヵ月前から両肩の肩こりがありだんだん悪化していた.入浴後より右上肢腫脹が出現,痛みもあり腫脹の改善もないことから当院を紹介受診.上肢静脈超音波検査で右鎖骨下静脈に血栓像を認め,ほぼ閉塞していた.胸部造影CTでは右鎖骨下静脈に血栓性閉塞を認めたが,肺塞栓は認めなかった.フォンダパリヌクス,エドキサバンによる抗凝固療法を施行した.3ヵ月後,鎖骨下静脈の血栓は消失し,良好な開存を認めた.
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