超音波検査は弁不全の有無や存在範囲,原因となる静脈の検索,血栓の有無など各静脈瘤の正しい病態を分類することができる.その静脈瘤検査を効率良く実施するためには,検査目的を把握し,現病歴や既往歴,身体所見を取得することが大切である.検査体位は伏在静脈の深部静脈合流部付近は立位,それ以外は患者の安全面を考慮し,座位で実施する.安静状態での静脈潅流は,静脈弁に血流負荷が加わらないため,観察部位より末梢側を十分な強さで圧迫する必要がある.健常例では圧迫時に急速な順行性血流が生じ,圧迫解除後に血流が停止する.一方,弁不全例では,圧迫解除後,持続時間の長い逆行性血流が生じ,表在静脈では0.5秒,大腿から膝窩静脈では1.0秒,大腿深静脈や下腿深部静脈は0.5秒を超える場合,有意逆流と判定する.静脈径は検査体位や圧迫により変化するため,探触子を軽く皮膚に密着させ,左右同一条件で計測する.計測時は体表面から観察した画像の前後径で計測し,壁の外側で測定する.計測部位は大伏在静脈系では大腿静脈と大伏在静脈の接合部付近と大腿部,下腿部,小伏在静脈系では膝窩静脈と小伏在静脈の接合部付近と下腿部を最低限計測する.静脈瘤検査時,二次性静脈瘤を否定することも大切である.現在,静脈瘤の治療法は,血管内焼灼術が広く普及し,外科治療の大半を占める.超音波検査ではEHIT(Endovenous heat-induced thrombosis)を評価することが大切であり,重要な役割である.
症例は3歳男児.左膝に擦過傷を負った1週間後に,発熱と歩行困難を主訴に当院を受診した.来院時の身体所見で左膝創部から左鼠径部にかけて,左大腿部の線状発赤を認めた.超音波検査では,線状発赤に一致したリンパ管の拡張,数珠状リンパ節腫脹,周囲脂肪組織の輝度上昇を認めた.左鼠径部リンパ節は腫大し,輪郭やや不整で,血流信号の明らかな増加は認めず,膿瘍形成も認めなかった.血液検査は,WBC 13,000/μL,CRP 3.7 mg/dLであった.セファゾリン120 mg/kg/日の静脈内投与を開始したが,反応は不良であった.外傷の病歴と特徴的な超音波所見から皮膚ノカルジア症を疑い,入院3日目に抗生剤をスルファメトキサゾール・トリメトプリム(ST合剤)0.1 g/kg/日の内服へ変更した.以後は症状が改善傾向となり,入院5日目に退院した.退院翌日に,前医で提出された左膝創部の排膿培養にてNocardia brasiliensis検出の報告があった.ST合剤の感受性は良好であった.以後症状の再燃を認めず,退院4週間後にST合剤内服を終了した.皮膚ノカルジア症の報告は少ないが,本症が十分認識されていない可能性がある.身体診察が困難な乳幼児において,外傷を契機とした皮膚軟部組織感染症を疑う場合には超音波検査を行い,同部位にリンパ管拡張および数珠状リンパ節腫脹を認めた場合は皮膚ノカルジア症を考慮する必要がある.
脳梗塞の原因として腕頭動脈プラークが塞栓源となることがある.可動性の腕頭動脈プラークを超音波で診断し,MVFIの手法であるSMIを用いて可動性病変が鮮明に描出された症例を経験したため報告する.77歳女性.構音障害,右上肢の運動失調を主訴に来院し,National Institute of Health Stroke Scaleスコア 2点であった.頭部MRIで右小脳半球,橋,左側頭葉に多発性の脳塞栓症を認めた.塞栓源検索目的で行った経食道心エコーで腕頭動脈に可動性プラークを疑い,体表面からセクタプローブで走査したところ腕頭動脈内に可動性プラークを認めた.深度が深く,アーチファクトとの鑑別を要したためSMIを使用したところ,可動性プラークが高信号に明瞭に描出された.同部位を塞栓源と診断し,抗血小板薬を含む内科治療を行った.以後超音波でプラークの形態について経過観察を行っている.SMIは組織の動きの特徴を解析し,低速血流と組織の動きを分離する技術である.SMIで可動性プラークが明瞭となる機序としてモーションアーチファクトにより過可動性を伴うクラッタ運動,反射強度が強い点が考えられている.セクタプローブによる可動性腕頭動脈プラークの評価にSMIは有用であった.