超音波医学
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49 巻, 5 号
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総説
  • 福原 隆宏
    2022 年 49 巻 5 号 p. 371-379
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/13
    [早期公開] 公開日: 2022/08/10
    ジャーナル 認証あり

    頭頸部領域で使用する高周波リニアプローブの分解能は高く細かな構造まで観察可能であり,頭頸部領域での超音波検査の有用性は高い.ただし,頸部は解剖が複雑であるため,頸部の超音波評価のためには,まず解剖を理解する必要がある.頸部は複数の筋膜が重なった構造をしており,深頸筋膜浅葉と深葉に挟まれた層に血管や深頸リンパ節の流れがある.頸部リンパ節腫脹や腫瘤の多くはこの層に存在するため,頸部超音波検査ではここを中心に観察する.リンパ節の良悪性を判定する場合,リンパ節の内部構造をBモードとドプラで観察する.癌腫によって特徴的な超音波像を示すものもあり,原発の予測にも役立つ.良性のリンパ節腫脹の中でも結核性リンパ節炎はその鑑別が難しく,診断が困難なため注意を要する.頭頸部癌は原発部位によって転移や再発の様式が異なる.さらに頭頸部癌術後の頸部再発のフォローのための超音波検査は,手術で頸部の解剖が大きく変わっているため注意を要する.手術記録や術前の超音波検査所見などの診療情報が役に立つ.以上の内容について本文で詳しく解説をおこなった.

特集「Diagnosis and assessment of nonalcoholic fatty liver disease / nonalcoholic steatohepatitis using ultrasound elastography」
  • 多田 俊史, 西村 貴士, 吉田 昌弘, 飯島 尋子
    2022 年 49 巻 5 号 p. 385-396
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/13
    [早期公開] 公開日: 2022/08/24
    ジャーナル 認証あり

    非アルコール性脂肪性肝疾患(nonalcoholic fatty liver disease:NAFLD)は,診断とコンセプトという点で新たな時代を迎えている.NAFLDという用語は,最新の知見を反映していないと考えられる.本分野の専門家は,より適切で包括的な用語として代謝異常脂肪性肝疾患(Metabolic Dysfunction-associated Fatty Liver Disease:MAFLD)を提案している.NAFLDの進行という観点からは,重度の線維症患者を含めほとんどの患者の死因は肝疾患とは関係が見られない.肝生検は非アルコール性脂肪性肝炎(nonalcoholic steatohepatitis:NASH)の診断に不可欠である.肝生検は,NAFLDとNASHを鑑別できる唯一の信用に足る手段である.近年,脂肪症および線維症の様々な非侵襲的診断方法が開発された.脂肪症を評価するためのイメージング法として,磁気共鳴画像法(magnetic resonance imaging:MRI)を使用した超音波減衰測定や,プロトン密度脂肪率が開発された.FIB-4指数とNAFLD線維症スコアは,NAFLD患者の線維症を評価する複合的なスコアである.さらに,線維症を評価するためのイメージング法として,超音波やMRIに基づくエラストグラフィが開発された.複数のリアルタイムシェアウェーブエラストグラフィ機器とトランジエント・エラストグラフィとの間には,強い相関関係が見られる.これは肝硬度を超音波で測定するための絶対的な基準である.結論として,NAFLDはコンセプト,用語および診断の点で転換期に差し掛かっている.超音波検査がNAFLDの評価で果たす役割を再確認するべき時が来ている.

  • 米田 正人, 本多 靖, 野上 麻子, 今城 健人, 中島 淳
    2022 年 49 巻 5 号 p. 397-410
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/13
    [早期公開] 公開日: 2022/07/25
    ジャーナル 認証あり

    非アルコール性脂肪肝疾患(nonalcoholic fatty liver disease:NAFLD)と非アルコール性脂肪性肝炎(nonalcoholic steatohepatitis:NASH)の罹患率は世界中で急激な増加をきたしており,医療および社会経済学の両方の観点から重要な健康問題となっている.NAFLDはメタボリックシンドロームの肝臓の表現型と見なされており,メタボリックシンドロームの危険因子と関連していると報告されている.そのためNAFLD/NASHは肝臓の特異的疾患だけでなく,全身疾患に関与すると認識されるべきと考えられている.肝生検はNASHの診断やNAFLD患者における肝線維症のステージングのためのゴールドスタンダードとして推奨されている.しかしながら,肝生検はコストが高く,合併症リスクも低くなく,医療資源への負荷が大きいため,このように罹患率の高い状況において侵襲的な検査である肝生検のみが正式な評価方法であるという考えが最適とはいえない.よって,NASHから肝硬変へ進行するリスクを評価し,心血管系有害事象のリスクを評価し,HCC早期発見のサーベイランスの必要性を検知し,NAFLD/NASH患者の治療の際の道標となる,肝線維化評価のための信頼性の高い非侵襲的手法の開発が求められている.この総論では,NAFLD患者の肝線維化ステージや脂肪変性度を評価するための超音波エラストグラフィ(Real-time Tissue Elastography®,vibration-controlled transient elastography,point shear wave elastography,およびtwo-dimensional shear wave elastography)の原理と近年の臨床応用に焦点を当てる.

  • 今城 健人, 本多 靖, 米田 正人, 斉藤 聡, 中島 淳
    2022 年 49 巻 5 号 p. 411-425
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/13
    [早期公開] 公開日: 2022/07/21
    ジャーナル 認証あり

    現在肥満や糖尿病が急増していることから,非アルコール性脂肪性肝疾患(nonalcoholic fatty liver disease:NAFLD)の有病率は上昇することが予想され,世界中で慢性肝疾患の主因となっている.肝線維化は,NAFLD患者の長期転帰の悪化と関連がある.さらに,死亡率の上昇と肝疾患の合併症は,主に非アルコール性脂肪性肝炎(nonalcoholic steatohepatitis:NASH)患者に見られるが,非アルコール性脂肪肝(nonalcoholic fatty liver:NAFL)は,良性で比較的進みにくいと考えられている.そのため,NASHとNAFLの鑑別が,臨床的に重要である.肝生検は,肝線維化の病期分類およびNASHとNAFLとの鑑別のゴールドスタンダードとして用いられている.しかしながら,肝生検は侵襲的で,高額な検査法である.したがって,肝線維化の病期分類とNASH診断のために,生検に代わる非侵襲的方法が緊急に必要とされている.本論説では,肝線維化,肝脂肪化および炎症や肝細胞風船様腫大を含む肝障害など,NASHの病理学的所見を反映可能な,磁気共鳴エラストグラフィを含む磁気共鳴画像法(magnetic resonance imaging:MRI),プロトン密度脂肪分画測定法,マルチパラメトリックMRI(multiparametric MRI:mpMRI)に関する近年の研究を考察する.

  • 鹿毛 政義, 相島 慎一, 草野 弘宣, 矢野 博久
    2022 年 49 巻 5 号 p. 427-432
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/13
    [早期公開] 公開日: 2022/07/14
    ジャーナル 認証あり

    非アルコール性脂肪肝疾患(nonalcoholic fatty liver disease: NAFLD)とは臨床所見に加え病理学的形態学の概念に基づくもので,大きく非アルコール性脂肪肝(nonalcoholic fatty liver: NAFL)と非アルコール性脂肪性肝炎(nonalcoholic steatohepatitis: NASH)に分類される.NASHは肝硬変や肝細胞癌へと進行する可能性があるので,NAFLとNASHの鑑別診断は重要である.NAFLは肝細胞の傷害を伴わない単純な脂肪肝であるが,NASHは主に小葉中心帯領域(ゾーン3)に分布する大滴性脂肪変性,炎症,風船様肝細胞が特徴である.肝生検はNAFLDを診断する上で有用な検査であるが侵襲的である.ゆえに,診断画像法を含むさまざまな非侵襲性手法が近年開発されている.NAFLDにおける画像診断の有用性を検証するためには,画像診断と組織病理学的所見は密接に関連しているので,病理組織所見が画像所見にどのように反映されているのかを明らかにする必要がある.ここでは,NAFLDの主な病理学的所見,すなわち肝細胞の脂肪変性,炎症,風船様肝細胞,Mallory-Denk体,線維化について概説し,肝硬変への進行過程についても説明を加えた.

症例報告
  • 井上 淑子, 斎藤 聡, 伝法 秀幸, 山口 和磨, 窪田 幸一, 田矢 祐規, 和氣 敦, 増田 亜希子, 石綿 一哉
    2022 年 49 巻 5 号 p. 433-440
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/13
    [早期公開] 公開日: 2022/07/29
    ジャーナル 認証あり

    症例は32歳女性,急性骨髄性白血病の治療のため同種造血幹細胞移植が施行された.入院時の肝硬度(liver stiffness: LS)は3.5 KPaであった.移植後,第67 病日から体重増加,腹痛,血清ビリルビン値の上昇を認め,腹部超音波検査(Ultrasonography: US),肝硬度測定を実施した.LSは42.2 KPaと著明に上昇,US検査では肝腫大,腹水貯留,門脈血流低下を認め,遅発性の肝類洞閉塞症候群/中心静脈閉塞症(sinusoidal obstruction syndrome/veno-occlusive disease: SOS/VOD)と診断された.遺伝子組み換えトロンボモジュリン,新鮮凍結血漿,低分子ヘパリン投与後,肝硬度低下とともに門脈血流は改善,血清ビリルビン値も減少した.LSは第114病日25.4 KPa,第342病日には4.9 KPaに低下した.SOS/VODの診断は主に臨床症状からなされ,欧州血液骨髄移植学会による遅発性SOS/VOD診断基準(2016年)では肝血行動態を含むUS所見が記載された.しかしながらドプラ血流測定には検者の熟練と時間を要する.肝硬度は検者を選ばず,短時間に,簡便に,繰り返し測定が可能である.遅発性SOS/VODの診断,経過観察に肝硬度測定の有用性が示唆された.

  • 上田 直幸, 河岡 友和, 浅田 佳奈, 荒瀬 隆司, 小林 剛, 森 馨一, 大段 秀樹, 横崎 典哉, 有廣 光司, 相方 浩
    2022 年 49 巻 5 号 p. 441-447
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/13
    [早期公開] 公開日: 2022/08/05
    ジャーナル 認証あり

    症例:70歳代の女性.血液検査異常にて当院紹介となった.既往歴はB型慢性肝炎,子宮,卵巣摘出後,高血圧.血液検査結果はAFP 2.5 ng/mlで正常範囲,PIVKA-Ⅱ 216 mAU/mlと高値であったが,手術前日の検査で20 mAU/mlと低下していた.Child-Pugh分類はA(5点).US:S2に14×12 mmの内部は比較的均一で境界明瞭,輪郭不整な低エコーSOLを認めた.明らかな被膜構造は認めなかった.CEUS:動脈優位相では辺縁の濃染を認めたが,実質はhypovascularであった.門脈優位相でも辺縁の濃染は持続していたが実質の濃染は認めなかった.後血管相では全体がdefectされていた.re-perfusion imagingでも同様に辺縁のみの濃染を認めた.CT:単純CTでは淡い低吸収域を認めた.動脈相で淡い早期濃染を認め,後期相では淡い低吸収域を認めた.EOB MRI:T1強調画像でS2に17 mmの肝細胞相で低信号を示すいびつな結節を認めた.血管造影下CT検査:S2に腫瘍濃染を認め,CTAPで17mmの低吸収域を認めた.その一部がCTHAで濃染を認めた.これらの結果より,中分化型肝細胞癌が疑われた.病理所見:壊死巣は線維性被膜を伴い,周囲には慢性炎症細胞や飛沫状組織球の浸潤を認めた.細胞のghostからは肝細胞癌が消失した像と見做された.結語:自然消失をきたしたと考えられた,肝細胞癌に対し造影超音波検査を施行し,特徴的な所見を認めた症例を経験した.

  • 竹沢 亜美, 近藤 敦, 細川 満由, 三谷 尚弘, 門岡 みずほ, 水谷 佳世, 古澤 嘉明, 佐藤 弘之, 末光 徳匡
    2022 年 49 巻 5 号 p. 449-452
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/13
    [早期公開] 公開日: 2022/07/26
    ジャーナル 認証あり

    胎児超音波検査において心臓周囲に低エコー域を認めた場合,心囊液貯留や縦隔囊胞性病変などが鑑別疾患として挙げられる.いずれの疾患も病変が著明に増大すると,周囲臓器を圧排し呼吸循環障害をきたすことがある.しかし両疾患の出生時の対応は大きく異なるため,胎児期の正確な評価が重要となる.今回,胎児期に心囊液貯留として妊娠および分娩管理を行ったが,出生後に縦隔囊胞性病変と診断された症例を経験した.27歳の1経産婦に対して胎児スクリーニング超音波検査を施行し,妊娠30週で初めて左心室周囲に幅 2 mmの低エコー域を認めた.胎児精密超音波検査で心臓構築を含めた形態異常,胎児水腫および心不全を疑う所見を認めなかったため孤発性心囊液貯留であると判断した.低エコー域は経時的に拡大し妊娠36週に左心室と左肺を圧排する所見を認めたため,出生後に心囊穿刺を行う体制を整え,妊娠37週2日に選択的帝王切開術を施行した.新生児の呼吸循環動態は気管内挿管で安定し,超音波検査で囊胞性病変と判断したため心囊穿刺は行わなかった.日齢3に胸部 MRI検査を施行し縦隔囊胞性病変と診断した.生後10か月で囊胞の増大はなく,無症状で経過している.胎児の心臓周囲に低エコー域を認めた場合,心囊液貯留のみならず縦隔囊胞性病変を鑑別に挙げて慎重に診断すべきである.

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