超音波医学
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44 巻, 6 号
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小児腎泌尿器科疾患の超音波診断
  • 宮坂 実木子
    原稿種別: 小児腎泌尿器科疾患の超音波診断
    2017 年 44 巻 6 号 p. 489-495
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/11/17
    [早期公開] 公開日: 2017/09/22
    ジャーナル 認証あり
    腎嚢胞性疾患の診断のきっかけは,胎児超音波検査によるスクリーニング,奇形症候群や家族歴のある患児の腹部精査,尿路感染症,血尿,腹部腫瘤など様々である.腎嚢胞性疾患は,非遺伝性と遺伝性疾患の2つに大別される.非遺伝性の嚢胞性疾患として最も頻度が高いのは,多嚢胞性異形成腎(multicystic dysplastic kidney: MCDK)である.代表的な遺伝性嚢胞性疾患は,常染色体劣性多発性嚢胞腎(autosomal-recessive polycystic kidney disease: ARPKD)と常染色体優性多発性嚢胞腎(autosomal-dominant polycystic kidney disease: ADPKD)である.遺伝性嚢胞性疾患は,繊毛病のひとつと考えられている.画像診断検査は,超音波検査が第1選択であり,初期発見および診断,フォローアップに用いられる.特徴的な超音波所見がそれぞれの診断の中核となり,臨床症状,家族歴などを考慮して総合的に診断される.MCDKは,ぶどう房状の嚢胞の集簇であり,正常な腎実質は認めない.ARPKDとADPKDでは,腎のサイズや実質輝度,嚢胞の大きさや部位などのほか,さらに肝や膵臓などの腹部実質臓器の異常所見についても検索することが大切である.本稿では,代表的な腎嚢胞性疾患の超音波所見を中心に解説する.
  • 坂井 清英, 佐竹 洋平, 相野谷 慶子
    原稿種別: 小児腎泌尿器科疾患の超音波診断
    2017 年 44 巻 6 号 p. 497-508
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/11/17
    [早期公開] 公開日: 2017/10/13
    ジャーナル 認証あり
    小児先天性腎尿路異常(CAKUT: congenital anomalies of the kidney and urinary tract)は,小児期から若年層の末期腎不全の原因疾患としておよそ1/3を占めるというエビデンスが示されていることから,CAKUTをできるだけ早く発見して治療を要する症例に対しては可及的早期に介入していくことが望まれる.超音波(US)検査は,医療施設においては時と場合を選ばずに容易に低侵襲で施行できる検査であり,胎児期からのスクリーニングも可能で,新生児・乳児にも安全に行うことができる.さらには出生後の診断の確定や,CAKUT治療中の経過観察やアウトカムの評価のためにも主役となる検査方法である.また,2016年に日本小児泌尿器科学会より小児先天性水腎症(腎盂尿管移行部通過障害)と膀胱尿管逆流(VUR)の診療手引きが発表された.その内容も含めて超音波検査の役割の観点から解説する.
  • 余田 篤
    原稿種別: 小児腎泌尿器科疾患の超音波診断
    2017 年 44 巻 6 号 p. 509-517
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/11/17
    [早期公開] 公開日: 2017/10/27
    ジャーナル 認証あり
    小児科領域の腎尿路疾患では,腫瘍性疾患よりも尿路奇形の合併が多く,しばしばスクリーニングでも尿路奇形が超音波で診断される.また,乳幼児の尿路感染症では先天性尿路奇形を高率に合併しやすいことが知られている.尿路奇形で超音波が診断に有用な疾患は,水腎症,水尿管,低形成腎・片腎・萎縮腎,馬蹄腎,重複腎盂・重複尿管,嚢胞性腎疾患,膀胱憩室,尿管瘤などがある.一方,乳児の発熱性疾患の5%前後が尿路感染症によるものであり,尿路感染症では超音波検査をすることが勧められる.尿路感染症に特異的な超音波所見は得られにくく,超音波の感度も特異度も低い.それでも尿路感染症で超音波が推奨される理由は,上記の先天性尿路奇形を有する患児は腎機能障害に進展しやすく,それらの尿路奇形を早期に診断することで慢性の不可逆性の腎機能低下を防ぐことである.尿路感染症では腎盂腎炎,急性巣状細菌性腎炎,腎膿瘍,膀胱炎などがあげられる.腎盂腎炎と急性巣状細菌性腎炎では,腎盂腎炎が重症化すると急性巣状細菌性腎炎となり,さらに進行して腎膿瘍となるといわれている.腎尿路の直接的な感染症ではないが,病原性大腸菌感染症に伴う出血性腸炎に合併する溶血性尿毒症症候群の腎症も忘れてはならない.これらの腎尿路疾患を早期診断するために,小児の不明熱や尿路感染症では早期の超音波検査が勧められる.
  • 内藤 泰行
    原稿種別: 小児腎泌尿器科疾患の超音波診断
    2017 年 44 巻 6 号 p. 519-524
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/11/17
    [早期公開] 公開日: 2017/10/27
    ジャーナル 認証あり
    小児泌尿器科領域の代表的な疾患についての超音波診断と,我々小児泌尿器科医が行っている手術的加療について概説する.膀胱尿管逆流や,膀胱尿管移行部通過障害では,経膀胱的腹腔鏡下手術を,腎盂尿管移行部通過障害では低侵襲な腹腔鏡手術を紹介する.さらに,陰嚢内疾患については手術方法とその適応のあり方について概説する.
シリーズ どうすれば超音波の生物学的作用に関する実験ができるか
原著
  • 松岡 由紀, 河内 伸江, 杉野 成美, 平林 彩, 森下 恵美子, 鈴木 高祐, 木村 武志, 角田 博子
    2017 年 44 巻 6 号 p. 529-534
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/11/17
    [早期公開] 公開日: 2017/10/27
    ジャーナル 認証あり
    目的:乳房超音波検査においてエラストグラフィの有用性は増してきている.しかし現在までにGE Healthcare(GE)社製装置のElasticity Index(E-Index)およびElasticity Ratio(E-Ratio)の具体的カットオフ値はほとんど示されていない.そこで今回,その値を探ることを目的とし,検討を行った.対象と方法:GE社製LOGIQ E9を用いて,E-Index,E-Ratioを測定した連続症例で,良性病変,浸潤癌,各50症例のE-Index,E-Ratioを後方視的に確認した.それぞれに対してYouden indexを作成し,適正なカットオフ値を検討した.結果と考察:E-Indexのカットオフ値は3.15が,E-Ratioでは2.95と3.1の間が最適となった.通常の検査ではE-Ratio,E-Indexともに3程度とするのが妥当と考えられた.日立製作所製の装置では,良悪性のカットオフ値はStrain Ratio(FLR:Fat Lesion Strain Ratio)で4.3~5.0とされており,今回の結果とは相違があった.装置による相違にも注意して使用することが必要であると考えられた.結論:GE社製装置ではエラストグラフィの良悪性のカットオフ値はE-Ratio,E-Indexともに3程度とするのが妥当と考えられた.
  • 小室 薫, 横山 典子, 渋谷 美咲, 早乙女 和幸, 広瀬 尚徳, 米澤 一也, 安在 貞祐
    2017 年 44 巻 6 号 p. 535-542
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/11/17
    [早期公開] 公開日: 2017/10/13
    ジャーナル 認証あり
    背景と目的:慢性腎疾患は心血管疾患(CVD)の危険因子である.腎ドプラエコー法による腎末梢血管抵抗値(resistive index: RI)は腎機能障害と関連している.我々はRIと心機能との関係を調べ,CVD患者に起こるイベントを予測するためのRIの有用性を評価した.方法と結果:腎臓のドプラエコー法と心エコー検査を計452名のCVD患者に行った.RIと,血清クレアチニンおよび推算糸球体濾過率(eGFR)との相関は有意ではあったが強くはなかった(それぞれr=0.37,p < 0.001; r=-0.42,p < 0.001).RIは,年齢,左心房容積係数,左室心筋重量係数,経僧帽弁血流の拡張早期成分(E)と拡張早期僧帽弁輪速度(e′)の比(E/e′)とは正の相関を,e′と拡張期血圧とは有意な負の相関を示した.2つのグループ,すなわち心血管イベントで入院した患者112名(A群)と,年齢およびeGFRを一致させた200名から成る対照群(B群)の間において,年齢とeGFRに差がないにも関わらず,RIはB群よりもA群において明らかに高値であった.結論:RIはeGFRだけでは十分に説明できない腎内血行動態の異常を反映する.腎臓RIは心血管疾患患者での予後推定に役立つと考えられる.
今月の超音波像
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