目的:浸潤性膵管癌は予後不良で,早期発見および効果的治療の開発が望まれている.比較的予後良好な小腫瘍の段階での発見に,超音波検査の有用性が示唆されているが,多数例での検討報告は少なく,その診断法は未だ確立されていない.今回,20 mm以下の浸潤性膵管癌46切除例の超音波所見について検討した.
対象と方法:病理組織診断にて腫瘍径が20 mm以下と診断された46病変を対象とした.超音波所見(大きさ,形状,境界,輪郭,内部エコー,棘状突起様構造の有無,尾側主膵管拡張の有無,嚢胞状成分の有無)について検討した.17病変にレボビストを用いた造影超音波を施行した.
結果:Bモードでは46病変中42病変で腫瘍を描出可能であった.主膵管拡張と途絶のみを認めた4病変中3病変は,造影超音波にて腫瘍像を確認できた.存在診断可能な45病変の腫瘍径は,8~22 mm,平均値15.7±3.8 mmであった.Bモードにて腫瘍を描出可能であった42病変では,不整形40病変(95.2%),境界明瞭28病変(66.7%),42病変すべて輪郭不整かつ低エコーを示した.棘状突起様構造13病変(31.0%),尾側主膵管拡張32病変(69.6%),嚢胞状成分8病変(17.4%)に認めた.造影超音波を施行した17病変では,様々な造影態度を示した.
結論:今回得られた所見から,腫瘍径が小さい病変でも通常経験する進行した浸潤性膵管癌と同様の所見を呈することがわかった.小さな病変であっても詳細に観察することで,浸潤性膵管癌と診断が可能と考えた.
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