超音波医学
Online ISSN : 1881-9311
Print ISSN : 1346-1176
ISSN-L : 1346-1176
49 巻, 1 号
選択された号の論文の9件中1~9を表示しています
超音波で診る血管機能検査
  • 藤代 健太郎, 山下 晃平
    2022 年 49 巻 1 号 p. 5-15
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/01/11
    [早期公開] 公開日: 2020/04/16
    ジャーナル 認証あり

    Stiffness parameter β(stiffness β)は血圧に依存しない血管弾性の指標として血管径,拍動幅と血管内圧から算出される.血管径の測定は超音波でRF-tracking法またはM-mode法で行っている.対象血管は総頸動脈,椎骨動脈,上行大動脈および胸部下行大動脈の報告がある.血管機能検査の中でstiffness βは検者内と検者間の変動係数がほぼ10%以内と良好である.計測に用いる血管径を外膜間距離または内膜間距離とするかで異なり,拍動幅も計測装置により若干の差異がでるので,診断や研究では機器と測定法を統一することが望まれる.総頸動脈の内膜間距離よりも外膜間距離の方が年齢との相関が高い.内膜間距離は内中膜複合体が加齢で肥厚するために減少することがあるので,動脈のスティフネスを評価するには外膜間距離を用いる方が適切であると考える.Cardio-Ankle Vascular Indexとの対比では,胸部下行大動脈のstiffness βとの相関は高く,総頸動脈のstiffness βとは相関はあるが大動脈ほどではない.最近の研究には,高血圧前症患者の大動脈のstiffness βが運動と生活習慣の改善で値が小さくなるなど,動脈硬化の初期変化の指標とするものが多い.血管のスティフネスは末梢への送血を良好に保つために重要であるが,加齢とともに亢進し,頸動脈のスティフネスの異常は虚血性脳血管障害のリスクになるので,早期からの動脈硬化診断にstiffness βを役立てることが望まれる.

  • 三木 俊
    2022 年 49 巻 1 号 p. 17-23
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/01/11
    [早期公開] 公開日: 2021/12/22
    ジャーナル 認証あり

    血流依存性血管拡張反応(%FMD)は,血管内皮障害や動脈硬化の進展状態を把握するための重要な検査である.さらに,ニトログリセリン誘発性内皮非依存性血管拡張反応(%NMD)は,血管平滑筋自体の機能を評価するために推奨されている.現在,%FMDと%NMDの評価の組み合わせは,血管機能障害が血管内皮機能障害のみによって引き起こされているのか,血管平滑筋機能障害まで進展しているのかを判断する重要な検査であり,多くの施設で臨床応用されている.超音波診断装置を用いて算出された%FMDおよび%NMDは,安静時の血管直径から最大拡張時の血管直径の変化率として算出される.それらを用いた先行研究では,%FMDと%NMDが心血管イベントの予測因子になり得ることが示唆され,%FMDは,冠状動脈疾患,心筋梗塞,慢性心不全,高血圧,および頸動脈硬化症の内皮機能障害における心血管イベントの予測因子となることが多数報告されている.

  • 久保田 義則
    2022 年 49 巻 1 号 p. 25-30
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/01/11
    [早期公開] 公開日: 2020/03/13
    ジャーナル 認証あり

    下肢動脈狭窄に対する新しい血流波形評価法-TVF;transit time of vessel flow.下腿領域動脈の超音波検査は細く見づらい血管が対象であり,実施困難な検査部位の代表である.TVFは下腿領域動脈の潅流状態を評価するための指標であり,通常検査の中で計測されている血流波形から算出できる利点がある.過去の保存データからも再計算が可能である.TVFの算出には生理的変動の影響が含まれるため,計測時には安静状態での情報収集が重要である.正確な時間測定を使用する診断方法であるため,3つの波形を表示できる最大掃引速度に設定する.TVFの参考正常値は30ms以下であり,スクリーニング検査として行った場合,治療対象外の血管として評価できる.TVFの算出には心電図記録が必須で,膝窩動脈と足関節部位の後脛骨動脈および前脛骨動脈における3拍以上の血流波形が必要である.治療後の経過観察では血行動態的な評価を行う方法として,画像診断と併せて評価に用いる.TVFの算出のために計測されるR-P時間に関しても,様々な使い方が試行されている.これら指標に対する検討は,現在のところ十分に行われてはいないが,血管機能や血行動態を解析する方法として今後の研究が待たれる.

  • 寺野 雅美, 久保田 義則
    2022 年 49 巻 1 号 p. 31-38
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/01/11
    [早期公開] 公開日: 2019/03/08
    ジャーナル 認証あり

    近年,血管領域における超音波検査は急速に発展してきた.その背景には超音波診断装置のめざましい進歩に依るところが大きいと思われる.しかし,いつも同様の検査方法では十分な評価ができない症例もあり,さまざまな試行錯誤が必要になる.この時知っていて役に立つものの一つに負荷検査法がある.検査体位を変えることで解剖学的位置変化が出現することや,血流動態が変化することを利用する方法,外的圧迫を加えることによる血流動態変化を利用する方法,運動負荷をすることによる血流動態変化を利用する方法などがあり,目的に応じて適時使い分ける必要がある.また,負荷検査は対象症例に対して適切な負荷を選択し,正しく評価する必要がある.さらに,負荷検査の方法によっては安全性の確保が必要な場合も生じてくることを理解したうえで実施する必要がある.

症例報告
  • 千葉 美緒, 立石 遼, 土蔵 太一朗, 三須 彬生, 小嶋 結, 西郡 修平, 中山 一隆, 藤井 洋之
    2022 年 49 巻 1 号 p. 39-49
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/01/11
    [早期公開] 公開日: 2021/11/05
    ジャーナル 認証あり

    症例は60代男性.20XX年Y-8ヵ月より下腿浮腫と労作時呼吸困難を自覚した.20XX年Y-4ヵ月に症状増悪のため前医を受診し,心不全の診断で内服加療が開始された.その後も症状は改善せず,20XX年Y月に当院循環器内科を紹介受診した.外来で精査予定となっていたが,呼吸困難,腹痛,下痢を訴え当院へ救急搬送.消化器症状の原因断定は困難であったが,徐脈と低血圧は持続することから,一時的ペースメーカーを挿入し入院となった.入院第4病日に洞不全症候群に対して恒久的ペースメーカーを挿入.入院第6病日の心臓超音波検査で,左室駆出率47%,左室拡張障害,両心肥大,心外膜の輝度亢進と肥厚を認め,長軸方向ストレインでのapical sparingより心アミロイドーシスを疑った.上下部消化管内視鏡検査を行ったところ,胃および大腸にびらんを認め,生検でアミロイド沈着があり,免疫染色でAL(κ型)の診断となった.全身性ALアミロイドーシスに伴う心不全・消化管症状と診断され,治療が開始された.しかし,心不全は改善せず,入院第48病日に心停止となった.剖検が施行され,アミロイドは心臓,消化管,肺,腎臓等,複数の臓器に沈着を認め,心筋組織にはびまん性,心外膜には脂肪組織に入り込むように不均一に沈着していた.心筋組織へのアミロイド沈着が一般的だが,心外膜に沈着を認める症例は稀であり,心臓超音波検査でその可能性が示唆されていたことから,文献的考察を含めて報告する.

  • 上西 正子, 望月 泰秀, 竹内 陽史郎, 田村 仁香, 堀家 由貴, 藤田 淳子, 高岡 理恵, 山崎 正之, 田中 早津紀, 志手 淳也
    2022 年 49 巻 1 号 p. 51-56
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/01/11
    [早期公開] 公開日: 2021/11/19
    ジャーナル 認証あり

    症例は40歳代男性,主訴は労作時呼吸苦である.元来筋力トレーニングが趣味であり,6年前から筋力増強目的にAnabolic androgenic steroid(AAS)の一種であるデカン酸ナンドロロンを個人輸入し,使用していた.某年11月頃,高血圧と心拡大のため当院紹介.初診時の経胸壁心臓超音波検査では,左室腔拡大と全周性の左室壁肥厚,左室収縮能および拡張能の低下を認めた.血液生化学検査では血中遊離テストステロン高値であり,デカン酸ナンドロロンまたは高血圧性心疾患による心不全と診断され,デカン酸ナンドロロンの使用中止と降圧剤投与が開始された.2ヵ月後の経胸壁心臓超音波検査では左室拡張能の低下は依然認めるものの,左室腔はやや縮小し,左室収縮能も改善を認め,心不全症状も軽快した.AASは強い蛋白同化作用をもつ合成テストステロンであり,筋肉トレーニング愛好者が筋力増強目的に使用することがあるが長期間の使用や乱用は筋力増強以外に多血症,左室肥大,左室収縮能および拡張能障害,アテローム性動脈硬化症などを引き起こす可能性が示唆されている.本症例も高血圧,多血症を認め,経胸壁心臓超音波検査にて心肥大と心機能低下を認めたことから,AAS慢性使用による心筋症と診断した.今回,治療介入後の治療経過を経胸壁心臓超音波検査で観察し得ることができた貴重な症例を経験したので,ここに報告した.

  • Kanna KIYAMA, Masafumi HASHIGUCHI, Kaori MUROMACHI, Tsutomu TAMAI, Yuj ...
    2022 年 49 巻 1 号 p. 57-63
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/01/11
    [早期公開] 公開日: 2021/12/02
    ジャーナル 認証あり

    Hepatic intracystic hemorrhage is a rare complication of congenital cysts. The imaging findings are often nonspecific and complicated, so it is difficult to differentiate from hepatic cystic tumors. Hemorrhagic hepatic cysts show an internal heterogeneous echo level, intracystic mass-like structure, and septum-like structure on ultrasonography (US), but they are difficult to detect on computed tomography (CT) because the clot has a CT value equivalent to that of the fluid in the cyst, so it is characterized by a discrepancy between the US and CT findings. On the other hand, hepatic cystic tumors have mural nodules that can also be recognized on CT, and various contrast studies show contrast enhancement of mural nodules and septa. We herein report a case with a hemorrhagic hepatic cyst that was suspected at first glance to be a hepatic cystic tumor because CT showed an enhanced mural nodule. A comprehensive evaluation with various modalities is necessary to differentiate cystic lesions of the liver, and contrast-enhanced US (CEUS) in particular may be effective. In the post-vascular phase of CEUS, hepatic cystic tumors were reported to have a contrast effect, which hepatic hematomas due to intracystic hemorrhage were reported not to have, suggesting that this may be a key finding for differentiation. Furthermore, we were able to retrospectively examine the process from a simple cyst by investigating the past imaging studies. It was an interesting change in imaging findings as it showed the natural history from a simple cyst to a hemorrhagic cyst.

今月の超音波像
feedback
Top