目的:乳癌での造影超音波検査(contrast-enhanced ultrasound: CEUS)の染影所見とバイオマーカーの発現状況,サブタイプ,核グレード,Ki67の発現量との関係について検討した.
対象と方法:2013年10月から2015年11月までに当科でCEUSを施行した乳癌手術症例45病変を対象とした.超音波造影剤Sonazoid
®を静注し,1.Bモード画像と比較した染影範囲(Bモードよりも広がる/同等/小さい),2.腫瘤内部の染影強度(周囲乳腺より強い/同等/弱い)について評価し,1,2で判定した染影範囲,染影強度とエストロゲンレセプター(estrogen receptor: ER),プロゲステロンレセプター(progesterone receptor: PgR),ヒト上皮細胞増殖因子2型(human epidermal growth factor receptor type 2: HER2),サブタイプ,核グレード,Ki67の発現量との関係について検討した.染影範囲が広がる病変では染影拡大部における組織像,同等以下の病変については染影境界部の組織像についても検討した.
結果と考察:染影範囲とER,PgR,HER2発現の有無およびサブタイプとの間には関係を認めなかった.しかし,染影が広がる病変では広がらない病変と比較して,核グレードが有意に高く(χ
2 test. p=0.0111),Ki67の発現量も有意に高値であった(χ
2 test. p=0.0042).一方,染影強度との関係ではいずれも相関を認めなかった.組織像の検討では,染影の広がりを示したすべての病変で,染影拡大部位にほぼ一致して周囲脂肪織への癌細胞浸潤が認められた.
結論:CEUSでBモードによる腫瘍範囲よりも染影が広がる所見は,Bモードのみでは視認困難な癌細胞の周囲脂肪織への浸潤を反映しており,高い細胞増殖能を持った高悪性度の病変を示唆する所見であると考えられた.
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