超音波医学
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46 巻, 1 号
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我が国におけるPoint-of-Care超音波(POCUS)の現状と将来展望
  • 亀田 徹
    原稿種別: 我が国におけるPoint-of-Care超音波(POCUS)の現状と将来展望
    2019 年 46 巻 1 号 p. 5-15
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/01/16
    [早期公開] 公開日: 2018/09/05
    ジャーナル 認証あり
    ベッドサイドで臨床医によって施行されるPoint-of-Care超音波(POCUS)は,欧米の救急・集中治療領域で発展し,現在そのコンセプトは他の専門領域へ広がっている.POCUSは系統的超音波検査といくつかの点で異なる.POCUSでは臨床推論に基づき関心部位は絞られ,定性的,半定量的に評価される.急性期診療におけるPOCUSは,全身各部位の解剖学的評価,循環器系の生理学的評価に利用される.また心肺蘇生の一環,緊急度・重症度評価,モニタリング,様々な手技のガイドとして施行される.今後我が国でもPOCUSが発展し,患者ケアの改善のために利用されるためには,POCUSユーザーと超音波の専門家との協働,質の高い臨床研究の実施,領域別のフレームワークの設定,および教育システムの構築が必要である.
  • 山田 博胤, 坂東 美佳
    原稿種別: 我が国におけるPoint-of-Care超音波(POCUS)の現状と将来展望
    2019 年 46 巻 1 号 p. 17-24
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/01/16
    [早期公開] 公開日: 2018/10/19
    ジャーナル 認証あり
    心臓に対する超音波の臨床応用には約70年の歴史があるが,その大きな転換期は,バッテリーで駆動する小型の携帯型超音波診断装置の登場である.これにより,心エコー図検査を行う場所が検査室外に大きく広がっただけでなく,それまではそれを専門の生業とする医師や技師が行う検査であったのが,救急医や麻酔科医,プライマリケア医など心エコーを専門としない医師が心エコー図検査を利用するようになった.そして,このような目の前の患者に対して,医師が病態の評価やマネージメントあるいは処置のガイドのために行う超音波検査をPoint-of-Care 超音波(POCUS)と呼ぶようになった.POCUSの心エコー図検査は,救急医や麻酔科医など心エコーの非専門家がプロトコールに即して施行するfocused cardiac ultrasound examination(FoCUS)と,系統的心エコー図検査の高度な知識と技術を有する循環器内科医がベッドサイドで行うlimited echocardiographyに大別される.FoCUSは,そのプロトコールや評価法がほぼ確立され,その効果を証明するエビデンスも蓄積されつつある.本邦においても普及しつつあるが,教育システムが確立されているとはいえず,医学生や研修医に対する教育をどうするかについても,今後議論が必要であろう.循環器分野のPOCUSが広く普及しても,聴診が不要になるということはない.むしろ,身体診察の流れの中で視診,触診,聴診に加えて,エコー診を加えることが,患者にとって大きな恩恵をもたらすことになるだろう.
  • 畠 二郎
    原稿種別: 我が国におけるPoint-of-Care超音波(POCUS)の現状と将来展望
    2019 年 46 巻 1 号 p. 25-33
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/01/16
    [早期公開] 公開日: 2018/08/09
    ジャーナル 認証あり
    急性腹症におけるPoint-of-Care超音波(POCUS)について述べた.5W1Hの視点から考えると,POCUSとは救急現場における第一線の医師によりなされるものであり,救急室のみならずあらゆる状況で行われる.つまり,「いつでも,どこでも,誰でも」行うべきものであり,これにより時間,侵襲,経済などあらゆる面での診療の効率化が期待できる.次に「何を,何のために,どのように」であるが,POCUSの基本的性格として比較的短時間で簡便な手技であることを考えると,急性腹症におけるフレームワークの構築は容易ではないが,本稿においては腹部の8ヵ所を走査する“6アプローチ”を提唱した.これにより比較的頻度の高い疾患は概ねカバーできると期待されるが,POCUSの診断能は検者依存性のみならず機器性能にも大きく影響されるため,特に陽性所見がない場合の判断には注意を要する.またPOCUSを普及させるためには,そのトレーニングが必要であり,誰が何をどのように教育するかに関して現時点では本邦で一定の見解はない.最低限必要な事項としては超音波工学の基礎,正常な超音波解剖とその描出,異常な超音波像の解析,そして急性腹症症例への実践が挙げられる.まずはフレームワークの確立とともに,各地における指導者の養成が重要な課題であるが,そのためには各診療科の協力も必要とされ,各領域の専門家が参加している日本超音波医学会がPOCUSの推進における主導的な存在となることが望ましいと考える.
  • 小林 英夫
    原稿種別: 我が国におけるPoint-of-Care超音波(POCUS)の現状と将来展望
    2019 年 46 巻 1 号 p. 35-38
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/01/16
    [早期公開] 公開日: 2018/09/10
    ジャーナル 認証あり
    救急領域に端を発したPoint-of-Care超音波(POCUS)は本邦でも広く受け入れられつつある.しかし,以前から蓄積されていた呼吸器超音波学とは別途にPOCUSが登場したことから異なる体系化がなされ,両者の長所を複合的・共有的に活用できていない事象も散見されている.本稿では現状と将来的に解決すべき呼吸器的問題点を総括したい.
  • 野村 岳志, 清野 雄介, 西周 佑美, 吉田 拓也, 福井 公哉
    原稿種別: 我が国におけるPoint-of-Care超音波(POCUS)の現状と将来展望
    2019 年 46 巻 1 号 p. 39-45
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/01/16
    [早期公開] 公開日: 2018/11/26
    ジャーナル 認証あり
    Point-of-Care超音波(POCUS)が超音波機器の小型化,画像の明瞭化など超音波機器の進歩に伴い,集中治療領域に浸透してきた.約20年前には経胸壁心エコーや胸水診断が一部の集中治療医によりに行われていたが,総じてPOCUSを行う医師は少なかった.現在では肺胸郭エコー,腹部エコー,深部静脈血栓症診断などが加わり,さらに経頭蓋カラードプラによる脳血流評価など,全身の超音波検査が集中治療室で行われている.集中治療室で治療される患者は人工呼吸中や血液浄化療法中などCT検査などへの搬送が難しく,ベッドサイドで行えるPOCUSのメリットは非常に大きい.また急な検査にも対応可能である.そのため,集中治療室でPOCUSの活躍の場はさらに広がり続けると確信する.加えて患者管理に有用な診断手段となるためにも,POCUS教育も重要となる.多くの医師のPOCUSの習熟を促すためにも,超音波診断総論などは医学生や研修医の必須教育カリキュラムになるべきと考える.ここでは,現在集中治療室で行われている,また将来行われるようになる可能性があるPOCUS,そして集中治療におけるPOCUS教育について概説する.
  • 谷口 信行
    原稿種別: 我が国におけるPoint-of-Care超音波(POCUS)の現状と将来展望
    2019 年 46 巻 1 号 p. 47-50
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/01/16
    [早期公開] 公開日: 2018/09/10
    ジャーナル 認証あり
    Point-of-Care超音波は,従来日本超音波医学会であまり使用されなった用語であるが,最近他の学会,研究会で注目を浴びている.特に,超音波検査の必要性が高い救急領域では,患者評価法として日常的に行われつつある.ここ数年の間に,POC超音波研究会,救急医学関連,集中治療学関連,内科学関連など複数の学会・研究会で多数の講習会とハンズオンが企画され,多くの参加者でにぎわっている.現在,その企画・プログラムはアメリカで行われている手法に準じたものやそれぞれの学会,研究会独自の手順・方法で行われているが,対象・目的が同じ場合は統一したプログラムで行われることが好ましく,その作成において本会の関与が望まれる.また,講習会で技能を取得した者には一定のお墨付きがあれば,意欲向上に役立つと思われる.
  • 山田 聡
    原稿種別: 我が国におけるPoint-of-Care超音波(POCUS)の現状と将来展望
    2019 年 46 巻 1 号 p. 51-57
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/01/16
    [早期公開] 公開日: 2018/08/21
    ジャーナル 認証あり
    電子付録
    Point-of-Care超音波(POCUS)の臨床上の有用性が広く認識されるに従い,POCUSの普及と教育が今後の大きな課題であると考えられるようになってきた.POCUSの普及と教育のためには,講義,ハンズオン・トレーニング,画像判定の経験の3つを中核要素とするトレーニング・プログラムを構築することが推奨されている.病院内で複数の診療科や部署からの多職種チームが協働し,また,地域において複数の病院間で協力してPOCUSの教育を行う際に,オンラインツールを有効に活用することが望まれる.私たちは,講義を提供し,典型的画像や頻度の高い症例を呈示し,動画を送付して双方向の質疑を行うことができるオンライン教育システムを試作したので,これを紹介し,POCUSの普及と教育におけるオンラインツール活用の将来性について考察したい.
シリーズ どうすれば超音波の生物学的作用に関する実験ができるか
原著
  • 桑原 奈津美, 川島 博子
    2019 年 46 巻 1 号 p. 63-69
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/01/16
    [早期公開] 公開日: 2018/11/26
    ジャーナル 認証あり
    目的:乳房温存療法(breast after breast conservation therapy : BCT)では超音波画像に様々な変化が生じる.しかし,その経過は患者によって異なる.本検討では,BCT後の画像所見の遷延に影響を与える因子について検討した.対象と方法:対象は2010年1月から2014年12月までにBCTを受けた患者101名(103乳房)である.放射線治療終了後18ヵ月で乳房超音波を行い,患側乳房の皮下浮腫/液体貯留および皮膚肥厚の有無について評価を行った.また,画像所見の遷延に影響を与える因子の候補として,手術時年齢,BMI,乳房の大きさ,乳房の構成,術式,切除長径,腫瘍の占拠領域について評価を行った.結果と考察:放射線治療後18ヵ月で皮下浮腫/液体貯留を認めたのは29例(28%),皮膚肥厚を認めたのは60例(58%)であった.皮膚肥厚は,脂肪性の乳房で残りやすく(p=0.041),切除長径が40 mm以上で残りやすい傾向があった(p=0.041).皮下浮腫/液体貯留は,腫瘍の占拠領域が乳房下部領域で残りやすい傾向があった(p=0.006).また腫瘍の占拠領域が乳房外側領域であると皮膚肥厚が残りやすい傾向があった(p=0.027).結論:BCT後の皮下浮腫/液体貯留と皮膚肥厚の遷延には腫瘍の占拠領域が影響していることが示唆された. 皮膚肥厚は,脂肪性の乳房と切除長径が大きい場合に残りやすい傾向があった.
症例報告
  • Koichi SOGA, Kenji ITANI
    原稿種別: CASE REPORT
    2019 年 46 巻 1 号 p. 71-75
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/01/16
    [早期公開] 公開日: 2018/11/30
    ジャーナル 認証あり
    A 58-year-old Japanese man underwent colonoscopy. We identified a protruding submucosal tumor covered with normal mucosa to the level of the rectal ampullary lesion. The patient underwent convex endoscopic ultrasonography (EUS) and endoscopic ultrasonography-guided fine needle aspiration (EUS-FNA). EUS showed a hypoechoic mass with homogeneous internal echoes and regular margins. The lesion was contiguous with the fourth layer of the rectal wall. The histological specimen from EUS-FNA identified spindle cells. The immunohistochemical profile of the spindle cell tumor was as follows: c-kit+, s-100-, desmin-, and smooth muscle antigen-. We completed surgical resection using the transanal route. The final diagnosis was rectal gastrointestinal stromal tumor.
  • 泉 りりこ, 日高 庸博, 城戸 咲, 甲斐 翔太朗, 中野 嵩大, 蜂須賀 正紘, 加藤 聖子
    2019 年 46 巻 1 号 p. 77-82
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/01/16
    [早期公開] 公開日: 2018/12/03
    ジャーナル 認証あり
    39歳の1回経産婦.Macrocystic typeの胎児先天性肺気道形成異常(CPAM)の診断で妊娠20週に当院へ紹介された.超音波断層法で胎児左肺を占拠する56×37×26 mmの多房性嚢胞性病変を認め,CPAM volume ratio(CVR)は1.61と算出された.少量の胎児腹水を認め,胎盤は肥厚していた.妊娠22週に入院した際には胎児皮下浮腫も認められ,胎児水腫と診断した.数日前から出現した著明な悪心と嘔吐の訴えがあり,母体顔面と手背に浮腫を認めた.血液検査で,軽度の貧血(Hb10.2 g/dL)と血小板数低値(10.0万/μl),低アルブミン血症を認め,血中hCGは178,077 mIU/mlと高値であった.Mirror症候群と診断した.妊娠22週5日に嚢胞羊水腔シャント術を行った.ただし,多房性であったが故に一定サイズの嚢胞が残存することとなり,妊娠23週1日のCVRは1.20であった.胎児胸壁の皮下浮腫は消失せず,腹水に減少を認めなかった.妊娠23週5日,一過性に母体の酸素化不良となり,胸部X線で両側胸水貯留と肺うっ血,心拡大を認めた.血液検査で血液希釈が進行しており,尿量も減少した.妊娠継続は困難と判断し,分娩誘発の方針とした.うっ血性心不全に対してアルブミンやフロセミドの投与を行いながら,妊娠24週2日,経腟分娩に至った.児は860gの女児で早期新生児死亡となった.胎盤重量は725gで浮腫著明であった.産後母体症状は速やかに改善した.巨大macrocystic CPAMが多房性である場合の問題点として,シャント術後にも腫瘤が残存し,その結果として胎児水腫の改善にも至らないケースがあることを認識した.
今月の超音波像
LETTER TO THE EDITOR
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