目的:へき地診療における領域横断的なPoint-of-Care超音波検査(POCUS)の有用性について検討する.
対象と方法:2016年7月から2017年7月までに当診療所を受診後,医師の臨床判断により高次医療機関への紹介を考慮し,引き続き医師がその場でPOCUSを行った 136例を対象とした.POCUSは症状に関連した領域を原則系統的に精査したが,緊急時や時間的制約のある場合は関心疾患へ焦点を絞って検査した.POCUS施行後の紹介・非紹介,紹介の妥当性,その後の転帰などの項目を診療録から後方視的に抽出し検討した.
結果と考察:対象者136例のうち,POCUSの契機となった症例(全164症状)は,運動器の痛み30件(18.3%),腹痛20件(12.2%),発熱11件(6.7%)などであった.施行した領域(全165件)は,腹部49件(29.7%),運動器46件(27.9%),心臓 35件(21.2%)などであった.ハンドヘルド型装置を使用したのは13例(9.6%),関心領域に焦点を絞って行ったのは54例(39.7%)であった.その結果,POCUS後に紹介と判断したのは56例(41.2%),POCUS後に紹介不要と判断しそのまま診療所で経過観察または治療を行ったのは80例(58.8%)であった.紹介判断の妥当性については,紹介群では妥当35例(87.5%),不適当5例(12.5%),非紹介群では妥当69例(93.2%),不適当5例(6.8%)であった.
結論:へき地診療において領域横断的にPOCUSを利用することで,高次医療機関への紹介の必要性をより確実に判断でき,患者負担の軽減だけでなく,治療へ迅速に繋ぐことができると考えられた.
抄録全体を表示