超音波医学
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44 巻, 1 号
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特集「女性排尿障害の超音波診断」
  • 渡辺 泱
    原稿種別: 女性排尿障害の超音波診断
    2017 年 44 巻 1 号 p. 5-16
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/01/16
    [早期公開] 公開日: 2016/07/19
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    現行の膀胱・尿道に関する解剖学・生理学において定説とされている5件の事項について,物理学・超音波医学の立場から,次のような修正すべき提言を行った.(1)蓄尿・排尿に際して,膀胱支配神経は膀胱の物性を2段階に変換させるためのon-off制御にしか関わっていない.(2)膀胱壁の厚さ,すなわち膀胱重量は,排尿に必要な収縮力(尿道抵抗)に応じて極めて速やかかつ動的に変動している.(3)尿道の主な機能は蓄尿時における閉鎖作用より排尿時における開大作用にあり,尿道の開大効果が排尿行動を主導しているらしい.(4)男性尿道は膀胱から前立腺を貫いて連続する長大な尿道筋束を有し,従来から外尿道括約筋と呼ばれている部分はその下端部分に過ぎない.(5)膀胱は,少なくとも睡眠時にはかなりの量の尿中水分を吸収している.
  • 吉澤 剛, 高橋 悟
    原稿種別: 女性排尿障害の超音波診断
    2017 年 44 巻 1 号 p. 17-19
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/01/16
    [早期公開] 公開日: 2016/09/16
    ジャーナル 認証あり
    女性下部尿路症状(female lower urinary tract symptoms: FLUTS)診療における経腹的超音波検査の役割は, (1)FLUTSに関連のない尿路器質的疾患の除外と(2)FLUTSに関連する尿路形態異常の検索および(3)残尿量の測定である.また,経会陰的超音波検査と経腟的超音波検査は,日常の泌尿器科臨床で汎用されているとはいいがたいが,下部尿路の形態,特に経腹的超音波検査では観察しにくい膀胱頸部や尿道と骨盤底の評価に有用であるとされている.
  • 皆川 倫範, 小川 輝之, 石塚 修
    原稿種別: 女性排尿障害の超音波診断
    2017 年 44 巻 1 号 p. 21-26
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/01/16
    [早期公開] 公開日: 2016/07/19
    ジャーナル 認証あり
    女性尿道の超音波検査は一般的な検査ではない.しかし,文献的には興味深い報告が散見される.特に,腹圧性尿失禁の病態を解明するモダリティとしての役割が大きい.その理由として,長さや角度といった解剖学的なパラメーターを測定することが容易である点,動的な検査なので失禁の瞬間を捉えられる点,血流を評価できる点が挙げられる.腹圧性尿失禁では,解剖学的な異常,腹圧時におけるダイナミックな所見,尿道ないしその周囲の血流は,病態に深く関わることが分かる.また,最近の報告によれば,尿の禁制に関わる尿道の役割として,従来考えられていたcloserとして以外に,実はopenerであるという新しい報告も認め,今後さらに病態や機能を明らかにするモダリティとして注目を集めると思われる.さらに本稿では,尿道内腔にゼリーを注入した状態で尿道を観察するソノウレスログラフィーの所見を供覧し,今後の女性尿道超音波検査の位置づけについて論じる.
  • 寺本 咲子, 成島 雅博
    原稿種別: 女性排尿障害の超音波診断
    2017 年 44 巻 1 号 p. 27-35
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/01/16
    [早期公開] 公開日: 2016/07/25
    ジャーナル 認証あり
    超音波検査は,ポリプロピレン製の生体材料であるテープやメッシュを可視化するのに最も適した画像診断装置である.今回は腹圧性尿失禁に対するTVT手術,骨盤臓器脱に対するTVM手術,LSCに対する超音波検査法について解説する.TVT手術では,経腹プローブを用いる.テープは超音波画像で高エコーの線状陰影として描出される.適切に挿入されたテープは中部尿道に位置し,矢状面で尿道と平行に,横断面で尿道背側を取り囲んでいるのが観察される.TVM手術では経腹プローブ,経膣プローブ,リニアプローブを用いて,メッシュの固定位置,挿入されている深さ,形状を観察する.メッシュは超音波画像で高エコーの線状陰影として描出される.適切に挿入されたメッシュは,恥頸筋膜または直腸膣筋膜の層で,前壁メッシュは膀胱頸部から子宮頸部,後壁メッシュは膣口付近から子宮頸部に位置している.LSCでは経腹プローブ,経膣プローブ,リニアプローブを用いて,メッシュの固定位置,深さ,形状を観察する.子宮膣上部切断術を併用したLSCの場合,前壁メッシュは膀胱頸部から子宮頸部の範囲で恥頸筋膜の層に,後壁メッシュは膣口付近から子宮頸部の範囲で直腸膣筋膜の層に位置し,子宮頸部断端で前後メッシュが連結する.女性泌尿器科手術の広まりとともに,超音波検査はその診断ツールとして今後ますます重要な位置づけとなるだろう.
解説 シリーズ どうすれば超音波の生物学的作用に関する実験ができるか
原著
  • 角谷 昌俊, 佐川 憲明, 富山 光広, 高橋 香織, 土田 恵, 佐藤 綾子, 伴 由佳, 木村 太一, 谷野 美智枝, 山下 啓子
    2017 年 44 巻 1 号 p. 41-48
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/01/16
    [早期公開] 公開日: 2016/10/25
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    目的:乳癌での造影超音波検査(contrast-enhanced ultrasound: CEUS)の染影所見とバイオマーカーの発現状況,サブタイプ,核グレード,Ki67の発現量との関係について検討した.対象と方法:2013年10月から2015年11月までに当科でCEUSを施行した乳癌手術症例45病変を対象とした.超音波造影剤Sonazoid®を静注し,1.Bモード画像と比較した染影範囲(Bモードよりも広がる/同等/小さい),2.腫瘤内部の染影強度(周囲乳腺より強い/同等/弱い)について評価し,1,2で判定した染影範囲,染影強度とエストロゲンレセプター(estrogen receptor: ER),プロゲステロンレセプター(progesterone receptor: PgR),ヒト上皮細胞増殖因子2型(human epidermal growth factor receptor type 2: HER2),サブタイプ,核グレード,Ki67の発現量との関係について検討した.染影範囲が広がる病変では染影拡大部における組織像,同等以下の病変については染影境界部の組織像についても検討した.結果と考察:染影範囲とER,PgR,HER2発現の有無およびサブタイプとの間には関係を認めなかった.しかし,染影が広がる病変では広がらない病変と比較して,核グレードが有意に高く(χ2 test. p=0.0111),Ki67の発現量も有意に高値であった(χ2 test. p=0.0042).一方,染影強度との関係ではいずれも相関を認めなかった.組織像の検討では,染影の広がりを示したすべての病変で,染影拡大部位にほぼ一致して周囲脂肪織への癌細胞浸潤が認められた.結論:CEUSでBモードによる腫瘍範囲よりも染影が広がる所見は,Bモードのみでは視認困難な癌細胞の周囲脂肪織への浸潤を反映しており,高い細胞増殖能を持った高悪性度の病変を示唆する所見であると考えられた.
症例報告
  • 相田 健次, 木下 美菜子, 佐藤 信浩, 吉開 友羽子, 山根 啓一郎, 吉野 直樹, 川戸 充徳, 江尻 純哉, 永澤 浩志, 小山 忠 ...
    2017 年 44 巻 1 号 p. 49-54
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/01/16
    [早期公開] 公開日: 2016/12/21
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    症例は56歳の女性,主訴は胸部違和感.2週間前より咳嗽が出現し,胸部違和感と動悸を自覚したため当院を受診,精査加療目的に入院となった.来院時,脈圧の開大とSpO2の低下を認め,Levine III/VIの拡張期逆流性雑音を聴取した.胸部X線では,両側に肺うっ血,胸水貯留を認めた.心エコー図検査にて大動脈二尖弁(BAV)と重度の大動脈弁閉鎖不全症(AR)を認め,さらに弁尖に付着する索状構造物が見られたため,感染性心内膜炎(IE)を疑ったが,発熱はなく血液培養も陰性であった.重症ARによるうっ血性心不全で手術適応と判断し,他院にて大動脈弁置換術を施行した.術中所見ではrapheと連続する索状構造物(raphal cord)が断裂していた.急性ARの主な原因は,IEと急性大動脈解離であるが,今回,我々はraphal cordの断裂による急性ARを経験し,その診断に経胸壁および経食道心エコー検査が有用であったので報告する.
  • 上田 信恵, 福原 崇之, 山中 秀彦, 嶋谷 邦彦, 立山 義朗
    2017 年 44 巻 1 号 p. 55-60
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/01/16
    [早期公開] 公開日: 2016/11/11
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    症例は63歳男性,3日前から続く右下腹部痛のため当院を受診した.触診にて右下腹部に圧痛と反跳痛を認め,血液検査では,白血球8,800/μl,CRP 14.89 mg/dlと炎症反応の上昇を認めた.腹部造影CTでは,虫垂の腫大および周囲の脂肪織濃度の上昇を認め急性虫垂炎と診断したが,腹部超音波検査では,虫垂は腫大し層構造は保たれ,虫垂中央から末端にかけて突出する低エコー腫瘤と,腫瘤周囲に局在した脂肪織の著明な肥厚を認めるなどの所見から虫垂憩室炎と診断し得た.摘出標本の病理組織学的診断は真性虫垂憩室炎であった.超音波検査は虫垂憩室炎の術前診断に非常に有用であった.
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