超音波医学
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45 巻, 4 号
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総説
  • 神谷 千津子, 橋本 修治, 田中 教雄, 堀内 縁, 吉松 淳
    原稿種別: (第16回教育セッション)(循環器)
    2018 年 45 巻 4 号 p. 339-348
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/07/17
    [早期公開] 公開日: 2018/06/08
    ジャーナル 認証あり
    妊娠・出産を通じて,循環動態はダイナミックに変化する.器質的心疾患を持つ多くの女性が安全に出産する一方,一部の病態においては,母児の生命も脅かすハイリスクなものとなる.しかしながら,先天性心疾患をとりまく医療の進歩や母体の高齢化を背景に,心疾患合併妊娠数は増加傾向にある.「心疾患を持っているから妊娠は一律に禁忌」とされていた時代は過ぎ,心疾患があってもより安全に出産できるような診療体制が必要とされている.心疾患合併女性の妊娠・出産においては,循環血漿量や心拍数の増加,血管抵抗の変化,凝固亢進,血管脆弱化など,妊娠による生理的変化を時間軸とあわせて理解し,心疾患合併妊娠の診療にあたることが大切である.妊娠リスクの評価に,心エコー所見は有用である.また,心エコー検査は,非侵襲的で胎児被爆を与えず,妊娠・出産の進行に伴い繰り返し評価できる,妊娠中に最も適した循環器検査である.心疾患合併妊娠では,妊娠前もしくは初期と,妊娠中の循環血漿量の増加がほぼピークに達する30週前後に心エコー検査を行い,あとはリスクや自他覚症状に応じて検査を追加することが薦められている.また,分娩後に心機能低下や弁機能異常の増悪をきたす症例があり,分娩後の経過観察も大切である.
  • 何森 亜由美
    原稿種別: (第16回教育セッション)(乳腺)
    2018 年 45 巻 4 号 p. 349-354
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/07/17
    [早期公開] 公開日: 2018/05/21
    ジャーナル フリー
    乳房超音波に重要な乳房解剖知識として,乳腺の小葉外間質は,(1)「周囲間質surrounding stroma」と(2)「浮腫状間質edematous stroma」の膠原線維密度の異なる2種類の間質がある.乳腺内に見える等エコー構造は,「終末細乳管小葉単位(TDLU)‐乳管」と「周囲間質」からなり,乳管の走行を反映しているものであり,どの年代にも見える解剖学的基本構造である.等エコー構造の間を充填する間質が「浮腫状間質」であり,超音波では背景乳腺として高エコーに描出される.乳腺の脂肪化は「浮腫状間質」に起こるが,脂肪と膠原線維の割合に関わらず,超音波は「散在」して高エコーレベルを示すことに変わりはない.等エコー構造は乳管の走行に一致しているため,乳頭方向と腺葉境界面に向かう規則性を持つ.乳管走行の規則性パターンを追う観察法は,腺葉の重なりが理解でき,乳房を立体的に観察することが可能となる.描出される等エコー構造が正常であることを確認していけば「正常構造からの逸脱部」に気づくことができ,これまで検出が難しいとされていた「淡い病変」「微少な病変」「等エコー病変」でも容易に検出することができる.乳房解剖理解に基づく観察によって,乳房超音波検査を,客観性,短時間で,精確なものとし,検査手技の獲得も効率よく行える.
  • 渡辺 隆紀
    原稿種別: (第16回教育セッション)(乳腺)
    2018 年 45 巻 4 号 p. 355-360
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/07/17
    [早期公開] 公開日: 2018/05/21
    ジャーナル 認証あり
    非腫瘤性病変は乳腺内の低エコー域,乳管の異常,構築の乱れ,多発小嚢胞,そして点状高エコーを主体とする病変の5つに分類される.非腫瘤性病変として認識される病変で多いのは悪性では非浸潤性乳管癌(DCIS)であり,良性では乳腺症や乳管内乳頭腫などがある.非腫瘤性病変を呈するDCISでは乳腺内の低エコー域が76%と最も多く,次いで乳管の異常が16%であり,この二つだけで全体の90%以上を占める1).構築の乱れはDCISでは2%程度であるが,小さな浸潤癌や浸潤性小葉癌などでしばしば認められるので重要な所見である.本稿では5つの分類について解説し,症例も提示する.
僧帽弁・大動脈弁の心エコー評価の進歩と弁形成術の発展
  • 三浦 崇, 江石 清行
    原稿種別: 僧帽弁・大動脈弁の心エコー評価の進歩と弁形成術の発展
    2018 年 45 巻 4 号 p. 363-370
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/07/17
    [早期公開] 公開日: 2018/02/28
    ジャーナル 認証あり
    電子付録
    僧帽弁形成術は対象疾患が幅広く,その効果と意義が弁置換よりも明白であり,また経験と技術が求められることなどから,患者,外科医の双方にとって魅力的な手技の一つである.その反面,再手術のリスクと責任を背負った手術であることも事実である.再手術は術後1~3年以内の比較的早期に集中し,早期再手術率は5~8%が一般的である.その後は安定し10年後の再手術非発生率は80~95%である.再手術を惹起しやすい病態として活動期感染性心内膜炎,前尖広範囲逸脱があり,原因は不完全修復,縫合部の組織損傷,再弁輪拡大,短縮腱索の再延長,溶血などである.良好な成績を得るためには,超音波検査による逆流のメカニズム同定とそれに応じた精緻な形成手技が必要である.形成手技は切除縫合術を基本手技とし,脆弱な縫合部位はパッチ補強を追加し,逸脱の矯正が終了した時点で完全な弁尖接合を得ることを目指す.また,リングを用いた弁輪形成を追加し,人工弁輪の縫着も丁寧に行う必要がある.特に,切除縫合の際のdehiscence予防は重要である.術中の経食道心エコーは専門家に依頼し厳密に行い,ジェット面積2 cm2以上の遺残逆流は再度検索,処置を行うべきである.入院中の再逆流の発生には誠実に対応し,必要であれば引き続き再手術を決断した方が遠隔期の結果は良好である.今回の特集では,上記の内容に加えて,手術前に外科医が必要としている情報についても述べる.
  • 阿部 幸雄
    原稿種別: 僧帽弁・大動脈弁の心エコー評価の進歩と弁形成術の発展
    2018 年 45 巻 4 号 p. 371-379
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/07/17
    [早期公開] 公開日: 2017/08/25
    ジャーナル 認証あり
    僧帽弁閉鎖不全症(僧帽弁逆流,mitral regurgitation,MR)に対して僧帽弁形成術が可能かどうかを心エコー図検査で判断することがMRの手術適応を考えるうえで必須である.また,形成術の施行を決定した際にも,術式を術前に計画する必要がある.一次性(器質的)MRの代表である僧帽弁逸脱症によるMRでは,心エコー図検査で診断した主病変の部位と範囲,成因と形態にしたがって形成術が可能かどうかを判断し,副病変の有無と程度を併せ考えたうえで弁尖切除法あるいは人工腱索再建法,弁尖間縫縮術のいずれを人工弁輪による弁輪縫縮術と組み合わせるかを計画する.また,僧帽弁収縮期前方運動による左室流出路狭窄が出現する可能性が高いと予測される際には,その合併を回避する術式が加えられる.一方,左室不全に伴う二次性(機能的)MR例では判断が全く異なる.Tethering-tentingが高度で弁輪縫縮術のみでMRを制御できないと予測される場合には,さらなるオプションの術式を加えるか,形成術を諦めて人工弁置換術を行うことになる.Atrial functional MRに対する外科治療の基本術式は人工弁輪による弁輪縫縮術である.いずれのMRにおいても,僧帽弁および僧帽弁機構の形態診断が重要であり,ソノグラファーおよび循環器内科医,心臓血管外科医で共有すべきである.
  • 渡邉 望
    原稿種別: 僧帽弁・大動脈弁の心エコー評価の進歩と弁形成術の発展
    2018 年 45 巻 4 号 p. 381-392
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/07/17
    [早期公開] 公開日: 2017/12/18
    ジャーナル 認証あり
    僧帽弁逸脱に対し僧帽弁形成術が主流となり,術前術中術後を通した周術期の心エコー図診断の役割が大きくなってきた.かつては術前診断をし,手術適応と判断した時点で外科医にバトンタッチするまでが内科医の役目であったが,患者ごとに異なる病変に対しカスタムメイドで様々な手術戦略を立てる段階で,心エコー図による詳細な形態診断は重要な位置を占める.特に,リアルタイム3次元(3D)経食道心エコー図が日常臨床で用いられるようになった現在では,かつて心エコー図専門医がmultiplane断層心エコー図画像からいわゆるmental reconstructionしていた立体画像を実際に外科医に提示することが可能となり,さらに3次元的な病変の広がりを正確に表示し計測するまでに至った.術前の段階で外科医に心エコー図画像を供覧し,必要な計測を行い,術式選定に関わることも,noninvasive cardiologistとしての重要な役割である.また,形成術の際の術中経食道心エコー図による診断も,専門的な視野に立ち外科医と共に診断する大きな役割であり,そのためには心エコー図診断のスキルに加え,術中判断するための外科手術に関する基礎知識や,その時々で判断が必要となる項目などを知る必要がある.常日頃から外科医と共に患者の診療にチームとして携わる体制を持ち,その中で外科医と心エコー図画像を共有していくことが,よりよい形成術のためには必須である.本稿では,僧帽弁形成術に関わる心エコー図診断につき,noninvasive cardiologistとしての外科医との関わりを含めて解説する.
  • 大西 哲存, 川合 宏哉
    原稿種別: 僧帽弁・大動脈弁の心エコー評価の進歩と弁形成術の発展
    2018 年 45 巻 4 号 p. 393-401
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/07/17
    [早期公開] 公開日: 2018/02/01
    ジャーナル 認証あり
    大動脈弁逆流症(aortic regurgitation: AR)による慢性的な容量負荷は,無症候性に心筋障害を進行させる.重症ARを有する心機能低下例や症状出現例では外科手術が適応となる.近年,ARに対する自己弁温存基部置換術や大動脈弁形成術の治療成績が向上しており,本邦でも積極的に形成術を選択する施設が増えている.術前の経胸壁および経食道心エコー図による大動脈弁および大動脈弁複合体の評価は,治療戦略に必要不可欠である.心エコー図検査では,心腔のサイズ計測や心機能評価だけでなく,弁の変性の程度,弁の逸脱や穿孔の有無,大動脈基部の拡張・肥厚・解離・石灰化を観察できる.大動脈弁形成術を考慮した病型分類では,弁輪拡大はあるが正常弁葉を有する群をType I,弁逸脱を有する群をType II,弁の可動制限を有する群をType IIIとARを3群に分けた.Type Iをさらに,上行大動脈およびバルサルバ洞と大動脈の移行部(ST junction)の拡大によるものをType Ia,バルサルバ洞とST junctionの拡大によるものをType Ib,左室と大動脈の移行部(VA junction)の拡大によるものをType Ic,弁輪拡大はなく弁穿孔によるものをType Idと細分化し,術式を対応させている.ARの成因・病態を見極める上で,心エコー図検査は形態的および機能的評価に優れており,外科的治療の術式を決定する上で必要不可欠である.ARに対する外科治療は近年大きく進歩してきているため,その術前心エコー図評価もより臨床に役立つものへと対応してゆく必要がある.
  • 國原 孝
    原稿種別: 僧帽弁・大動脈弁の心エコー評価の進歩と弁形成術の発展
    2018 年 45 巻 4 号 p. 403-417
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/07/17
    [早期公開] 公開日: 2017/09/04
    ジャーナル 認証あり
    大動脈弁閉鎖不全症や基部拡張病変に対する外科的治療のガイドラインは大動脈弁置換術を想定しているが,形成を目指すならより早い時期が望ましく,心エコー実施医は重要な役割を占める.全ての病態で理論的には形成可能である.Type Iaは上行大動脈置換の適応だが他病変の併存に注意が必要である.Type Ibは弁温存基部置換術の適応確定のため,大動脈基部サイズの正確な測定が必須である.Type Icはannuloplastyの良い適応であるが,各々一長一短がある.External suture annuloplastyは簡便だがventriculo-aortic junctionを縫縮し,external ring annuloplastyは煩雑だがbasal ringを縫縮する.Internal rigid ring annuloplastyは簡便にbasal ringの縫縮が可能だが,硬いリングが近接するデリケートな弁尖に及ぼす影響に懸念が残る.Type Idはパッチ形成術の成績が良好だが,他のジェットが混在すると術前診断は困難である.Type IIは最もポピュラーでcentral plicationが標準術式と言って良く,eccentric jet,effective heightの低下,弁尖のbendingなどで容易に診断可能である.Type IIIは心膜による弁尖延長を要し,心膜自体が再発のリスク因子であり,最もエコー診断が重要であるが,弁尖長は過小評価されやすい.二尖弁では狭窄回避,交連角度調整,cusp bulging回避などにおいて,心エコー実施医が最も活躍すべき場であろう.今後大動脈弁形成が標準化され,ガイドラインが改訂され,より多くの大動脈弁が温存されることが望まれる.
  • 柴山 謙太郎
    原稿種別: 僧帽弁・大動脈弁の心エコー評価の進歩と弁形成術の発展
    2018 年 45 巻 4 号 p. 419-428
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/07/17
    [早期公開] 公開日: 2017/10/16
    ジャーナル 認証あり
    大動脈弁疾患への治療の技術的な進歩に伴い,近年では大動脈自己弁温存術(大動脈弁形成術や大動脈基部再建術等を含むが,以後まとめて大動脈弁形成術Aortic valvuloplasty: AVPと表記)や経カテーテル大動脈弁植込み術が広がった.従来は術中計測が可能な開胸大動脈弁置換術が多く選択されていたため術前評価が十分でない場合も多かったが,治療選択肢の拡大に伴って大動脈基部や弁構造など大動脈弁複合体の解剖学的な理解や評価がすすんだ.とくにAVPは若年者の大動脈弁閉鎖不全症(Aortic regurgitation: AR)への治療選択肢のひとつとなっており,大動脈弁複合体の解剖のみでなくARの逆流機序なども十分に理解しこれを手技に活かすことが重要である.術前に心エコー図検査を施行することで治療適応の評価のみならず,これらのAVPに有用な形態的情報を整理することが可能である.本稿ではAVP術前の心エコー図での評価ポイントをまとめることとする.
シリーズ どうすれば超音波の生物学的作用に関する実験ができるか
原著
  • 増田 佳純, 浅沼 俊彦, 中谷 敏
    2018 年 45 巻 4 号 p. 433-438
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/07/17
    [早期公開] 公開日: 2018/05/25
    ジャーナル 認証あり
    目的:Post-systolic shortening(PSS)は心筋虚血改善後もしばらく残存するため,虚血メモリー評価に有用と考えられる.心筋虚血時にはearly systolic lengthening(ESL)も生じるが,近年これをスペックルトラッキング心エコー法で同定できることが明らかになった.虚血再灌流後に生じたESLが虚血メモリーの指標となりうるか検討した.対象と方法:麻酔開胸犬16頭において,左冠動脈回旋枝を2分間閉塞後,再灌流した.閉塞前,閉塞時,再灌流10,30分後において,円周方向ストレインを解析した.虚血領域と非虚血領域の収縮期最大ストレイン(εS),post-systolic index(PSI),ESLのストレイン振幅(εESL)および,ESLの持続時間(ESL時間)を計測した.結果:虚血領域において,εSは一旦低下,εESLは増加するものの再灌流後速やかに元の値に回復した.一方,PSI,ESL時間は閉塞時に高値を示し,再灌流10分後も閉塞前のレベルまで回復しなかった.ROC曲線による再灌流10分後の虚血メモリー診断精度は,ESL時間で感度63%,特異度81%,PSIでは感度94%,特異度94%であった.結語:ESL時間は虚血メモリーの指標となりうる可能性が示唆された.しかし,その診断精度においては,ESL指標に比べ,PSS指標の方が優れていた.
症例報告
  • 浜崎 直樹, 塩谷 直久, 今井 照彦, 林田 幸治, 安川 元章, 川口 剛史, 太地 良佑, 高濱 潤子, 丸上 永晃, 平井 都始子
    2018 年 45 巻 4 号 p. 439-443
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/07/17
    [早期公開] 公開日: 2018/07/03
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    呼吸器領域におけるエラストグラフィは,strain法が気管支超音波(EBUS)で縦隔や肺門リンパ節の評価に臨床応用された報告を散見するが,shear wave elastographyの報告はほとんどない.このたび我々は体表からのアプローチでshear wave elastographyを用いてせん断波伝搬速度を測定しえた胸膜に接する肺内病変(胸膜下病変)の肺扁平上皮癌1例と肺炎1例を経験した.両症例ともせん断波伝搬速度は安定して測定された.肺扁平上皮癌のせん断波伝搬速度は肺炎のせん断波伝搬速度より明らかに速かった.胸膜に接する病変において体表からのアプローチでshear wave elastographyによりせん断波伝搬速度が測定可能であり,診断への有用性を示唆している.
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